ドクターズガイド

夏バテ
キーワードは「自律神経」

8月に入り、いよいよ夏本番に突入です。ここから1ヶ月は仕事ではもちろんのこと、遊びにおいても体調不良を絶対に避けたい時期。しかし昨今は際立った猛暑や天候不良もあり、疲れやだるさが残るようになってきている人も多くみられます。

これはいわゆる「夏バテ」ですが、疲れがとれない、暑いから体に負担がかかっているとひとことで言ってしまえばその通りですし、「疲れたら休みなさい」と言ってしまえば終わりです。しかしせっかくの楽しい夏、できることなら「疲れたくない」し「休みたくない」。夏バテ対策はすでにたくさん世にありますから、ここではそのメカニズムを把握して、少ないポイントで対策を成功させる手段を考えてみましょう。

■夏バテは慢性の熱中症

夏バテは、臨床的には「慢性熱中症」または「熱衰弱症」と呼び、「高温環境のなかで暑さのストレスにさらされ続けることで起こる生理的な衰弱」となっています。常に軽い熱中症の状態ということですね。ということは、夏バテを感じたときの対処は初期の熱中症と同様、水分の補給と涼しい環境での休憩が必要です。熱中症の対策については、こちらの記事を参考にしてください。(熱中症 危険な気候 ⇒)

■キーワードは「自律神経」

熱中症とはいえ、夏バテは日数をかけてだんだんとしんどさが増していきます。これは途中での回復が追いついていないということ。なぜ回復がおいつかないのでしょうか。重要なキーワードは「自律神経」です。自律神経には交感神経と副交感神経という2種類がありますが、ここではこれら全体としての働きについてとりあげます。

・常に体温調整を強いられる

戸外は高温多湿、体は必死に体温をさげようと頑張り、屋内にはいると冷えすぎないように頑張り、と、一日中体温調整作業に追われる状態です。体温調整を担当する自律神経はそれだけでも相当なボリュームの働きをしていることになります。

・夏場の自律神経は過剰労働する総務課のようなもの

自律神経は会社組織でいえば総務課のようなもので、消化や代謝、睡眠など体の各業務がスムーズに運ぶように環境を整える役目を担っています。体内のエネルギーや材料は無限ではありませんから、それぞれ必要なタイミングで必要な配分がまわるように、常に流動的に調整しているのです。そういった忙しい業務のなか体温調節の作業量のみが飛びぬけてに増えれば、ほかの機能の微調整に手が回らなくなってしまいます。

自律神経は呼吸、消化、血液循環、排泄、免疫といった業務の進行管理も担当していますから、そちらの管理が手薄になれば、体全体の不調となるのも道理なわけです。

・エネルギー不足

またエネルギーの量も問題です。それぞれの臓器で業務をこなすためのエネルギーは、会社でいうところのリソース(電力、人員、道具、設備など)。一カ所に過剰に投入してしまうと、ほかの業務が圧迫されてうまく回らなくなりますね。人体の場合も、体温調節以外にも十分まわせるだけのエネルギー、すなわち栄養摂取が必要です。

しかし消化しづらい食物というのは研修を必要とする人員のようなもので、それだけでもけっこうなエネルギーを必要とします。できることなら、こういうときはすぐに戦力になるこなれたベテランが欲しい。この消化活動の管理も自律神経の役目ですから、忙しいときには手間のかからない、消化しやすい食べ物が望ましい、ということです。

・悪循環が夏バテを起こす

このように、暑いということをスタートとして、回復するスキのないまま悪循環が進んでいくことで夏バテの状態になります。

暑い
 ↓
自律神経が多忙になる
 ↓
ほかの機能調整がおろそかになる。不調を感じ始める
 ↓
胃腸の働きも落ちてエネルギー不足になる。
 ↓
自律神経がいっそう多忙になり、それぞれの管理がいっそう手薄になる。
 ↓
各機能が正しく働かなくなる。
 ↓
体調不良となる。(だるい、下痢、食欲不振など)
 ↓
暑い中で活動を続ける

■対策は、快適・栄養・睡眠

結局、対策はもう聞きあきた「栄養・睡眠・無理をしない」ということになりますが、なぜそうするのかがわかっていれば、適切なタイミングとボリュームを判断する助けとなるでしょう。

・快適

まずは自律神経をヘルプしなければなりませんから、目下の最大作業である「体温調節」の負荷を減らしましょう。暑い中で長時間我慢しない、涼しすぎるところで冷えすぎないということです。快適を感じているとき、自律神経は一番スムーズに働けます。

・栄養

次はエネルギーの補充。体温調節に多く割いているぶん、十分な補給が必要です。汗で失った成分や、体全体の疲労回復に効率のよい栄養を摂取しましょう。より望ましいのは、消化自体にエネルギーを必要としないものです。

以下は、夏バテ対策に適した食品の一部です。

汗で不足したミネラルを補充:たらこ、イカ塩辛、濃い口しょうゆ、昆布佃煮、梅干、パセリ、アボカド、納豆、ほうれん草
糖質からエネルギーを作るビタミンB1を補充:豚肉、卵、豆類、シイタケ、ゴマ
ホルモン分泌を正常に保つために:肉、魚、卵、豆腐、納豆、牛乳

・睡眠

睡眠は、日中活動に割いていたエネルギーを細胞の損傷や免疫力の回復、記憶した情報の整理といった作業に振り分け、体をリセットする時間で、この作業も自律神経の仕切りで行われます。暑い日のように疲労やストレスによる細胞の損傷が多ければ、回復のための作業量も必要な時間も当然増えることになります。

また睡眠の質も問題で、熱帯夜で深く眠れなかったとなれば睡眠は不十分、すなわちリセット作業が不十分なまま次の活動にはいることになり、残っている損傷・疲れの上に当日のぶんを積んでいくという悪循環を招くのです。

いっぽう自律神経としてはなんとか回復ノルマに追い付いつきたい。合間合間に睡眠をはさもうと眠気を起こしたりしているうちに、昼夜のシフトを無視した睡眠スケジュールになり、いっそうよく眠れない、睡眠不足の状態が進みます。

これらを考えると、夏バテを進めない睡眠とは、「少し長めで質の良い睡眠」ということになりますね。まず、十分な時間を規則正しく確保しましょう。人によって必要な長さは違いますが、だいたいは6時間~8時間くらいといわれます。そして毎日同じ時間帯に定着させれば、自律神経のスケジューリングもやりやすく、回復作業の効率もあがるというものです。

人間は体温が下がるときに睡眠に入りやすいので、寝る前にぬるめの入浴をして少し体温を上げると、出たあとは体温が下降に向かい、すんなり眠りに入ることができます。

■自律神経に思いやりを

自律神経は、私たちが勝手に希望する活動にできるかぎり体をあわせようと、気づかないところで日々休みなく働いてくれています。こんな真面目で親切な働き手であっても、無理難題ばかり押し付けていれば、いつかはオーバーワークとなり、結果的に私たちの体という組織が立ち行かなくなってしまうのです。
自分の自律神経の仕事ぶりを少しでも理解し、協力体制をとって、夏バテにひっかかることなく乗り切りましょう。

 

(2013.8.1.)