ドクターズガイド

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地域リハビリテーションの普及をめざす

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―脳卒中リハビリの現状について教えてください。

脳卒中リハビリの治療は、病院に運ばれた日から患者を起こしていきます。脳卒中の急性期治療とリハビリは同時に進めます。たとえば、脳浮腫で悪くなっていって昏睡状態になったら、改善する症例は手術で減圧して昏睡を治します。昏睡状態から回復できれば、早期に一般病棟に移せます。この昏睡状態を抜け出すまでの超急性期の治療はストロークケアユニットやICUでの治療であり、この時のリハビリが急性期リハビリです。ICUから出て、一般病棟に移れば、もう回復期リハビリ、というのが私たちの考えです。ですから、発症して2週間以内には回復期リハビリに入るというのが、現在の治療の流れと思います。

昭和時代のリハビリは、発症して体や関節を動かす、体位を交換するのが一週間以内、座るのが二週間以内、立つのが一か月、歩くのが一か月以降でした。現在のリハビリは、体や関節を動かすのは当日、翌日には座らせて、一週間以内に立って歩かせるという流れになっています。リハビリをしないと高齢者の方は二週間でその症状がかなり重篤化してきます。つまり、筋肉が委縮して骨も弱ってきて、関節が固まり始めて、心肺機能が低下することによって、起立性低血圧が起こり、精神・高次脳機能障害が起こります。これによって寝たきりになってしまいます。

2012年2月18日に天皇陛下が手術をされました。そして3月4日、二週間後に退院されました。そして一週間で、公的業務に参加されました。当時78歳です。リハビリテーションの力はすごい、というふうに日本中が絶賛しました。しかし、アメリカでは、手術して一週間で退院、その後一週間で職場復帰というのが当たり前なのです。二週間コースは78才ということを考えると、アメリカではスタンダードです。しかし、日本にそのスタンダードが来たというのは素晴らしいことだと思います。これを成功させた一番重要な要因は、急性期医療で天野篤先生が確実な外科手術をしてくれたからなんですね。そこは、やはり医療の基本であると思います。

―脳卒中になったときに、寝たきりにならないためにどうすればいいのでしょうか。

体幹筋と下腿三頭筋を鍛えなくてはいけません。そのために、徹底的に起こして座らせるといいわけです。かかとをついて、姿勢を整えて、セラピストが手を放しても座れる。こういう練習をすると、急性期病院を退院するときに、75%の方が座ることができます。見守りが17%、介助が8%という現状です。

この端座位訓練を開始したのが、初日を1とすると平均1.6日です。1分間端座位訓練ができるのが1.7日、5分間端座位訓練ができるのが2.1日。積極的に起こしていくのです。5分間の端座位訓練が困難だった方がお二人いらっしゃいました。この二人は90歳以上の高齢者の方で、重度の麻痺がありました。こういうリハビリをやっている間、起立性低血圧は起こらず、バイタルサインの変動が起こりますけれど、神経症状の増悪はなく、1分間端座位訓練ができなかった1名の方に廃用症候群が軽くおこったという現状です。ですから、こういう端座位訓練というのは、急性期リハビリで安全な方法です。入院した日から遅くても翌日には起こす、というのが基本です。

―では、退院後のQOL(生活の質)を高めるためには何が必要なのでしょうか。

人間回復のリハビリのために必要な要素は3つあります。食事を美味しく食べること、快適に眠ること、適度に運動すること。この3つができれば、皆さんよくなります。簡単なことなのですが、ただ、これには戦略が必要です。まず、食事を美味しく食べるには、リハビリ栄養の視点とサルコペニアの対策が必要です。快適に眠るためには、精神状態、排泄、睡眠を調整、管理して、日中寝ないように生活リズムを確立していかなくてはなりません。そして運動訓練は、単に体を動かすだけではなくて、動きながらのダイナミックな高次運動機能訓練も必要です。すなわち、生活リズムを定着して、良質な栄養と睡眠をとり、適度に運動し、脳を使っていく生活スタイルを身につけて頂くことが重要です。

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