ドクターズガイド

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不妊の原因因子の半分は男性側。あきらめずにまずは検査を。


―造精機能障害について教えてください。

最も多いのが、精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」です。射精した精液の中に精子が全くない「無精子症」、精子の数が通常より少ない「乏精子症」、精子が元気でない・動きが悪い「精子無力症」、奇形のものが多い「精子奇形症」などで、約7~8割程度に見られます。また、無精子症には、精子が全く造られないかほとんど造られていない「非閉塞性無精子症」と、精巣では精子が造られているのに通路がふさがって精液中に出てこない「閉塞性無精子症」に分けられます。

「閉塞性無精子症」の治療は、手術によって精子の通り道を再建(精路再建術)することで、精子が正常に射精され、女性側に問題がなければ自然妊娠も可能となります。ただし、精路再建術は、髪の毛より細い糸を使って顕微鏡下で行う難易度の高い手術です。国内では、技術を持つ医師はごく限られているため、病院によっては精路再建術という選択肢を示さずに「TESE(精巣精子採取術・精巣の一部の組織を取って精子を採取する)」などによって採取した精子を使って、顕微授精を行うケースもあります。

「非閉塞性無精子症」は、ホルモン剤などで精子を造れる場合もあるのですが、それはほんの一部の人で、ほとんどの場合は治療ができません。しかし、精巣の中で精子がわずかに造られている場合もあります。石川智基医師精巣を開けて、手術用顕微鏡を用いて精子を探す「micro-TESE(顕微鏡下精巣精子採取術)」を行います。micro-TESEは、日本で10年ほど前から導入された治療法で、陰嚢の皮膚を約3cm切開して精巣を開き、手術用顕微鏡を使って精子が造られている精細管を探します。精巣内には精細管が千本以上ありその中から精子がいる精細管を見つけ出し採取します。見つけ出して採取するまで約30分~2時間程度の時間を要し、成功率は医師の経験や技術によるところが大きいのです。私はこれまでに1,000例以上の多くの手術を経験し、最近では精子がいる確率の高い精細管を見分けられるようになってきました。私の場合は、局所麻酔を使用し患者さんもモニターに映る自分の精巣内を見ながら一緒に探します。丁寧に説明しながら進め、精子が入っているようないい精細管を見つければ共に喜び、万が一精子が見つからなくても自分の目で確認いただければご納得いただけます。そして次のステップへ進む決断も出来るかと思います。

石川智基医師

しかし、この治療のデメリットは、精巣を切開したことによる痛みが、術後2~3日残ることです。中にはとても痛くて辛い人もいます。まれに、男性ホルモンが元々低い、又は精巣が小さい方は、ホルモンが低下して男性更年期障害のような症状が出ることもあります。精細管を多く採取すれば精子の回収率は上昇しますが、合併症が起こる確率も上がります。 昨年オープンした私のクリニックでは、男性と女性の両方の不妊専門医が診療可能な環境を整え、micro-TESEで精子を採取し、同時に顕微授精を行う、「fresh micro-TESE」という治療も行っています。精子を凍結せず、夫婦一緒に治療ができるため時間のロスもなく、妊娠率も若干高くなります。

―男性不妊症の治療環境・費用はどのようになっていますか。

現在、男性不妊症の治療には社会的な支援がありませんので、自由診療にならざるをえません。精路再建術は、全身麻酔下で何時間もかかる手術なので、10分程度で終わる「simple-TESE」で早く精子を回収し、公的助成のある顕微授精を考えてしまう方も多いようです。現在「micro-TESE」は、健康保険の適用外のため、自費で30~50万円程度、日帰り手術が可能となります。 また、医療側の態勢にも問題があると思います。現在、日本では男性不妊症を診る医師が非常に少ないのです。男性不妊症しか診ませんという医師は、たぶん国内でも私だけだと思います。一般の泌尿器科医は、泌尿器全般を診る片手間に男性不妊症も診ていますという、少し中途半端な状態です。

―男性不妊症の専門医は国内に何人いらっしゃいますか。

石川智基医師

男性不妊症の専門医(日本生殖医学会の登録)は、現時点で全国に45人しかいません。この45人の中でアクティブに治療を行っている医師は約半数ぐらいです。婦人科医は通常、精液所見まで診た後、治療は泌尿器科の男性不妊症専門医を紹介します。人数が少ないこともあり、気軽に紹介できる状況ではありません。しかも、手術を受けるとなると、半年以上待たなければならない病院も珍しくないのです。ちなみに、micro-TESEを行っている医師は日本全体でも20名弱です。男性不妊の専門医を育成することが急務と思われます。


(2014.03.10.)

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石川智基医師(医師情報)

リプロダクションクリニック大阪 CEO/医療法人仁寿会 石川病院 副理事長 
男性不妊症治療のトップランナー。大学卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアの3カ国で生殖医療の基礎研究、臨床に従事。治療が不可能だった無精子症の治療や手術を数多く成功させている。2013年9月に外国では一般的な形態である「男性不妊」と「女性不妊」を同時に診療できる不妊専門クリニックを開院した。

 


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