ドクターズガイド

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地域リハビリテーションの普及をめざす

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―入院後のリハビリスケジュールを教えてください。

2000年に回復期リハビリの制度が導入されました。それによって、二つのことが確立しました。ひとつは「攻めのリハビリ」、もうひとつが「医療連携」です。攻めのリハビリというのは、消極的なリハビリではなくて、積極的なリハビリです。どのように積極的なのかと申しますと、厚生労働省はリハビリ訓練時間として3時間を認め、有効な訓練が可能となりました。さらに、睡眠時間を9時間とすると、残りの12時間、この時間をも徹底的に起こしていくというのが攻めのリハビリです。我々のリハビリのスケジュールは、入院後、三日から一週間以内に初期のカンファレンスと面談を行って、一か月カンファレンス・面談、二か月カンファレンス・面談、退院前カンファレンス・面談をして退院となります。一か月は長いので、その間に臨時カンファレンスを入れます。また、入院初日が重要で、全職種による合同評価を午前中のうちに行います。ドクター、ナース、ケアワーカー、PT、OT、ST、ソーシャルワーカー、管理栄養士、薬剤師、チームマネージャーで、入院患者を20分で診察します。病名、病態、神経症状、全身状態、どのような基本動作ができるか、どのように介助するか、転倒リスクがどのくらいあるか、リスクに応じて部屋の環境をどのように整えていくか。さらに、訓練でどのくらいよくなるかの機能予後予測。立位歩行のために、下肢の装具が必要かどうか。そして、入院治療期間の見込み。それをみんなで評価検討して、午前中のうちにドクターが入院診療計画書を作成して、患者本人と家族に説明して、サインをいただきます。以上を経て、入院日の午後からリハビリが始まる、という流れになります。

一週間で、再発予防、基本動作訓練、歩行・ADL訓練、退院時ゴールをしっかりと設定して、一か月でそれを徹底します。そして、二か月目でそれを定着して、さらに、家族の介助指導。そして退院後の自宅環境調整と在宅サービスをしっかり整えて、外泊訓練を経て、安心して自宅退院するという流れになります。

我々の今の病院の在宅復帰率は98%です。自宅復帰率が70~80%です。これを実現するために、入院時カンファレンスの時に家屋情報の提供をお願いして、一か月以降に家庭訪問。最小限の必要な家屋改修をして、約二か月で2回ほど外泊訓練をして、自宅に帰るという流れになります。どうしても自宅に帰れないという家族の要望があった場合は、迅速に施設申し込みをすすめます。これはなぜかと申しますと、東京の老健というところは入院するのに約3か月の待機期間があるんです。ですから入院してからすぐ申し込まないと、3か月後の退院の時に間に合わないんです。有料老人ホームであれば、一か月くらいで入れますので、入る施設によって申し込みの時期が変わってきます。

―回復期リハビリで入院中に心がけたいことがあったら教えてください。

可能な限り、機能障害を軽快すること。そして、能力を向上すること。また、在宅や社会参加で困ることになる社会的不利を道具や知恵をしぼって解決すること。

毎日の入院生活では、広いリハビリ施設でどんどんリハビリするというのは素晴らしいことですが、そこまで行けない場合はお部屋で繰り返し起こして座り、立っていく、ということが大事です。装具や杖で歩けるようになったら、廊下を使ったり中庭を使ったり、階段を使ったり、ありとあらゆるものを使って移動訓練を行います。また、リハビリ時間とは別ですが、ベッドから起き上がって、車いすで移動して、もしくは、歩いて移動する、これをトイレのたびに毎回繰り返していく、この基本動作訓練が非常に大事になります。勿論、可能な限りおむつではなく、トイレで排泄して頂きます。食事時間も非常に重要で、むせずに飲み込めるかという嚥下訓練、そして自分で食べられるかという作業訓練、それから詰め込まないかという高次脳機能訓練、この3つが同時にできます。ですから、3食の食事プラスおやつとか訓練後の水分摂取をしっかりやっていくことが回復への近道です。それからお風呂も隔日で、2-3人介助でも普通浴に入ってリラックスして頂き、徐々に慣れてもらいます。退院するころには、ご家族介助、もしくはヘルパーさん介助で自宅のお風呂にも安心して入れるようになります。これらの繰り返しが意欲を増していくことになります。

(2014.06.04.)

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【酒向正春医師プロフィール】

脳卒中リハビリのエキスパート。愛媛大学卒業後、1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医となる。20代30代は大学病院や総合病院の第一線で手術に明け暮れる日々を過ごし、2000年デンマーク国立オーフス大学の助教授時代に、脳が持つ自然回復力や脳科学とリハビリの連携を学ぶ。病気の治療以上に人間回復させることが重要と考え、脳リハビリテーション医に転向する。2004年初台リハビリテーション病院で脳卒中診療科長、2012年に新設された世田谷記念病院にて同院副院長および回復期リハビリテーションセンターのセンター長を務める。できるだけ早い段階でリハビリする「攻めのリハビリ」を推奨し、脳科学的診断に基づき確実な成果を上げている。また、ライフワークとして、高齢者や後遺症を持った人にもやさしい街づくりの実現を目指し、「健康医療福祉都市構想」を提言。東京初台地区の「初台ヘルシーロード」や二子玉川地区の超高齢化社会に対応した都市整備にも尽力。

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