大学院時代より生殖内分泌学に取り組んできた不妊治療のスペシャリスト。1990年よりオーストラリア、PIVETメディカルセンターへ体外受精を中心とした不妊治療研修のため留学。その後も世界各国の体外受精センターにて研修を受け、不妊治療の最先端技術を吸収し、スペシャリストによるチーム医療を取り入れた生殖医療を行なうために1995年より独立開業。生殖医療の研究を広く行い、古くは日本で初めて人工精液瘤からの精子を用いた顕微授精に成功(1995)、近年では、日本で初めて子宮外妊娠予防・多胎妊娠のための胚盤胞1個移植(2003・2004)を報告し、高い成功率をあげている。他の医師からも「診療に対する真摯な追求心を常に持ち続けており、海外の情報も貪欲に吸収し臨床に応用している」と評価が高い。全国600施設中、ARTの成功は上位に位置し、さらには最近の日本の傾向である全胚凍結・融解胚移植においてもトップクラスの成績である。
訪れる患者の7割は他の施設での治療が難しい紹介患者のため、多くの方々はART(高度生殖医療)からスタートするが、一般不妊治療については、スクリーニング検査から丁寧に行い、排卵日の推定をより厳密に行い、タイミング推定をし3~5周期以内の妊娠を目指している。
人工授精(AIH)も的確な排卵日推定と調整した運動性の良好な精子を確実に子宮腔内にソフトな注入を行い、4~5周期までには妊娠に至るよう取り組んでいる。同クリニックではアイソレート密度勾配法を用いて、良好運動精子をできるだけ多く回収するよう専門の技術者が精液調整を行っている。不妊症の約3割の患者は卵管に問題がある卵管性不妊症だが、同クリニックでは体外受精かより自然に近い妊娠を希望するFT(卵管鏡下卵管形成術)を行うか、治療を受ける患者が相談の上で選択できるようになっている。FTとはFTカテーテルと呼ばれる細い管を経腟的に子宮や卵管に挿入し、癒着を剥離して通過性を回復させ、さらに卵管鏡で卵管内の状態を確認する体に負担の少ない治療法である。体外受精に比べ、保険が適応されるため経済的負担も少く、従来の卵管手術では、開腹手術 と2週間の入院が必要であったが、FTでは当日の帰宅が可能であり、身体への負担の軽減とともに患者の選択肢を広げることが可能となった。通常の治療は4~5回の人工授精を行い、妊娠に至らない場合、体外受精・胚移植(IVF・ET)へと移行する。体外受精は人工授精に比べ妊娠率は約4~5倍と高いが、体外受精で大切なのは、綿密な排卵誘発と移植する胚の管理である。同クリニックでは、世界で初めて開発したコンピューターによる『胚の24時間監視システム』により、培養状態を完全に把握し、高い妊娠率を支えている。さらに2004年には品質マネジメントシステムの国際的認証機関であるISO9001を認証取得し厳格な胚の管理を行っている。また、体外受精を行っても受精しない重症男性不妊症などの場合、顕微授精を行うが、同クリニックでは直径6~7ミクロンの極細のガラス管に精子を一個だけ吸引して、直径0.1mmの卵の卵細胞質内に直接注入するICSI(イクシー:卵細胞質内精子注入法)を採用。この方法であれば、卵子1個に精子1個だけで受精できる。また、特殊な顕微鏡で1000倍まで倍率をあげ、より形態の良い精子を治療に用いるIMSI(イムシー)も採用。精子は射精された精子でも、副睾丸の精子(精巣上体精子;VSA)でも、睾丸の精子(精巣精子;TESE,MD-TESE)でも、さらに凍結された精子でも同じように受精し、妊娠、出産が可能となっている。一方、ICSIには胎児の異常発生の懸念もあるが、通常の自然出産の出生児でも2~3%には、何らかの異常があると言われている。一般不妊治療や体外受精、顕微授精などの方法で妊娠し、出生した子供の奇形率は、自然妊娠での出生児と変わらない。男性不妊に対しては、男性不妊専門の泌尿器科医が週1回男性不妊外来を行っており、精子の状態を改善させることで、より受精率・妊娠率を向上させるよう対応している。さらに、凍結技術の飛躍的な進歩により凍結胚融解胚移植は世界的にも高い成功率を出している。
