ドクターズガイド

伊藤 洋 医師 (いとうひろし)

伊藤 洋 (いとうひろし) 医師

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター(東京都)
院長 精神神経科

専門

睡眠障害、不眠症、むずむず脚症候群

医師の紹介

現代のビジネスマンの多くを悩ませる睡眠障害、不眠症の治療に関する専門医である。慢性的な不眠がきっかけとなって引き起こされるメタボリックシンドロームや、概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群、時差症候群、交代勤務睡眠障害などを指す)、むずむず脚症候群といった不眠症以外の睡眠障害全般についてもエキスパートであり、多くの患者が信頼を寄せている。テレビ番組などのメディアを通じて、睡眠の大切さ、短眠生活を原因として起こる弊害について語る機会も多い。

診療内容

「甘栗屋さんのように、気楽に寄ってもらえる総合病院ならではの外来を目指す」(同院精神神経科HPより)。精神科は気軽には受診しにくいという昔のイメージと異なり、最近では学生や若い女性が一人で受診するなど精神科の敷居が低くなってきた。ある医師はこの現象を「甘栗外来」と呼ぶ。同科は総合病院ならではのメリットを生かし、気楽に立ち寄れる甘栗外来を目指している。
日本では5人に1人が何らかの不眠症状に悩むと言われる。寝つきが悪い、寝た感じがしない、途中で目が覚める、朝早く目が覚めるという症状に加えて、眠れないことによって日中の作業能力が低下する、気分が沈む、イライラするなどの精神症状、あるいは運動機能に障害がある場合に不眠症と定義される。
伊藤医師はテレビ番組などのメディアを通じても、睡眠の大切さや不眠がもたらす問題について語ってきた。不眠の診療にとどまらず、メタボリックシンドロームなどの身体の病気との関連についても見識が深い。
例えば、糖尿病では20~30%の頻度で睡眠障害が見られ、高血圧や糖尿病に悪影響を及ぼすという。また、不眠の症状がある人は糖尿病や高血圧になる確率が高く、不眠症状のない人に比べると3~4倍高い。不眠症状が治れば糖尿病そのものも改善するというデータもある。治療しても改善しない高血圧症には睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合があり、その治療をすると高血圧症もよくなることもわかっている。メタボリックシンドロームなどの身体疾患の治療に際して、睡眠障害の有無に注意して治療することは、身体疾患をも良くすることにつながる―両者の間には密接な関係がある訳である。
メタボリックシンドローム治療においては、規則正しく生活し、日中の活動性を保つことが重要とされる。不眠がある場合には処方された適切な睡眠薬を服用し、不眠を治療することが、メタボリックシンドロームの治療にも有益だという。
睡眠薬イコール「依存性がある」「ボケる」というイメージを持つ人は多い。しかし以前の睡眠薬と異なり、現在多用されているベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系薬剤はむしろ適切に使用すれば効果的な治療手段となる。
睡眠薬は効果の持続時間によって超短時間型・短時間型・中間型・長時間型の4種類に分類され、寝つきの悪いタイプには超短時間型、中途覚醒タイプには中間型・長期型、早朝覚醒タイプには長時間型などが処方される。薬の量も不眠のタイプや年齢などにより個別に処方され、経過を見ながら調節するので、医師の指示通りきちんと服用することが欠かせない。そのためには受診時に服用状況や症状を正直に伝え、薬への不安や疑問があれば納得するまで医師に相談することが重要である。その意味において“甘栗屋のような精神神経科外来”は、眠りで悩む人にとって心強い存在と言えよう。

診療を受けるには

外来診療:月曜~土曜の午前。伊藤医師は火曜・金曜・土曜のみ外来を担当。同院には睡眠障害の専門外来もある。初診は紹介状が必要で、かかりつけ医によるFAX予約制度がある。

累積症例数または患者数

診療科全体での外来患者数:約2,100名/月

医師のプロフィール

経歴
1978年 東京慈恵会医科大学卒業
1986年 同大学医学部精神医学講座助手
1987年 同大学医学部精神医学講座講師
2004年 同大学医学部精神医学講座助教授
2007年 同大学医学部精神医学講座教授
2007年 同大学附属青戸病院院長(現・東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)
所属学会・認定・資格

日本睡眠学会理事 認定医

主な著書(編集・共著含む)


予防に心がけたいこと

睡眠不足を取り戻すために「寝だめ」をするとかえって体内時計のリズムが狂ってしまうので、週末は朝寝坊をせず、普段通りに過ごすことが鍵。また、眠ろう眠ろうと努力しすぎず「眠れるだけ眠れたらよし」とする、就寝前は音楽や読書で心身をリラックスさせる、睡眠薬を処方されたら自己判断でやめないことなども大切。

費用のめやす

症状により異なる。