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痔の手術をいかに低侵襲に行うか!

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― 痔の半数を占める痔核の治療もさまざまだと聞きます。注射だけで済むというALTA療法について教えてください。

ALTA療法は、脱出性の内痔核が適応となることが多い治療です。予め所定の講習を受けた医師でなければ行うことはできません。以前、薬液の作用で痔核を腐らせて脱落させる腐食療法がありましたが、それとは全く異なるものです。ジオンという薬液を4段階に分けて痔核に注入すると、無菌性の炎症が起こり、粘膜下の結合組織や筋繊維、血管などが縮小します。ジオン注射は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸の混合液なので、治験段階ではアルミが体内に蓄積しないかと懸念されました。でも、尿から排泄されますし、微量なので問題ないとされています。

日帰りで済むためALTA療法を希望する方も多いですが、これはすべての患者さんが受けられる治療ではありません。腎不全の人や人工透析を行っている人、直腸炎の人など、受けられない場合もあります。

― ALTA療法と、従来の結紮切除のどちらが優れている、ということはあるのでしょうか。比較的新しい治療として知られるPPHについてもお聞きしたいです。

めったにないとはいえ、ALTA療法では肛門狭窄や直腸膣瘻を起こすことがありますが、これはあってはならない状態です。出たり入ったりを繰り返していた痔核が薬液で固まるというのは、それだけ劇的な変化が起きているということです。大きな組織反応を起こす薬液を注射して、どこまで浸透しているかは目に見えませんが、結紮切除手術においては、外科医は切除する部分を見ることができます。そのこともあって、結紮切除で重篤な合併症はほぼありません。

どのような治療にも良い面・悪い面があります。結紮切除の術後に起こる痛みや出血がリスクだとすれば、ALTA療法のリスクは合併症や再発が起こりうることです。再発の可能性があっても、結紮切除の痛みを回避したいと思う人はALTA療法を選ぶでしょう。反対に、再発を避けたい人は結紮切除を選ぶと思います。

PPHは、痔核のさらに奥の部分を帯状に切り取り、引き上げるように治療する方法です。痔核へ常にフィーディングされていた血路を途絶えさせ、うっ血していた痔核を治します。痛みを感じる部分の手術ではないのですが、なかには、PPH術後の頑固な疼痛に悩む患者さんもいます。

実は、私はPPHを1例も行ったことがありません。ALTA療法が絶対必要とか、PPHでなければダメ、というふうに思わないからです。でも、PPHを得意とする医師は、ALTA療法でも結紮切除でも対応できる場合にもPPHを行っています。慣れた医師が行うなら何ら問題はなく、きちんと治るはずです。医師とよく相談し、受ける治療の長所・短所をよく理解し、納得して治療を受ければよいでしょう。

― 治療の選択肢が増えるのはうれしいことですが、患者さんが医療機関を選ぶのは大変です。どう選べばよいでしょうか。

佐原力三郎医師

どの病院のどの医師が、どのような治療をしているか、身近な噂ではわからないものです。痔の場合は、お尻のことで恥ずかしいから周りに話さないという一面もあります。病院の症例数や、専門医が所属するかどうかの情報は判断基準の1つになるでしょう。臨床肛門病研究会には意識の高い医師が多いので、そのホームページの会員施設一覧も参考にしてみてください(http://www.rinkoken.umin.jp/

(2016.02.02)

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【佐原力三郎医師プロフィール】

東京山手メディカルセンター副院長 大腸・肛門病センター長

1978年群馬大学医学部第1外科に入局、1982年社会保険中央総合病院(現在の東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センター研修医。その後、同センター医長、部長を経て、2006年より同センター長。2007年より副院長。

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