ドクターズガイド

森内浩幸 医師 (もりうちひろゆき)

森内浩幸 (もりうちひろゆき) 医師

長崎大学病院(長崎県)
小児科
科長、教授

専門

感染症、免疫

医師の紹介

森内浩幸医師は、米国において感染症専門医トレーニング・コースを修了。感染症診療について日米両国で豊富な経験をもつ一方で、主にウイルス病の病態生理と母子感染に関する研究を精力的に続ける。厚生労働科学特別研究事業「HTLV-1母子感染予防のための保健指導の標準化に関する研究」では、研究代表者として「HTLV-1母子感染予防対策保健指導マニュアル」を作成。これまでに米国微生物学会 Young Investigator Awardなど、国際的な賞を数多く受賞している。

診療内容

同院で小児科長を務める森内医師は、小児科および小児科医のあり方について「小児科医には喘息発作や痙攣などに対する急性期の管理能力が不可欠である一方、慢性的な管理・療育を必要とする子どもたちをケアしていく事も求められます」と語る。
小児科とは、全ての診療科の中で最も総合診療科としての側面を持つ科目。そのため、「社会的認識を含め、実に幅広い知識が求められます。私たちは小児の健康福祉のためのプライマリーケアができる医師であることを心掛けています」と続ける。診療範囲は実に幅広いため、同院で多く扱う、あるいは得意とする疾患の治療について説明してゆく。

