林隆医師は山口大学医学部を卒業後、山口大学医学部小児科学教室に入局し臨床小児科一般を研修した。研修2年目には鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科へ国内留学、竹下研三教授に師事し小児神経学の基礎を学んだ。さらに岡山大学小児神経科の大田原俊輔教授が主催する点頭てんかん研究会に毎年参加し、日々の臨床で得た知見をもとに毎年演題応募するなど、臨床てんかん学を自己研鑽し、日本てんかん学会の専門医・指導医の資格を得たという。現在は近年患者数が急増している発達障害診療に力を入れ、現在も年間のべ約5,000人の外来患者の診療にあたっている。
小児神経学をバックボーンに、これまでに外来診療した患者数は延べ10万人を超える本邦では数少ない発達小児科の専門医である。子どもの診療だけでなく子どもをとりまく人的環境として父母からも信頼され、林医師の深い洞察と温かい言葉に涙する母親も少なくない。とはいえ、「小児科医は子どもの味方であるべき」というのが信条であり、親子で対立するような場面では子どもの代弁者として親に意見することも少なくない。また診療に限らず、発達障害に関する講演を年間30件程度こなし、発達障害の啓発につとめている。日本小児神経学会では評議員、小児精神神経学会では代議員として学会運営に寄与している。
2016年11月には第116回日本小児精神神経学会を主催し、「本当に必要な支援とは?」をテーマに支援について、発達障害の支援について学際的な理解に必要性を世に問いかけた。
「こどもの障害を治すことは出来ないし、治す気もない。なぜなら、治さなければならないような悪い発達などどこにもないからである。」(林医師)
子どもを肯定的にみるという信念のもとに実践してきた診療活動の実績が強い説得力となっている。
診療は予約制。全て林医師が診療にあたる。事前に問診表を送付し、学校の様子等については学校や幼稚園・保育園で記入してもらうものもある。これは子どもの状況を把握するために必要である。発達障害を狭義の疾病として捉えて治すことを目標にするのではなく、発達特性が少数派であるために多数派向けの世の中で生き難い状態を障害と考え、まずは子どもの特性を理解することを目標にしている。
「何故生き難いのかを、本人の特性だけでなく、環境とのマッチングで考えてみると、様々な支援策が見えてきます」(林医師)
発達障害の特徴を解決するのではなく、上手に付き合い、乗りこなし、最終的にはそれを強みとして利用できるような指導や支援を目指しているという。発達障害を医学的及び社会的側面の2つの側面から評価。医学的評価として、発達障害を特徴づける徴候について、問診(一部チェックリストを利用)を中心に確認し、必要に応じて脳波やCTなどの検査することによって行う。社会的評価としては、問診で家庭の様子を確認し、学校や幼稚園・保育園からの情報を加味して、生活上の困難感を確認することによって行う。また、専任の作業療法士が子どものトレーニングにあたる。従来の機能訓練に対する考え方とは異なり、障害を治すための訓練ではない。本人にとっては自分の特徴を前向きに受けとめることを、家族にとっては子どもの特性とうまく付き合える方法を模索することを目指している。
同センターでは、特に親・保護者支援に力を入れ、臨床心理士によりカウンセリングを行うことにより、子ども達にとって最も頼りになる環境である両親の支援とそれによる環境としての機能強化を目指している。読み書きの困難さに対して学校心理士による学習支援も行っている。
「保護者に対しては障害の概念よりも、子ども達のもつ特性を丁寧に解説し、具体的な対処法をセットにして丁寧に伝えています」(林医師)
同センターの親支援のモットーは、これまでの育児実践の肯定的評価とその結果である現在の状況を肯定的に捉えること。親・保護者がこれまで行なってきた育児実践について、理論的根拠をもって正当性を担保することにより、親・保護者が育児に自信がもてることを目標としている。薬物療法としては、てんかん診療は薬物療法が中心。一部信頼できるてんかん外科医への紹介も行っている。新規抗けいれん剤と古典的抗けいれん剤を組み合わせて、有効で副作用の無い処方を個人の特性に配慮しながら作成するオーダーメイドの治療を目指しているという。
一方、発達障害臨床でも薬物療法を行うが、社会心理学的アプローチを補強する補助的な治療と考えている。現在本邦ではADHDに対する治療薬として本邦ではコンサータ(Rマーク)とストラテラ(Rマーク)、インチュニブ(Rマーク)が、自閉症スペクトラム障害にはリスペリドン(Rマーク)、エビリファイ(Rマーク)が使用可能である。それぞれの薬剤の効能効果はADHD、ASDであるが、実際の薬効は症例ごとに微妙に異なり、文献上示されている病態(エンドフェノタイプ)と薬理作用を考慮し、豊富な臨床経験をもとに症状を起こす認知発達特性を意識した薬剤選択を行い、QOL(生活の質)の向上を目指すべく社会心理学的アプローチと組み合わせる包括的薬物療法を行なっている。
「『この薬よく効くね』だけは言って欲しくない。」(林医師)。
薬の効果が出たのは子どもが頑張ったからである。効果を薬の手柄にさせるのは子どものやる気を削いでしまい、治療教育としては最低なのである。
診療は全て予約制で林医師が担当。初診の対象は中学校3年生までです。受診を希望される方は火曜日の9:00~12:00、14:00~17:00の間に必ず電話で予約してください。
経験累積症例数 約13万例
年間患者数 のべ約5,000例
【所属学会・認定】…日本小児科学会 (代議員、専門医)、日本小児神経学会(評議員、専門医)、日本発達障害学会(評議員、機関誌編集委員)、日本乳幼児医学・心理学会(評議員)、日本脳・神経超音波学会(評議員、機関誌査読委員)、日本てんかん学会(評議員、てんかん専門医・指導医)、日本小児精神神経学会(代議員、学会認定医、第116回学術集会大会長)、子どものこころ専門医
【社会活動】NPO山口ウッドムーンネットワーク(理事長)、NPO法人山口発達臨床支援センター(理事)、重症心身障害児を守る会山口県支部(顧問)
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発達障害やてんかんは予防できるものではない。また、親・保護者にとって、子どもに発生した慢性の脳神経疾患や発達障害をそのまま受け入れることは容易ではないだろう。
発達臨床に関わる支援者の使命は、障害に対して、疾病・治療という医学モデルではなく、多数派向けの社会という環境の中で、少数派はその特性故に生き難いという社会モデルの視点で解説し、その子にあった特別な育児行動を実践してよいことを担保することである。障害とは子どもを否定する概念ではなく、発達障害診断は今その子にとって必要なことは支援として自信をもって実施してよいというお墨付きであり、発達障害診断は子どもを守るための概念なのである。
小児科・児童精神科を標榜するので、初診料・再診料に加えて小児特定疾患カウンセリング料、小児科療養指導料、通院精神療法、てんかん指導料が算定される。
初診では、検査や薬剤処方を除くと3割負担でおよそ3,000円、再診では2,500円程度。心理検査やCT、脳波検査、血液検査などの検査料は薬剤処方がでる場合は3割負担で4,000~6,000円の追加が必要。あくまでも目安のため、実際の診療では個別事例で異なる。上記に加えて、薬剤料は別途必要。てんかんや発達障害で検査や投薬が必要な場合は、自立支援医療(精神通院医療)を使用すると、負担額が前述の1/3になる。
作業療法や言語療法を受ける場合は、再診料に加えてリハビリテーション料が必要でおよそ2,500円程度。診断書など書類に関する費用は別途必要となる。
医療法人テレサ会 西川医院 HP: http://teresa-kai.byoinnavi.jp/pc/