高い妊娠率を誇る同クリニックだが、トップレベルの専門スタッフがチームで生殖医療を行ない、高い技術同様に精神的なケアが非常に重要であると蔵本医師は言う。
「治療のサポート役」である不妊症看護認定看護師やIVFコーディネーターが、初回面接や看護ケアを行い、安心し納得した状態で不妊治療を受けられる環境づくりを行っている。不妊治療の説明会も、一般不妊治療とART(高度生殖医療)と対象を分けて行い、治療前にご夫婦で参加し、十分に情報を得た上で納得して治療を受けて頂ける体制を整えている。不妊症看護認定看護師を中心に、不妊治療に対する不安や悩みの相談、治療と仕事との調整に対する支援、通院負担を軽減するための自己注射指導などにも力をいれており、不妊症看護認定看護師による看護師外来も開設。精神的に不安を抱えている方々に対しては、不妊女性の心理で博士号を取得した臨床心理士によるメンタルカウンセリングを行いメンタル面のケアにも力を入れている。さらに、同クリニックでは、日本で初めてクリニック内に不妊症患者のためのヒーリングルームを併設するなど、患者サポートにも力を入れており、患者からの信頼は厚い。
※参照⇒
◆2011年度…採卵周期数:1,328周期、凍結融解移植周期数:846周期、体外受精:210周期、顕微授精:989周期、人工授精数周期数:1,167周期、患者数(新患+再来):33,840人
日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本生殖医学会代議員、日本受精着床学会理事、日本不妊カウンセリング学会監事、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長、日本IVF学会常務理事、日本産科婦人科学会福岡地方部会評議員、福岡生殖医学懇話会代表世話人、福岡県産婦人科医会代議員、福岡市博多区医師会監事、福岡県産婦人科医会福岡ブロック会理事、ASRM(アメリカ生殖医学会)会員、ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)会員、福岡県医師会母体保護法指定医師
『改訂版 体外受精』(メジカルビュー社)
女性の年齢の上昇とともに、卵子数の減少、卵質の低下が起こり、妊孕性(にんようせい= 妊娠しやすさ)が低下してきます。結婚の晩婚化による卵子の質の低下については、35歳までに妊娠・出産を目指すことが重要ですが、35歳以上の場合は、アンチエイジングのための食事(たんぱく質・ビタミンの摂取)と適度な運動(週に1~3時間程度のウォーキング等)に気をつけて下さい。35歳以上と年齢が高い方、ホルモン異常や排卵障害などで月経不順がある場合は、早めに専門の施設を受診することをお勧めします。近年はクラミジア感染症が不妊症の原因として注目されています。また、子宮内膜症や手術などによる癒着も卵管異常による不妊症の原因となっています。そのため卵管の検査も早めに受けた方がよいでしょう。
不妊原因の半数は男性因子です。男性側の原因としては、ほとんどが精子をつくる機能の異常ですが、病気や事故、先天的な理由による「射精障害」も原因に上げられます。したがって、検査や治療は妻のみに任せるのではなく、ご主人も一緒になって夫婦が協力し、検査や治療に取り組んで下さい。
【一般不妊治療】初診料約1万7,000円。スクリーニング検査(ホルモン・卵管・フーナー・排卵)3~5万円
人工授精約2万1,000円※その他別途検査費用。
【高度生殖医療(ART)】初診料約3~5万円(内容により変動する)。治療スタート月の生理2日目に行う検査約1万円、排卵誘発5~10万円、体外受精(IVF)約30万円、顕微授精(ICSI)38万円、胚盤胞移植5万2,500円、アシステッドハッチング5万2,500円、凍結料金8万4,000円