【感染症】…B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト成人T細胞白血病ウイルス(HTLV)、HIVなどのキャリア女性から生まれた子どもの管理を行う。特にHTLVに関しては、広く県内外からの相談やカウンセリングに応じている。また、先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症などの母子感染症の小児の診断・治療管理を行う。特に先天性CMV感染に関しては、保存臍帯や先天代謝スクリーニング濾紙血検体を用いた後方視的診断を実施しているほか、厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業研究事業)「全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染スクリーニング体制の構築に向けたパイロット調査と感染児臨床像の解析エビデンスに基づく治療指針の基盤策定」に関する研究班における「先天性 CMV 感染児に対する抗ウイルス療法検討ワーキンググループ」を組織し「先天性CMV感染治療プロトコール」をまとめ発表した(小児感染免疫2010; 22: 385)。このプロトコールに沿った治療管理に関する相談や指導、また治療効果判定の一環としてのviral loadの測定を実施している。母子感染に関しては、先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者の会「トーチの会」の顧問も務めるなど、社会活動にも力を入れている。特殊予防接種外来を開設しており、ハイリスク児への予防接種や渡航前の各種予防接種を実施している。不活化ポリオワクチンが認可される前には、輸入ワクチンの接種も実施していた。
長崎大学熱帯医学研究所臨床研究部門(特に臨床感染症分野、小児感染症分野)との連携で、ベトナムなどの海外で国際小児保健に関わる活動や研究も行っている。
【遺伝性疾患】…「長崎大学病院遺伝カウンセリング室」および「重症心身障害児・者施設 みさかえの園むつみの家総合発達医療福祉センター」と連係をとりながら、遺伝性疾患の正確な診断、そのための遺伝子解析、今後の方針立て等を行う。ダウン症児の日常生活能力の向上のために、特に急激退行として知られる思春期~若年成人にみられる病態に対して、塩酸ドネペジルによる治療研究を実施している。染色体異常児・者の会「バンビの会」とも密に連携を取り、また一般公開のダウン症フォーラムを毎年開催するなどの、社会活動にも力を入れている。
【循環器疾患】…新生児の緊急治療が必要な症例から、川崎病、学校検診、成人期に達した先天性心疾患など多岐にわたる。超音波検査は年間1,000例を越える件数を行っており、原則的に紹介当日に行う。必要があれば、小口径のプローブを用いた経食道超音波検査の施行も可能。ほか、ホルター心電図、不整脈の誘発や心筋虚血をみるための運動負荷試験(トレッドミル:予約制)、川崎病で冠動脈瘤を有するケースには心筋シンチグラフィーも行う。川崎病の治療においては、標準的治療に加え、重症例・治療抵抗例に対してはcyclosporine Aやinfliximabを用いた治療も実施している。
【血液・悪性腫瘍】…個々の疾患あたりの年間発症数が少ないため、代表的な疾患では現在全国的な治療プロトコールが作成されており、同科も参加しているという。以下に2・3の例を挙げる。
再生不良性貧血(AA)と骨髄異形成症候群(MDS)については、骨髄移植を含めた治療研究が進んでいる。AA重症型の患児でドナーがいない場合には、抗リンパ球グロブリンやサイクロスポリンを併用した免疫抑制療法が施行。一定の効果を上げている。
悪性固形腫瘍は症状も多岐にわたるため、治療方針や成績などは一様ではない。当然、小児科単科で対応できるものでもないため、小児外科・泌尿器科・整形外科・耳鼻咽喉科・形成外科・脳外科・放射線科など関係各科の協力のもと、集学的治療を行う。
白血病については、現在県内で小児の治療を行う施設が同院と佐世保市立総合病院のみ。日本におけるグループスタディーの草分けともいえる『小児がん白血病研究グループ(CCLSG)』に所属し、治療成績の向上に貢献している。
【神経疾患】…難治性(薬剤抵抗性)てんかんに対して、脳波・ビデオ同時モニタリングを実施している。また、発作症状・発作時脳波を5回程度、ほか発作間欠期と発作時のSPECTを行い、これら全ての非侵襲的検査情報から、てんかん焦点を推定する。その後、脳外科医を含む長崎てんかんグループ検討会で、次のステップの検査(侵襲的検査)に入るかどうかを検討する。てんかん外科治療を受けた患者のフォロー(発作頻度・発達・QOLの変化)も行っている。急性脳症・脳炎については、脳保護療法(脳低温療法、抗サイトカイン療法としてのステロイドなど)を中心に集中治療を取り入れ、その効果を検討している。リアルタイムPCR法による原因ウイルスの同定も実施している。変性・代謝疾患については代謝酵素測定及び生検によって、神経筋疾患については筋・神経生検によって診断確定。他施設と共同して遺伝子診断も行う。脳脊髄髄膜瘤や先天性水頭症などは、産科における胎児エコーやMRIを用いた胎児診断を行う。産科・新生児科・小児神経科・脳外科の連携により、早期新生児期から治療・管理がなされている。非進行性・進行性神経疾患に対する療育は、理学療法部・県立こども医療福祉センター(肢体不自由児、児童心理)発達外来・児童相談所(精神遅滞児、自閉傾向児)・長崎市障害福祉センター(ハートセンター)・佐世保市こども発達センターなどと提携して行う。
【アレルギー・リウマチ疾患】…対象となるアレルギー疾患は、気管支喘息・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎など。抗原(アレルゲン)検査は、血液・皮膚反応で行う。治療のほか、除去食の指導や、診断・除去解除のための負荷試験などを行う。ほか、食物アレルギー児の予防接種も行う。若年性特発性関節炎、若年性皮膚筋炎、SLEなどの各種リウマチ性疾患に対しては、的確な全身管理に加え、様々な分子標的療法を含めた特殊治療も実施している。
【腎疾患】…腎生検による病理診断を実施している。時には血漿交換などの血液浄化も行い、溶血性尿毒症症候群や血球貪食症候群など腎以外の領域でも、他の科などと協力して治療にあたる。
【内分泌疾患】…低身長や肥満などの訴えの多い病態への対応から、非常に稀な代謝異常に至るまで取り扱う。長崎県が行う先天代謝異常マススクリーニング検査陽性および疑陽性者の精密検査医療機関でもある。
【未熟児・新生児】…長崎市とその周辺の周産期医療の中核として、NICU/GCUでの未熟児やハイリスク新生児の集中治療を行っている。特に県内で最も小児外科系専門医が集中していることから、外科的疾患(含、各種臓器奇形)の診療では県内全域の中核を担っている。
最後に森内医師は「医療は『Service』であり、医学は『Science』。私たちは、患者さんやその家族の心身にわたる苦しみや悩みに答えていくことができなければなりません。医療は常に患者さん達が中心、そのニーズに答えていくことが医師の使命。私たちはしっかりとしたデータに基づき、最善の診療ができるように努める義務があります。『Evidence-based medicine』が掛け声だけで終わることがないよう、常に勉強が必要なのです」と言葉を締めた。

