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過敏性腸症候群

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中高年の女性を中心に、多くの人々が悩む便秘。「このくらいのことで病院には行きづらい」と思われがちな病気の1つで、市販薬に頼る人も少なくない。しかし、便秘と一口に言っても、普通の慢性的な便秘(機能性便秘)もあれば、過敏性腸症候群(IBS)による便秘もあり、便秘のタイプや薬の成分によっては市販薬で悪化することもあるから要注意だ。便秘型IBSとはどのような病気でどう治療するのか、さらに2017年3月に発売された新しい薬の効果に至るまで、島根大学医学部附属病院副病院長・消化器内科診療科長の木下芳一医師にお聞きした。

――過敏性腸症候群とはどのような病気なのですか。

木下 2014年作成の消化器病学会によるガイドラインでは、「過敏性腸症候群(以下、IBS)は代表的な機能性腸疾患であり、腹痛あるいは腹部不快感とそれに関連する便通異常が慢性もしくは再発性に持続する状態」と定義しています。このように、お腹の具合が悪くて痛みと便通異常を伴い、ずっと症状が続いたり、起こったり止まったりするのに原因となるはっきりとした器質的疾患がないものを総称してIBSと呼んでいます。大きく分けると、便秘を主とする便秘型と、下痢を主とする下痢型の2つに分けられ、さらにその両方が混在する混合型があります。

――過敏性腸症候群のうち、便秘型はどんな人に多いのですか。普通の慢性的な便秘との違いも教えてください。

過敏性腸症候群

木下 元々、便秘は中高年の女性に多いものです。便秘が続いて下腹部が張ったり痛みが起こる、薬局の市販薬で痛みが悪化する、でも大腸内視鏡検査をしても異常がない、このような状態が典型的な便秘型IBSです。一方、便秘があってもあまり痛みがないのは、よくある便秘、慢性的な機能性便秘です。同じ便秘でも、腹痛があるかどうかが異なります。

便秘型IBSで腹痛が生じやすいのは、腸内に便が溜まって腸の壁を進展させたときに痛みを感じやすいからです。これを腸管の伸展知覚過敏といいます。これに対し、知覚過敏がない便秘が慢性の機能性便秘ということになります。しかし、この2つの境目がはっきりしているとは言い切れず、オーバーラップしています。現時点では明確に区別できるかどうかは明確になっていません。

なお、機能性便秘は人口の10~20%、便秘型IBSは3~7%で、これを合わせると人口の13~27%もの人がお腹が痛かったり、痛くなくても便秘で困っていることがわかります。島根大学医学部附属病院では便秘外来を開いていますが、かなり患者さんが多く、ニーズが高いのだと実感します。

――普通の機能性便秘と便秘型IBSが重複することもあるなら、どう診断するのですか。

木下 外来では、1日の排便回数、便の硬さ、残便感や腹痛の有無、食生活や運動の状況などをお聞きします。別の病気の心配もあるので、便に血がついていないか、貧血はないか、最近体重が減少していないかについても問診します。糖尿病やパーキンソン病、甲状腺機能低下症、電解質異常、膠原病など、便秘を起こしやすい病気がないかどうかもチェックします。麻薬系の薬や、抗コリン薬・向精神薬などの精神科の薬、さらに血圧の薬にも便秘を起こすものが多くあるので、服用中の薬の情報も大切です。

からだの診察も行い、手術の瘢痕があるかどうかを見ることも必要です。1cm程度でも腹腔鏡手術瘢痕があれば、癒着のために腸の中で通過しづらい場所があるかもしれません。腸の音を聞いたり、直腸診を行ったり、血液検査やレントゲン検査も行います。これらの検査はプライマリケア医でも大病院でも行うルーティーンで、何か心配があれば大腸内視鏡検査を行うのが通常の診断の流れです。

なぜこれだけの検査をするかというと、頻度が少ないものの、便秘で受診する人の中には大腸がんの人がいるからです。巨大結腸症、直腸瘤など、手術を要する病気の可能性もあります。こういった人を除いていくと、機能性便秘や便秘型IBSということになります。重複するので判別は難しいのですが、区分けが難しい割に治療法は似ています。だから診療上はそれほど困らないですね。

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