ドクターズガイド

病気の解説

ハイリスク妊娠・出産(周産期疾患)

病気・症状

胎児(新生児)・母体のいずれかまたは両者に重大な危険性が予想される妊娠・分娩を「ハイリスク妊娠・分娩」という。妊産婦の高齢化、不妊治療受診者の増加による多胎児妊娠などにより、ハイリスク妊産婦の数は10年前の1.5倍となっている。リスク要因は母体、子宮、胎児(新生児)と大きく3つに分類される。母体のリスク因子としては、母親の合併症(喘息、てんかん、痙攣など)、妊娠高血圧症、妊娠糖尿病、過去に帝王切開の経験があり経膣分娩を望む場合、年齢が40歳以上など、子宮のリスク因子としては、胎盤早期剥離、戦地胎盤、子宮破裂、前置胎盤など、胎児のリスク因子としては、切迫流産、子宮内発育遅延、先天異常、感染症、多胎児などがあげられる。ハイリスク妊娠の場合は、NICUの備わった総合周産期医療センター、地域周産期医療センターの指定を受けた病院での出産が望ましい。これらの因子をもつ女性が妊娠した場合には、妊娠初期から慎重に定期健診をおこなって、母体・胎児に異常がおきてないかを確認し、異常の早期発見・早期対処に努める。また、一般に正常妊娠と呼ばれるローリスク妊産婦の場合でも、定期健診を行い、妊娠中に生じたリスク因子を早期に発見し、地域の2次や3次の後方施設との連携を速やかに取れるようにすることが重要である。

検査・治療

妊娠中に行われる検査は、尿検査、血液検査、浮腫検査、超音波検査など、一般的に定期健診で行われるもののほか、必要に応じて、骨盤X線検査、ノンストレステストなどがある。現在、行われている検査では、胎児異常の80%以上が出産前に判明できる。また、絨毛検査、トリプルマーカーテスト、羊水検査など、胎児の染色体異常や代謝異常などの可能性や有無を調べる検査は、流産するリスクがあるほか、検査結果に対して倫理的にも非常にむずかしい問題を含んでいるため、受ける場合は主治医によく相談する。

ドクター・病院選びのポイント

自分の妊娠リスクを知るためには、厚生労働省が作成した「妊娠リスク自己評価表」を利用するとよい。インターネット上から入手できる。高リスクの結果が出た場合は、最寄りの地域周産期センターか総合周産期センター指定病院で相談することをすすめる。


厚生労働省ホームページ →

監修

田村正徳医師:埼玉医科大学 総合医療センター 総合周産期母子センター センター長