診療を受けるには

初診受付時間:8:30~11:00、土曜・日曜・祝日と12/29~1/3休診。要紹介状(ない場合は別途費用が必要)。森内医師の担当は、月曜・金曜の午前(小児一般・感染症)。

累積症例数または患者数

エイズ症例(ほとんどは米国):約100例。各種先天性免疫不全症(特に慢性肉芽腫症、高IgE症候群、伴性劣性無ガンマグロブリン血症など):約100例。渡航前健康相談およびワクチン接種:約30例。B型肝炎ウイルスキャリアから出生した児:約100例。HTLVキャリアおよびキャリアから出生した児:約50例。先天性CMV感染児:約50例など

年間症例数

各種先天性免疫不全症:数例程度、渡航前健康相談およびワクチン接種:5~10例。B型肝炎ウイルスキャリアから出生した児:5~10例。HTLVキャリアおよびキャリアから出生した児:5~10例。先天性CMV感染児:5~10例など。一般的な小児感染症は多数例。

医師のプロフィール

経歴
1984年3月 長崎大学医学部 卒業
1988年6月 国立仙台病院臨床研究部レジデント
1990年12月 米国National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)留学(1999年1月まで)
1994年7月 NIH Clinical Center臨床スタッフ(1999年1月まで)(この期間に感染症専門医トレーニングコースを修了)
1998年1月 Children’s National Medical Center (Washington DC)感染症科および特殊免疫科(エイズ診療部門)におけるVisiting Physician(1999年1月まで)
1999年1月 長崎大学医学部小児科学教室主任教授(長崎大学医学部附属病院小児科長併任)
2002年4月 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系専攻感染分子病態学講座感染病態制御学分野教授(~現在)
2004年2月 科学技術振興機構科学技術振興調整費研究領域主管 併任(~現在)
所属学会・認定・資格

日本小児科学会専門医・評議員・用語委員会委員長・予防接種感染予防委員会専門委員など、日本ウイルス学会理事、日本免疫学会、日本感染症学会、日本AIDS学会、日本小児感染症学会理事・研究教育委員会委員長、The Educational Commission for Foreign Medical Graduates(USA)、The American Academy of Pediatrics(International Fellow)、The American Society for Microbiology、The American Society for Virology、The American Association of Immunologists、The Immunocompromised Host Society、The American Society for Biochemistry and Molecular Biology、Asian Society for Pediatric Research

予防に心がけたいこと

1)ワクチンで予防できる疾患は、必ず接種して防ぐ!
世界中で毎年260万人(1分間に5人)の子どもが、ワクチンで防ぐことのできる病気のために命を失っている。日本でもワクチンが普及していなかった頃は、数多くの子どもが命を奪われてきた。とかく誤解や偏見の多いワクチンではあるが、正しく理解して積極的に接種していきたい。
2)胎内感染を防ぐため、ワクチン接種、性行為感染の予防、妊娠中の生活の注意に心掛ける!
先天性風疹症候群は、妊娠前にワクチン接種しておくことで防げるもの。先天梅毒は妊婦スクリーニングで感染がわかれば、正しく治療管理できる。先天性トキソプラズマ症や先天性サイトメガロウイルス感染症は、妊娠中の生活上の注意を守ることによって防ぐことができる。
大切な子どもの未来のために、妊娠中はタバコやアルコールだけではなく、食生活やネコや子どもさんとの関わりなどの生活上の注意に留意してほしい(患者会ホームページ参照)。

費用のめやす

保険診療費内

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長崎大学医学部小児科学教室: