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MERS(中東呼吸器症候群)が韓国で感染拡大中

◆韓国で「MERS(中東呼吸器症候群)」の感染が広がっています。6月3日の時点で感染者は30人になり、感染の危険性があるとして隔離されている人は1,312人。すでに2人が死亡し3人の容態が危ぶまれています。MERSとはいったいどんな病気なのでしょうか?日本国内にも感染が広がるおそれはあるのでしょうか?そして、予防策や治療法は確立されているのでしょうか?

MERSの原因菌はコロナウイルスです。コロナウイルスにはさまざまな種類があり、普通の風邪の原因になっているものもあります。しかし、なかには非常に毒性の強いタイプもあり「重症急性呼吸器症候群(SARS)」もコロナウイルスによるものです。今回のMERSの原因となっている「MERSコロナウイルス」は、これまでヒトへの感染が見られなかった新種でラクダが感染源と考えられています。韓国以外ではヨルダン、カタールなど、中東のいくつかの国で感染者が見られ、フランス、ドイツ、イギリス、フィリピンなどからも感染が報告されています。中東以外の感染者はすべて、中東への渡航歴がある人か渡航経験者に接触した人です。
一般にコロナウイルスは、飛沫感染や接触感染でうつります。しかし、MERSコロナウイルスの感染経路については、現在のところ詳しくはわかっていません。今回の感染が医療関係者やその近親者で起きていることから、ヒトからヒトへ感染したと考えられていますが、咳やくしゃみの飛沫によるものなのか、接触によるものなのかは明らかになっていないのです。感染から発症までは9~12日。主な症状は、高熱、激しい咳、息切れや呼吸困難などで、ほとんどの患者が肺炎を起こします。また、多くが下痢などの消化器症状を伴います。腎不全を起こして生命に関わったケースも見られ、致死率が高い病気です。特に50歳以上の人や、糖尿病、高血圧、喘息などの慢性疾患がある人は重症化する危険性が高く、十分な注意が必要です。ただし、こうした症状は限られた症例がもとになっているので、今後の研究によって定説が変わる可能性は十分あります。また、免疫機能に問題がある人の場合は、これまでの例にあてはまらない症状が現れることも考えられます。
MERSが日本国内に広がる危険性はあるのでしょうか?ウイルスの潜伏期間が長く、水際で食い止めることは不可能なため、専門家は「日本にも入ってくるという前提で対応することが必要」としています。韓国では今のところ感染が限定的で、感染経路もほぼ把握されていることから、韓国よりも感染源とされるラクダがいる中東から入ってくる可能性のほうが高いという意見もあります。また現在は、2003年に大流行したSARSのようにヒトからヒトへ急速に広がる状態ではないと考えられ「院内完成を含む早期対応をきちんと行えば、二次感染を最小限に抑えることが可能」としています。厚生労働省では国内でMERS患者が確認された場合に備え、徹底した院内感染防止策などを医療機関に呼びかけており、疑わしい患者が来院した場合、渡航歴の確認、マスク・手袋をしての対応などを求めています。

現在のところ、MERSに対するワクチンはありません。MERSに特化した治療法もなく、発症した場合は症状に合わせて治療を行うことになります。予防法については、感染経路が解明されていないので明言はできませんが、咳やくしゃみをしている人との濃厚な接触を避ける、マスクを着用する、うがいなどでのどの乾燥を防ぐ、手洗いを励行するといった呼吸器感染の予防法を実践するとよいでしょう。また、最近、中東に行った人で、咳などの症状が見られるという場合は、ただちに医療機関を受診してください。


(2015.06.05.)



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