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痛風 一生の病気。根気よく治療することが大事

-関節に激痛が走るだけの病気ではない 内臓等にも症状がおよぶ

ある日突然関節が腫れあがり、大の男も痛くて歩けないほどの激痛に襲われる病気、痛風。特に親指の付け根の関節に起きる率が高いと言われており、一般的に、最初はいくつもの関節が同時に痛くなることはほとんどなく単関節炎であるのが特徴だ。

もう1つの特徴は、この痛み(痛風発作)が、たいていの場合1週間から10日ぐらい経つとしだいに治まり、しばらくするとまったく症状がなくなること(自然寛解)。しかし油断は禁物で、半年から1年経つとまた同じような発作が起こり、足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔も次第に短くなってくる。しかもこのころになると関節だけでなく、腎臓などの内臓も侵されてしまう。

病気の原因は尿酸だ。
尿酸は食物からだけではなく、人間のからだのなかでも作られている。この尿酸の血液中の濃度が、何らかの原因で上昇して飽和濃度を超えると、溶けきれずにからだのなかに蓄積されるようになり、ナトリウムと塩(えん)を作って結晶になる。さらに尿酸の濃度が高い状態が続くと、結晶が関節の内面に沈着し、痛風関節炎を起こす。

「痛風の激痛は、尿酸塩に対してからだの防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に発生します。また結晶が皮下にたまってくるとこぶのようなものができ痛風結節となります。さらに尿酸は腎臓から主に排出される物質で、尿中に沢山尿酸があると結晶化しやすいため、腎障害や尿路結石といった合併症も起きてきます」
と東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の細谷龍男医師は言う。

-第二次大戦後に急増 患者は男性が95%を占める

痛風は、欧米では非常に古い病気だ。
エジプトで発掘されたミイラの関節の中に尿酸塩を見つけたという報告があり、紀元前には、医学の父と呼ばれたヒポクラテスの文献にも登場するほどだ。しかし、第二次世界大戦以前の日本では、ほとんど見られなかった。
それが戦後、特に経済復興して豊かになり、食生活が欧米化してアルコール摂取量増えてきた1960年以降急激に増加し、現在、痛風患者は80万人から90万人いるといわれている。
「ただし、痛風の前段階である高尿酸血症に罹っている人の数はその10倍近くいるだろうと言われているので、90万人だとしたら900万人、80万人だとしたら800万人の予備軍が存在すると推計されます」(細谷医師)

患者のおよそ95%は男性であるという点も、痛風の大きな特徴である。

「女性は、女性ホルモンが腎臓からの尿酸の排泄を非常に良好にする作用を持っているおかげで、高尿酸血症になりにくく痛風にもなりにくいのです。
ただ閉経期以降は女性ホルモンの分泌が徐々に低下してくるので、70歳を過ぎると、血清尿酸値の男女差もなくなると言われています。女性でも尿酸値が上がり、痛風になる人が出てきます。これが5%以内と数値になります」(細谷医師)

-「回帰性リウマチ」「偽痛風」など 鑑別がむずかしい病気もある

診断は、痛風発作がでているときに血液検査で尿酸値を調べる。

「ほかにも皮下に出来たこぶみたいなものや関節液を調べて、尿酸炎結晶が証明されれば痛風と言う診断を下します。それが確実な診断方法ですね。もちろん関節炎の特徴、高尿酸血症の有無等も、充分診断の根拠となります」(細谷医師)

いずれにしても、単関節炎で足の親指の付け根であるなど、比較的特徴的な関節炎を起こして受診した場合、診断は容易だという。
とはいえ、「関節リウマチ」「回帰性リウマチ」「偽痛風」「化膿性関節炎」など間違いやすい病気も決して少なくない。

