ドクターズガイド

肌の乾燥-ケアの常識を見直す(1)

空気の乾燥が本格的な季節に入りました。風邪をひきやすくなる、肌が荒れる、髪がぱさつくと乾燥を警戒する声があちこちにあふれています。特に肌の乾燥は女性の美容にとっても大問題で、関連する産業の大きさは社会経済のうえでも無視できないほどです。

しかしながら「肌の乾燥は良くない」という言葉は認識していても、どういう仕組みのなにがいけないのかを理解しないまま、企業の提案に乗っているだけのことも多く、結果的に逆効果の行動を取り続けている方も少なくありません。

今回は、肌の仕組みと乾燥について本当のところを理解し、数ある情報のなかから自分に必要なケアを判断できるようになりたいと思います。

■皮膚は臓器

大人の皮膚表面は平均1.7平方メートルの面積があり、体全体の表面を覆っています。また下記のような様々な機能を持ち、「体で最大の臓器」と言われます。

  • バリア機能:有害物質、細菌、カビ、アレルゲンの侵入阻止、体内の水分蒸発防止
  • 排泄:汗や皮脂に含めて老廃物
  • 体温調節:発汗や血管収縮で外気温の影響を防ぐ
  • 呼吸:全体の1%程度
  • 知覚:情報収集

このうち「乾燥肌」が害となるのは、主にバリア機能です。

■角質

皮膚の一番外側の角質層は、最大の仕事であるバリア機能を受け持ちます。図書館の本にかけられている透明なカバーのイメージでしょう。この体のカバーはセラミドを中心とする脂質と、NMFと呼ばれる天然保水因子を含む水分を主要成分として作られており、これらが隙間なく並ぶことで、外部からの異物侵入と体内の水分蒸発を防いでいます。
そして脂質と水分が十分にきっちり密に並んでいる状態は、滑らかで美しく見えるのです。

また最表面ですから外部刺激で傷もつきやすいのですが、常に古いものは剥がれ落ち、新しく作られて表面は修復されます。これがいわゆる「肌のターンオーバー」です。

■乾燥肌とは

乾燥肌とは、角質の水分含有量が低下している状態です。角質の水分は発汗や皮膚呼気などで減少しますが、体の内側や空気から補われ、これを皮脂、天然保湿因子(NMF)、セラミド(角質細胞間脂質)が保持します。

すなわち、これら角質成分のどれに異常があっても水分の保持が足りなくなって、結果として乾燥肌となるわけです。こうなると皮膚本来の機能も十分に果たせないことになります。

■ゴールは「角質の維持」

となると、乾燥肌を避けるための当面のゴールは、「正常な角質層の維持」ということになります。角質成分の生成は常に行われなければならず、これに悪影響を与える要因は避けねばなりません。

以下は、その悪影響の例です。

食習慣

脂質の不足
角質成分の材料ともなる必須脂肪酸は自分では作れない。ダイエットなどで油分を制限し過ぎると、ターンオーバーに支障をきたす。
亜鉛の不足
不足するとタンパク質合成が阻害され、ターンオーバーに支障をきたす。亜鉛の不足は以下のような原因で起こる。
  • ダイエット:亜鉛の摂取不足
  • 飲み過ぎ:アルコールを分解するときに亜鉛が使われるので、不足する
  • 加工食品の食べ過ぎ:添加物ポリリン酸NAが亜鉛を排出、不足する
  • 玄米など未精製物の食べ過ぎ:亜鉛を含むミネラルを体外排出するフィチン酸が多いので、不足する
ビタミンの不足
  • ビタミンAの不足:NMFの生成促進に支障をきたす。
  • ビタミンB、Eの不足:ターンオーバーの促進に支障をきたす。

生活習慣

睡眠不足
ターンオーバーのタイミングをコントロールしているのは、睡眠中に分泌される「成長ホルモン」なので、不規則な睡眠や不足でターンオーバーが阻害される。
肌に刺激のある寝具
肌に刺激のある寝具は摩擦を生じて角質層を傷つけ、剥がしてしまう。
入浴
  • 熱いお湯:セラミドやNMFは42℃で溶け出して流出してしまう。
  • 長湯:皮膚表面がふやけてふやけてセラミドやNMFが流出してしまう。
  • 体を強くこすって洗う:セラミドやNMFを含む角質層を剥がしてしまう。

これらはたいてい、肌との関係を特に意識せずに行っている可能性が高いので、「なるほどね」と思っていただける方も多いと思います。
しかし次に挙げる女性の美容については、ドキッとしたり、納得できないという方もいらっしゃるかもしれません。

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