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高血圧

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NIPPON DATA2010によると、日本の高血圧有病者数は約4300万と推定される。50歳以上の2人に1人が高血圧をわずらうと言われ、高血圧対策はすべての人にとっての重要課題だ。高血圧をいかに予防し、うまく付き合っていくかについて、独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院 院長の梅村敏医師に聞いた。

― 高血圧は、最も身近な病気の一つです。どのような人に多いのでしょうか。

高血圧は加齢に伴って発症しやすく、現在、日本では50歳以上では2人に1人、60歳代は約60%、70歳代は約70%というように、有病率は年齢とほぼ同じ割合と考えればいいでしょう。

「健康日本21」でも、高血圧の予防・治療の重要性が指摘され、日本全体の血圧値を4mmHg低下させるという目標を掲げています。しかし、高血圧の有病者数4300万人のうち、実際に治療を受け、降圧目標に到達しているのはわずか1/4程度にすぎません。

高血圧の原因は、高齢化、食生活の欧米化、肥満の増加などさまざまですが、ことに日本では塩分の過剰摂取が指摘されています。塩分摂取目標は1日6gとされますが、日本人の摂取量は約11gであり、かなりオーバーしているのです。

―塩分の過剰摂取は、高血圧発症の主犯格と言えるわけですね。しかし、なかなか塩分を減らすのは難しいものです。

生活習慣病は、生活習慣を改善すればよくなるはずです。しかし、お酒やタバコもそうですが、順調に改善できる人が少ないのが現実です。1~2年は頑張ることができても元に戻る人が多いのです。塩分が高い方がおいしく感じる、長年にわたり塩加減の好みがしみついているから、急に味を変えることは困難です。麻薬を感じる脳と塩分を感じる脳は近い場所にあるというのもうなずけます。

我々が塩分摂取量を減らせにくい習性は、人類の進化にルーツがあります。妊娠・授乳時に多量の食塩が母体から子供へと移ります。すなわち新生児(約15g);母乳(0.15-0.2g/日)で、約50-70gです。インスタントラーメンを食べると6gくらいあっという間に摂取できますが、遠い昔は摂取するのが大変な量でした。人類が20万年前にアフリカで生まれた頃、その地域で塩分はほとんど取れませんでした。子どもを産み育てるには塩分が必要です。現在は摂取した塩分の大半が排出されますが、かつては塩分を体内に貯めやすい遺伝子を持つ人々が生き延びやすかったのだろうとも考えられます。

このことは、動物も同様です。アフリカではある時期になると象等や猿が集まって土を食べる光景が見られ、それは塩分を摂っているのだといいます。彼らは特定の場所の土に塩分が多く含まれることを知っていて、生きるために塩分を摂取しているのです。

ちなみに、生後6カ月間、減塩食を食べた子どもは、15歳時点での血圧に有意差が出るという論文があります。減塩食に、幼少時からなれることが、重要であることが示唆されます。高血圧の人に限らず、すべての人にとって、塩分は控えた方がよいと考えてほしいですね。

― 生活習慣改善のほかに薬物療法も大切ですが、薬は一生飲み続ける必要がありますか。

生活習慣改善や減量がうまくいくとそれだけで血圧が下がり、薬を減らしたり、やめたりできる人もいます。ただし、それはごく一部の人です。そのため、多くの人では高血圧治療には降圧剤が欠かせません。降圧治療の最大の課題は降圧目標に到達すること。現在は、血圧を強力に下げてくれて、患者さんの満足度も高い薬が多くあります。

ただし「降圧剤を飲めばすぐ下がる」と過信しないで、生活習慣改善は並行することが必須です。生活を変えないで薬の量が増えれば、副作用のリスクもそれだけ高くなるからです。必要最小限の薬でやっていくというのは、すべての病気に言えることです。

患者さんのなかには「降圧薬を飲み始めたら、一生やめられないのでは?」と不安に思う人もいますが、決して中毒性がある薬ではありません。目的は、あくまで血圧をコントロールすることです。生活習慣改善と並行してきちんと服用する習慣をつけてください。

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