「関節リウマチの場合は、痛風が単関節炎なのに対してリウマチは多発性関節炎(複数の関節が痛む)ですし、男性がすごく多い痛風に比べて、リウマチは女性に比較的多いなど、大きな違いがあります。
一方、リウマチの亜系であると言われている回帰性リウマチは、痛風に似た関節炎を起こすので非常に間違いやすい。
また偽痛風もピロリン酸カルシウムという物質が関節内にたまって炎症を起こすのですが、やはり痛風と似た症状を呈します。
回帰性リウマチも偽痛風も、痛風と似てしばらくするとよくなったりするので、痛風と鑑別しにくい病気です」(細谷医師)

-尿酸値を下げる治療と同時に生活習慣病の治療も必要

治療のメインは高尿酸血症を是正することだ。しかしながら、闇雲に高尿酸血症を治療してはいけない。

「関節炎を起こしている最中に尿酸値をやたらと変動させたりすると、不思議なことに、かえって関節炎がひどくなったり、関節炎の治りが悪くなったりします。 ですから痛風発作を起こしたら、すぐに高尿酸血症に対する治療はしないで、まずは鎮痛剤や消炎剤を使って関節炎を抑え、落ち着いたところで高尿酸血症の治療をはじめるというのが原則です」(細谷医師)

服薬とともに、生活習慣の是正も重要だ。

「なぜかというと、痛風関節炎は大変痛くてつらい病気ですが、命を脅かしたりはしません。痛風の患者さんが命を落とすのは、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血、腎不全といった病気によることが多いのです。腎臓はもちろん尿酸が沈着して来ると腎障害を起こすし、尿路結石も起こす。しかしそれ以外にも尿酸が高い状態がつづくと、高血圧、高脂血症、糖尿などいろいろな生活習慣病を合併しやすくなるし、動脈硬化が進んだりします。
ですから、尿酸値をきちっと下げるとともに生活習慣を是正して高血圧や高脂血症も同時に治療していかないといけません」(細谷医師)

さらに重要なのは、長く、根気強く治療することだ。

「患者さんの多くは、痛かったり、つらかったり、なにか苦しいことがないと、熱心に病院に通ってきません。 痛風の関節炎は自然にほうっといても治まり、そのあと痛くもなんともない時期があります。すると病気は治ったと勝手に解釈して、薬を止めてしまったり、通ってこなくなる場合が少なくありません。結果、腎障害や動脈硬化などが悪化してしまい、かなり合併症がひどくなってから再度やってくる。それでは遅いんです。 やはり症状がないときにもきちっと藥を飲み、生活習慣を守らなければいけません」(細谷医師)

とはいえ、薬をしっかり飲み、正しい生活習慣を守るのは、なかなかむずかしい人もいるのではないだろうか。

「治療で一番むずかしいのは、患者さんが根気よく続けてくれるようしむけることです。どんなにいい治療でもやめられてしまったらもともこもありません。ですから私は、病気のなりたちや合併症の怖さ、生活習慣についてなど、患者さんとよく話し合い、納得してもらうことを大切にしています。
無理強いすることが生活指導ではないと私は考えています。厳格な生活習慣を患者さんに押し付けると多くの方が脱落してしまう。むしろ週2、3回、少しぐらいならお酒を飲んでもいいですよという風にしないと。
痛風は一生の病気。一番発症率が高い年代は30歳代ですが、あと何十年も働かなきゃならない人に仕事も人生も面白くないといわれても困りますからね」(細谷医師)

なるほど、長い付き合いになる痛風の治療は、一人の人間としての自分を分かってくれる医師に出会うことが一番重要なのかもしれない。

(2013.11.26.)

 


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細谷龍男先生(医師情報)

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 
東京慈恵会医科大学卒業、同大学院卒業、同第二内科講師、同第二内科助教、同第二内科教授を経て、2000年 講座改編により、同内科学講座(腎臓・高血圧内科)教授、2013年4月より同大学名誉教授、現在に至る。
主な研究分野は、腎臓病学・痛風・尿酸代謝
日本内科学会理事、日本腎臓学会理事、日本痛風・核酸代謝学会理事長、日本宇宙・環境医学会理事。