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正しい知識があれば、感染症は回避できる

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2014年夏以降、感染症に対して敏感な人が増えている。デング熱の感染者が国内で出たこと、そして、エボラ出血熱が国内に持ち込まれるのではないかという恐れからくるものだ。相楽医師はこの状況を見て「正しい知識がないから、過剰反応が起きているのではないか」と指摘する。話題の感染症について、そして毎年必ずと言っていいほど流行する冬の感染性胃腸炎(ノロウイルス)についても話を聞いた。

― 相楽先生が感染症を専門とされてから現在に至るまで、国内の感染症はずいぶん変化したのではないでしょうか。

元々、赤痢などの感染症は戦後の日本にも存在していましたが、いつからか、海外旅行から帰った人が持ち込む「輸入感染症」が目立つようになりました。感染症が「グローバル化」していることを実感します。

私は内科からスタートし、その後小児科を経て、感染症を専門に診るようになりました。以前勤務していた横浜市立市民病院にいた頃は、初代の感染症部長として奮闘した時期です。たとえば2003年、SARS(※1)が世界的に流行した際は、60人以上の感染の疑いのある人を診療しました。SARSが出始めた頃は病院職員でさえパニックに陥り、中国から帰国した人で感染の疑いがあると、どの病院も診療をためらったものです。幸いなことに、同院ではスタッフの協力のもとに患者さんを受け入れることができ、結果として第二種感染症指定医療機関から第一種感染症指定医療機関に指定されました。感染症の診療にやり甲斐を感じることができました。

※1.SARS : severe acute respiratory syndrome…重症急性呼吸器症候群。 2003年に中国(広東省)を起源とする集団発生が報告され、32の地域と国で8,000人あまりの症例が報告された。日本国内では、2003年11月より1類感染症として報告が義務づけられた(現在は2類感染症)。

― 2014年夏から、エボラ出血熱に関するニュースが相次ぎました。これは致死率が非常に高い病気なので非常に気になるところです。この状況をどのように見ていらっしゃいますか。

相楽裕子

感染症への関心が高まる今、必要なのは「正しい知識」です。正しい情報が伝わっていないのではないか、これを一番懸念しています。たとえばインフルエンザであれば、かかった人が一人いればあっという間に感染が広がりますが、エボラ出血熱は、実は接触しなければ感染しないものです。

エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患で、日本では1類感染症として位置づけられています。38度以上の高熱、頭痛、筋肉痛、のどの痛みなど、風邪のような症状で始まり、嘔吐・下痢に続いて内臓機能が低下し、さまざまな部分から出血して死に至るというものです。しかし、空気感染することはありません。ただし、症状のある人の体液やそれによって汚染された物質が少しでも手や顔などに付けば感染する危険があります。過度に怖がったり、逆に過度に無視したりする必要はなく、必要な対策をきちんと行うことです。

― デング熱についても、「ついに日本でも感染者が出た」とセンセーショナルに報道されました。

デング熱に関しても同様で、海外から帰国した人が発熱すると、「デング熱では?」と過剰に反応していたように見えます。かつて、デング熱は東南アジアや中南米など熱い地域特有の感染症でした。デング熱を媒介するのは「ヒトスジシマカ」という蚊の一種ですが、実は、この蚊はすでに岩手県あたりまで飛来していることがわかっています。また、デング熱に感染したとしても、重症化することは稀です。こうした事実はあまり知られていません。すでに国内にいた蚊に、たまたまウイルスを持つ蚊が入ってきて、都内の公園で刺されて感染した、という見方が正しいように思います。正しい知識が普及していないから過剰反応が起きてしまう、これはノロウイルスのような、身近な感染症についても同様です。

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