ドクターズガイド

石地尚興 医師 (いしじたかおき)

石地尚興 (いしじたかおき) 医師

東京慈恵会医科大学附属病院(東京都)
皮膚科
診療副部長 教授

専門

ヒトパピローマウイルスによる感染症。アトピー性皮膚炎、梅毒など、皮膚科全般を多岐にわたり診療する。

医師の紹介

石地尚興医師は、尖圭コンジローマや子宮頸がんなど、ヒトパピローマウイルスによる感染症の診断・治療を専門とする。日本性感染症学会梅毒委員会委員長を務め、梅毒の診療にも詳しい。アトピー性皮膚炎や疣贅に関しては専門外来を担当し、皮膚のセルフケアに関する指導もわかりやすいと患者に好評。テレビなどのメディアを通して、性感染症を予防する情報発信も行っている。

診療内容

石地医師が特に専門とするのは、ヒトパピローマウイルスからくる感染症である。アメリカのアイオワ大学への留学時から、同ウイルスによる発がんに関する研究を続けてきた。子宮頸がん予防のためにはワクチン接種が有効とされながら、日本ではいったん中止になったことについて、石地医師は次のように話す。

「ヒトパピローマウイルスの感染を予防するためにはワクチンが有効です。海外では今も問題なく接種されていますが、日本だけ、待ったがかかったまま止まっています。ワクチンには必ずメリット・デメリットがあり、そこを勘案して実施するほうがいいかどうかを考え、社会としてその病気を減らすために行われるものです。ワクチンのデメリット、副作用は常にゼロではありません。ワクチンによって子宮頸がんが減ることは明確になっているし、これだけ苦しんでいる人がいるのがわかっているのに、二の足を踏んでいるのが現状です」(石地医師)

このことは、梅毒治療における筋肉注射も同様であるという。梅毒の治療では持続型ペニシリンの筋肉注射を行うのが海外ではスタンダードだが、日本ではショック死する事例が出て以来、中止となったままだ。ただ、これについては、「日本では梅毒が増えているため、内服薬だけに頼らず、注射も導入するよう議論が始まっています」と、明るい兆しもあると石地医師は語る。

「長く増え続けていたHIVも、最近は少し落ち着き始めました。それは、積極的に治療を始めたからではないかと言われています。従来は、HIVに感染しても、免疫に関連するリンパ球が減るまでは治療を始めないというスタンスでした。現在は方針が転換されて早いうちに治療を始めるようになり、その人のパートナーに感染する確率が減っているのです。HIV感染者の増加は頭打ちになりつつあるのは、早いうちから治療して、感染源をしらみつぶしにしていくという対策の効果と考えられます。梅毒の場合、確定診断がなくても、ペニシリンの筋肉注射1回だけで治療が完了します。そうやって感染源を断つための積極的な早期治療ができれば、それで感染者数を少しでも減らせるのではないでしょうか」(石地医師)

石地医師は、同院のアトピー外来も担当する。アトピー性皮膚炎では近年新しい薬剤が発売されるなど、明るい話題も多いが、石地医師はそれだけで両手放しに喜べるとも言いがたい、と話す。

「アトピー性皮膚炎の薬に関しては、さまざまな臨床試験が行われています。しかし、薬だけで解決する病気ではないのがこの病気の難しいところです。アトピー性皮膚炎は、その人のライフスタイルやストレスも深く関連している病気です。子どもの場合は、親子関係に問題がある場合もあります。成人であれば、働き方改革によって生活自体を変えるなどしなければ、根本的な解決は難しいでしょう」(石地医師)

アトピー性皮膚炎では、薬物療法に加えて自宅でのセルフケアも大切だが、石地医師による生活指導はわかりやすいと患者に好評だ。同院のアトピー外来では、皮膚疾患へのメンタルケアも行っているため、薬による治療や生活指導と合わせて相談してみるといいだろう。

診療を受けるには

紹介状の持参がない場合、初診時に診療費とは別に選定療養費が必要となる。一般外来は原則として午前8~11時までの受付(午後は専門外来のみ)。
石地医師の外来は、月曜・火曜の午前、石地医師のアトピー専門外来は、火曜の午後。

医師のプロフィール

経歴
1984年 京都府立医科大学卒業、東京慈恵会医科大学大学院入学
1988年 東京慈恵会医科大学大学院単位取得、同大学皮膚科助手
1989~91年 米国アイオワ大学病理学教室に留学
(ヒトパピローマウイルスによる発がんに関する研究)
1992年 東京慈恵会医科大学皮膚科 講師
2004年 同大学附属柏病院皮膚科 診療部長
2005年 同大学 助教授(2006年に准教授に名称変更)
2006年 同大学附属病院皮膚科 診療副部長
2014年 同大学 教授
所属学会・認定・資格

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本性感染症学会認定医、日本皮膚科学会代議員(東京支部)、日本性感染症学会副理事長、日本性感染症学会梅毒委員会委員長、日本医療安全調査機構評価委員推薦担当者、東京慈恵会医科大学附属病院褥瘡対策委員会委員長

予防に心がけたいこと

アトピー性皮膚炎では、薬物療法だけではなく、ライフスタイルから見直すことも大切。仕事をしている人は働き方から考え直す必要があることも少なくない。
梅毒などの性感染症は、感染していることに気づかないまま、知らず知らずに自分が感染源となって感染を広げていることもある。不特定多数と性交渉を持たない、性交渉の最初からきちんとコンドームを着用するといった基本は、パートナーを大切に思えばこそ徹底が求められる。「病気に感染する恐れのあることはしない、これに尽きます」と石地医師は話す。

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