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三島和夫 医師 (みしまかずお)

三島和夫 (みしまかずお) 医師

国立精神・神経医療研究センター病院(東京都)
精神生理研究部 睡眠障害センター
部長

専門

不眠症、睡眠・覚醒リズム障害、冬季うつ病

医師の紹介

三島和夫医師は、ヒトの睡眠・体内時計の調節メカニズムや睡眠覚醒障害の病態生理と診断治療法の開発を専門とする、睡眠のスペシャリスト。不眠症の診療ガイドラインの作成や厚生労働省の研究班や文部科学省の脳科学研究のスタッフとしても活躍。2012年8月三島和夫医師の研究グループは、世界で初めて睡眠・覚醒リズム障害の発症に体内時計周期の異常が関連していると発表。また、2011年の大震災には、震災後に不眠が増加していることを論文で発表するなど、不眠の原因の解明や睡眠が人や社会に与える影響について問題提起を行っている。

診療内容

近年、不眠に悩む人は急増しており、一般人口の2~3割、1割が慢性的に日中の強い眠気を感じており、20人に1人、65歳以上では8人に1人が睡眠薬を必要としている。世界的にも日本人の短時間睡眠は突出しており、特に事を持つ女性の睡眠が少ない。一過性の不眠症は、誰でも経験する寝不足であり、過度な心配は必要ない。しかし、慢性的な不眠になると、深刻な心身の問題が生じる恐れがあるという。睡眠障害全体は8分類100種類以上の疾病があり、不眠症と診断を受ける人が8%、睡眠時無呼吸症候群が3~5%、レストレスレッグ症候群が1~2%と言われている。
慢性不眠症に陥りやすい人の特長として、不適切な睡眠習慣がある。眠れなくても横になっていれば休まることはない。眠れないときはリビングに行き、眠気がやってきたらベッドに行くことが大切。また、安眠グッズを買いこんで眠ろうとする努力をするのも逆効果。かかりつけ医に睡眠薬をもらってきかないという場合は、不眠症の専門医に相談した方がいい。
不眠症状で診察を受けても「不眠症」の診断を受けるのは2割ぐらい。不眠症状を訴える人は精神疾患を併発するケースが多く診断がたいへんむずかしいため、精神科の医師の受診が望ましい。
三島医師のもとへは、薬を飲んでも効かない、不安障害を併発しているなど、難治性の不眠症の患者が多く訪れる。治療は薬物療法と認知行動療法を平行して行うのが効果的であるが、認知行動療法は保険診療で認められていないため、行っている施設が限られているのだという。
以下のような症状がある場合は睡眠障害が強く疑われる。
1.一ヶ月以上にわたり不眠症状が続いている(寝つきが悪い、夜中に目覚めて苦しい、朝早く目覚めて二度寝ができない、熟眠感がない)
2.眠り出すと息が止まる
3.夜になると、足や手を動かさずにいられない非常に不快な感覚があり、寝付けない(ムズムズ、突っ張る、痛いなど)
4.眠っているのに手足や頭が動き続ける
5.眠っていて突然大声を上げたり、歩き回ったりする
6.夜中に突然足がつる(こむら返り)、パニック発作が起こる
7.夜、十分に睡眠をとっているはずなのに、昼間に居眠りを繰り返す
8.睡眠時間がとても遅くて直せない、昼夜逆転になっている、不規則で毎日ばらばらである
■睡眠障害外来での検査・治療
同センターでは、睡眠治療における下記の最先端の設備を備え、必要に応じて専門性の高い検査や治療を行う。
1 睡眠・生体リズム研究・治療ユニット…ユニット全体が人工気象室であり、室温、湿度、照度、騒音を厳密に制御して、同時に6人の被験者(患者、治験参加者)がユニット内で長期間生活できるように設計されている。
2 各寝室・検査室…脳波、心電図、眼球運動、呼吸運動、筋電図などからなるポリグラフを連続記録することができ、睡眠覚醒障害の診断検査が行える。覚醒時には眠気の強さや精神運動機能の評価を行うことが出来る。
3 リビングルーム+光照射装置…室温、 湿度を細かく制御、騒音レベルは50dB以下(外部の音は遮断され全く聞こえない)、光照度は広範囲で調節可能、テレメトリー生態情報収集システム用アンテナ、赤外線ビデオカメラ、コントロールルームとのインターフォン等が設置されている。
4 検査室…ポリグラフ計測システム用アンプ、テレメトリー生態情報収集システム用アンテナ、赤外線ビデオカメラ、認知機能検査用のPCシステムが設置されている。
5 コントロールルーム…検査室内で行うポリグラフ信号(脳波、心電図、筋電図、呼吸、酸素飽和度、いびき音、体位等)は、コントロールルーム内の脳波計に送られ、赤外線ビデオカメラによって撮影された室内のビデオ映像・音声とともにハードディスク上に記録される。被験者(患者)の深部体温、体表温、心拍数もコントロールルーム内で表示・記録できる。被験者(患者)から採取された血液、尿、唾液等の生体試料は、DNA解析、遺伝子発現解析、ホルモン濃度の測定等のために、研究部内で処理される。

診療を受けるには

睡眠障害専門外来は完全予約制。同院HPより問診票と睡眠日誌をダウンロードし、予約日に記入して持参する。かかりつけの医療機関がある場合は紹介状も持参する。

年間症例数

睡眠障害外来の新患数:400名/年

医師のプロフィール

経歴
1987年 秋田大学医学部医学科卒業
1991年 秋田大学医学部精神科学講座助手
1996年 秋田大学医学部精神科学講座講師
2000年 秋田大学医学部精神科学講座助教授
2002年 米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授
2006年 国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部部長
2010年 (独)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長
所属学会・認定・資格

日本睡眠学会(理事)、日本時間生物学会(理事)、日本生物学的精神医学会(評議員)

主な著書(編集・共著含む)


費用のめやす

疾患により異なる。夜間睡眠ポリグラフ試験(3割負担で約3万円)など