ドクターズガイド

松原英俊 医師 (まつばらひでとし)

松原英俊 (まつばらひでとし) 医師

武田総合病院(京都府)
総合診療科
副部長

専門

慢性疲労症候群、胃食道逆流症(特に食道外症状)

医師の紹介

慢性疲労症状のほか機能性身体症候群で認められ、うつ病と捉えられがちな非器質的症状(慢性咳嗽、咽喉頭異常感症、睡眠障害、めまい、息苦しさなど)が胃食道逆流症と強く関連していることを突き止めた功績をもつ。病名を確定するための丁寧な問診や詳細な身体診察、細心の注意を払った診断や治療により、常に外来は予約待ち状態に。「現在の病気のコントロールばかりでなく、将来の予防も積極的に行い、なおかつ、元気になっていただく治療ができれば」という思いで診療を続ける。

診療内容

「金曜日の午後という限られた外来枠では対応できる患者には限りがあり、月に2名の新患を取るのがやっとの状況。受診を希望されても、現在でも10数名の待ちの状態なのです。それでも『ドクターズガイド』で多くの患者さんに目に触れることができ、慢性疲労症候群や特発性慢性疲労、ひいては機能性身体症候群で苦しんでいる方々に、わずかばかりでも良くなっていただける可能性があるのなら」と、取材を受けてくれた松原医師。
慢性疲労外来は完全予約で、ひとり約20分、初診の場合は約80分をかけた、丁寧な診療が特徴。
他院で慢性疲労症候群と診断された患者だけでなく「複数の医療機関を受診しても疲労感の原因の診断がつかない」「自律神経失調症と診断されたが、慢性疲労症候群ではないだろうか」といった患者で、外来は常に予約待ち状態が続いている。
診察では、患者が予め自由記載したこれまでの病歴・症状・検査歴などのほか、患者が当日記入したアンケートを見ながら、松原医師がこれまでの症状の経過・ライフイベントなどについて問診。その後、身体診察を行い、治療方針を立ててゆく。
「慢性疲労症候群が他の病気と異なる点は、患者本人以外に疲労感が分からず、検査でも測れないという点です。また、うつ病を併発する人も半数近くに上っており、うつ病との区別も診断が難しい点です」(松原医師)
検査では、通常の診察検査で身体的な異常の有無を診るだけでなく、慢性疲労をきたす甲状腺、副腎ホルモンの異常を採血で検査し、除外診断してゆく。
そのほか「6ヵ月以上続く定期的な疲労によって仕事や家事、通学ができない」といった大基準「のどの痛みや「リンパ節の腫れ」「睡眠障害」など、11項目の小基準の有無によって慢性疲労症候群の病名を判定する。
「慢性疲労を放置したからといって生命予後が大きく変わることはありませんが、社会生活ができず引きこもりになったり、寝たきりになることもあります。経験例では10年間にわたって1日3時間しか動けないケースもありましたが、生活習慣改善を行うことにより3日目で著明に疲労感の改善を認めています」(松原医師)
松原医師は慢性疲労の特徴的な原因を「睡眠の質が悪いこと」と断言する。
健康な人は一定睡眠をとれば副交感神経が活発に働く、慢性疲労症候群患者の場合、自律神経の働きが悪いことが影響し、睡眠中も緊張し続ける状態に陥ってしまうのだという。
にもかかわらず多くの人は、慢性の不快な症状の原因を「何らかの栄養素が不足しているからだ」と考え、より多くの食品やサプリメントを摂取する傾向が強くなる。だが、その行動はまったくの逆効果なのである。
「食事を摂取し体内に栄養素を取り込むためには1日あたり唾液で1.5L、胃液で2L、膵液2L、腸液3Lと膨大な分泌量を産生する必要があるだけでなく、口に入れた固形物を適切に消化するためにそれぞれの臓器特有の消化管運動を、適切なタイミングで行わなければなりません。さらに吸収についても、腸内細菌との関係を適切保ちつつ行わなわなければならないのです」(松原医師)
つまり、栄養素を体内に取り込むということは、膨大なエネルギーを必要とする行為なのだ。
「個人的な仮説ですが、1日の最後に摂取した食物の消化吸収が睡眠時間帯に行われ、またこの際、酸・アルカリ・各種消化酵素が大量に含まれた胃内容物がそれらに対し脆弱な食道内に逆流し刺激することすることは、大きく睡眠の質を悪化させていると考えています。したがって私は、消化管の運動などの機能が傷害されている機能性胃腸症、特に胃内容物が食道内に逆流する胃食道逆流症が、慢性疲労に大きく関与していると考えています」(松原医師)
しかし、このような消化管の働きが低下した状態を改善するための薬は今のところない。
消化管の働きを戻す方法について松原医師は「唯一、リハビリ――つまり消化管に負担がない食物をとり、消化管が動きやすくなるように歩行をすることとの見解を示す。
「海外では、認知行動療法や運動療法などが有効であるとされています。治療が難しい疾患の場合、生活習慣や考え方を改めるアプローチが効果的なのですが、日本ではこういった治療面の専門医が少ないのが現状です」(松原医師)
このような観点から、松原医師の場合も薬だけでなく生活習慣を見直すことで、睡眠の質の改善をはかり、患者自身の自己回復能力が高まるような治療方針をとっている。
なお、治療効果を挙げるためには2週間に1度程度の通院が理想だが、現在は予約が混みあっているために1ヵ月ごとの通院が原則。その後は症状に応じて、1~3ヵ月ごとの通院に移行していくという。

