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生活の質を高める低侵襲治療

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― 下肢静脈瘤は、どのように治療するのでしょうか。

下肢静脈瘤の治療は、硬化療法、高位結紮術・ストリッピング手術などの手術、血管内レーザー治療、保存療法、大きくこの4つに分けられます。この中で最も標準的な治療が、ストリッピング手術です。静脈の中に細いワイヤーを入れて、静脈と糸で結び、ワイヤーごと静脈を抜き取ります。以前は全身麻酔あるいは腰椎麻酔を行うため1週間ほどの入院が必要でしたが、現在は2~3日と短縮されています。当院では特殊な局所麻酔(TLA麻酔)によるストリッピング手術を開発し、日帰りが可能です。

また、近年、下肢静脈瘤治療の世界標準になりつつあるのが、血管内治療です。その特徴は、安全性が高く、痛みや傷口も少なく、体にやさしい治療であるという点です。静脈の中に細いカテーテルを通して、レーザーや高周波による熱で静脈をふさぎます。リアルな表現をすると焼肉と同じで、焼かれた静脈は縮み、内側からふさがって血液が流れなくなります。太ももの血管を引き抜くストリッピング手術と比べると、出血や手術の後の痛みが少ない、低侵襲な治療です。

― 外科的な治療が多いようですが、薬物療法はあるのでしょうか。

以前はありませんでしたが、現在は薬局で売られている第一類薬品(薬剤師がいる薬局で買うもの)、アンチスタックス(R)があります。ヨーロッパでは昔からあった薬で、ダイレクトOTCと言いますが、海外の薬をそのまま日本に導入したものです。西洋ハーブ薬と呼ばれ、日本で言えば漢方薬にあたります。赤ブドウの葉を抽出したもので、主成分はポリフェノール。効きめは緩やかで、2~3カ月飲み続けると効果が感じられます。そのため、軽症の場合にお勧めしています。

― 足の静脈の病気というと、エコノミークラス症候群と勘違いする人も多いと思います。下肢静脈瘤とエコノミークラス症候群は何が違うのでしょうか。

よく、「静脈で血栓ができて脳に達したら、脳梗塞になるのでは」「心筋梗塞を起こすのでは」と心配する人がいらっしゃいます。一般に、静脈瘤の血栓とは“深部静脈血栓症(DVT)”を指し、その血栓が肺に飛ぶと肺血栓塞栓症になる、この状態をエコノミークラス症候群と呼びます。飛行機に乗った時に起こったためにこの名前がついていますが、実際は入院患者に多く、長時間動かないことで起こりやすいものです。最近の事例でいうと、震災で避難した人ですね。車の中で寝て動かなくなる、けがをして安静にする等、地震の後はかなり増えました。こうしたエコノミークラス症候群と静脈瘤は別の病気です。静脈瘤があればイコール血栓ができるわけではないので区別が必要です。

― その他にも、下肢静脈瘤について誤解されていることが多いのではないでしょうか。

広川雅之医師

下肢静脈瘤が悪化すれば、皮膚炎に、さらにひどくなると潰瘍になることもあります。これを「壊疽」と勘違いする人もいます。壊疽は、糖尿病や動脈硬化の悪化とともに足の指先が腐ってきて、足を切断する必要も出る状態です。これと混同して、「静脈瘤が悪化すると足を切断しなければ」と考える人がいるのです。しかし、潰瘍になったからといって足を切断までするという心配はありません。ただ、皮膚炎になると具合も悪いし、生活の質も落ちます。きれいに治したい、あるいは見た目や症状が気になる人は、早期に専門医にかかって治療することをお勧めします。

(2015.02.24)

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【広川雅之医師プロフィール】

お茶の水血管外科クリニック 院長

1987年 高知医科大学卒業、同大第二外科入局、ジョーンズホプキンス大学医学部、東京医科歯科大学血管外科講師を経て、2005年より現職。東京医科歯科大学血管外科非常勤講師、医学博士、外科専門医、脈管専門医、日本静脈学会評議員、日本脈管学会評議員。静脈の病気を専門とし。内視鏡的筋膜下穿通枝切離術(1999年)、日帰りストリッピング手術(2000年)、血管内レーザー治療(2002年)など下肢静脈瘤の新しい治療法の研究・開発を行っている。

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