ドクターズガイド

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地域リハビリテーションの普及をめざす

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―脳卒中の急性期の治療法について教えてください。

脳梗塞の超急性期治療は詰まった血管の血栓を溶かすか、脳血管内手術で除去します。しかし、治療可能な発症後3-6時間以内にこの治療ができる施設は限られます。

また、首の血管が動脈硬化をおこすと、内頚動脈狭窄が生じます。しっかり流れている血管分岐部にプラークができて血栓が集まり内腔が細くなります。すると脳梗塞が起こってしまいます。大きな血管の動脈硬化には、メタボリックシンドロームの管理だけではなくて、抗血小板療法に合わせて、この細いところを拡げる外科的治療が必要になってきます。首の血管の場合、細くなっている血管を手術によってきれいにすることができます。方法は首に切開を入れて血栓を取り出す血栓内膜剥離術があります。これは全身麻酔で手術をしなければなりません。もう一つの方法は、大腿動脈からカテーテルを上げていって、細くなっているところにステントというものを入れて、風船で膨らませて血管を広げる血管内手術があります。若い人の場合はやはり血栓内膜剥離術をしたほうがいいと思いますが、高齢者の方はステントの手術でも十分よくなります。

心原性の塞栓症は脳の血管はきれいなわけですが、心臓の中に血栓ができて、それが脳血管に飛んでいき、いきなり詰まります。これはバリバリ働いている方がある日突然倒れるというケースです。その原因のほとんどが心房細動です。心房細動とは、脈のリズムが乱れている上に強さが乱れていると、心臓の中に血栓ができてしまいます。その血栓が心臓から飛び出して、脳の血管を詰まらせることがあります。詰まらせた血栓が砕け散ってしまうと、一過性の脳虚血性発作ということで、回復します。しかし、詰まったままであると、大きな脳梗塞ができてしまうわけです。大きな脳梗塞ができてしまうと、ノックアウトされた状態になりますので、「ノックアウト型」の脳梗塞となり、心原性の塞栓症は重症だと言われています。この予防は先ほどの抗血小板療法ではなくて、心臓の中の血栓を溶かさないといけませんので、ワーファリンとか、新しくできている新規経口抗凝固薬NOACというのがあります。これらの薬は最近非常に使いやすくなってきていますので、心房細動のあるリスクの高い方は、薬物療法でしっかり予防していくということが重要です。脳梗塞になった後では取り返しがつきません。

-現在の脳卒中医療の課題は何でしょうか。

脳卒中の治療には、「脳卒中」という病気の管理、そして全身管理、リハビリ、この3つが必要です。脳卒中という病気の病態診断と治療は確立されています。しかし、脳卒中後の後遺症の診断・治療という学問が未熟でした。これらを同時進行していかないと、急性期、回復期、慢性期の治療がなりたちません。脳卒中の治療は、通常、急性期、回復期、慢性期と流れますが、障害のない方は急性期から直接自宅退院でき維持期となります。ところが、高齢者や障害を生じた場合、できる限り元の生活に戻れるようにするためには必ずこの回復期のリハビリが必要になってきます。現在、脳卒中の管理は脳卒中医、全身管理は主に内科医、そしてリハビリテーションはリハビリテーション医がやっています。この3つが全てできる若い医師を育てあげるのが、今の私の役割です。退院後も、この病気と障害の管理はずっと続きます。それを急性期や慢性期にきちんと指導できる回復期リハビリ病院が必要になります。しかし、急性期と慢性期にしっかりリハビリとケアを指導できる回復期リハビリ病院は世界にもありません。そういう体制がなかったからです。今それを進める必要があります。地域包括ケアのトップのモデル地域を作り、社会参加を促す地域リハビリテーションを普及しないと、この国は、超高齢化社会を乗り越えることはできません。

日本では人口10万人当たり回復期のベッドが50床必要だとされていますが、東京都内は40床くらいで不足した状態です。渋谷区は初台リハビリテーション病院がありますので、10万人当たり125床とダントツに多い状態ですが、2011年には中央区、千代田区、港区、品川区、目黒区、練馬区、葛飾区は回復期のベッドがありませんでした。これらの区の人口の合計は約220万人。なんと、220万の人は自分の区の中でリハビリ治療が受けられないということです。自宅退院後も自分の暮らす自治体でなく、他の自治体の外来リハビリを探さなくてはなりません。東京の中でさえもこのような現状です。

東京の都心に、回復期医療を中核とする高齢者の医療連携体制、これが充実した都市環境整備を実現する自治体、つまり地域包括ケアの最先端モデルの都市を作って、2022年に世界に発信するということが、今の我々の使命ではないかと考えています。

―脳卒中を予防するためには何をすればよいですか。

脳卒中予防の基本は、やはり血圧管理、これが基本です。あとは糖尿病、高脂血症、禁煙、不整脈、肥満の管理をすることです。暴飲暴食を控えることです。飲酒は日本酒なら一合まではOKですが、三合を超えるとリスクが高まります。

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