診療を受けるには

予約制。松原医師の診察は、月曜・火曜・木曜・金曜・土曜の午前

累積症例数または患者数

累積では慢性疲労症を感じている患者100例程度、そのうち約15例が慢性疲労症候群の診断に合致し、40名程度が特発性慢性疲労。その他、線維筋痛症など機能性身体症候群が占めている。

年間症例数

慢性疲労を感じている患者は年20~25例程度の新患患者があり、そのうち1~4例が慢性疲労症候群の診断に合致し、特発性慢性疲労と考えられる症例が過半数、その他を線維筋痛症など機能性身体症候群が占めている。

医師のプロフィール

経歴
1986年3月 滋賀医科大学医学部 卒業
1990年3月 滋賀医科大学大学院生体防御機構系修了
1990年4月 協和病院内科
1990年5月 西京都病院内科
1992年7月 米国国立衛生研究所Visiting tellow
1996年9月 公立甲賀病院内科医長
1999年6月 滋賀医科大学附属病院総合診療部講師
2009年6月 医仁会 武田総合病院総合診療科副部長
所属学会・認定・資格

日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本疲労学会、総合診療医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本家庭医学学会

予防に心がけたいこと

昔から「健康の秘訣に腹八分目」と言われてきた。現代医学においても「各種疾病にかからず若く長生きができるには、腹七分にすることが良い」という科学的根拠が示されている。その他、適度な運動、特に歩くことが良く、1日平均8,000歩くと体調がより良い状態に維持できる。
疲れを取る最大のポイントは「睡眠の質。慢性的な症状が続くのは「何らかの栄養素が不足しているからと考えず、「内蔵、とくに食道・胃腸が夜間休めていない」と考えるようにしたい。睡眠の改善には、睡眠時に胃や食道内に食物を残さないよう消化しきってから睡眠を取り、胃腸が夜間休めるようにすることが必要。翌朝の朝食にいつもの晩御飯程度の量を美味しく食べられれば「胃腸が睡眠中に休めた目安」と考える。なお、甘い菓子類やカフェイン、特にコーヒーなどは興奮作用で一時的に疲れが取れたように錯覚するが、かえって疲労が蓄積することになってしまう。疲れているときは消化管も疲れていると考え、食道や胃腸にやさしい食事を少なめに取ることが大事。

費用のめやす

すべて保険診療内。初診料のほか、必要に応じて採血検査が入る際も保険診療内で行う。