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全体の7割は耳から。治療は耳鼻科へ

※この記事は2013年12月12日にインタビューし掲載したものです。山本昌彦医師の最新の情報はこちら⇒(医師情報)

-最も多いのは澤穂希選手もなった良性発作性頭位めまい症

「めまい」といえば、サッカー女子日本代表=なでしこジャパンの澤穂希選手が突如襲われ、一時戦線を離れたことを思い出す方は多いのでは?澤選手のめまいは「良性発作性頭位めまい症」。

めまいの名医として知られる山本昌彦医師は、「めまいを来す病気の中では最もポピュラーな病気です」と語る。めまいと聞いて誰もがまっさきに思い浮かべるであろう「メニエール病」は、実際は、それほど多い病気ではないらしい。
「『メニエール病かもしれない』と紹介されて来院された患者さんのうち、本当にメニエール病だった方はわずか1~1.5%しかいません」 過去に、内科など他の診療科を受診したものの、治らなかったという患者の多くは別なめまいの病気であったという。

「めまいの診断にはトレーニングが必要です。耳鼻科医ならそうしたトレーニングをきちんと積んでいますから、めまいの症状がある方は、まずは耳鼻科を受診されるべきでしょう」

-三半規管内に溜まった「ゴミ」がバランスセンサーを乱す

「めまい」は病名であり症状である。ぐるぐると目が回る、ぐらぐらと揺れる、ふわふわと身体が浮いているようなど、その感じ方はさまざまだ。

耳(内耳)から来るものと、脳から来るものがあるが、全体の7割は、耳から来る。耳からのめまいには、メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症のほか、事故や藥等による内耳障害があり、最も多いのが澤選手もなった良性発作性頭位めまい症なのだ。

「良性発作性頭位めまい症は、内耳の中にあるバランスを感じるセンサーの1つ、三半規管内の内リンパ中に本来は存在しない「耳石」などのゴミが溜まることで起こると言われています。頭を動かすと耳石がリンパの流れを乱すため、バランスを感知するセンサーが混乱、めまいを起こすのです。この耳石は、あまり運動しない生活を送っている場合にできやすいんですよ」

その他、メニエール病はストレスが原因で起こる場合が多い。突発性難聴、前庭神経炎は、原因がよくわかっていないが、体力の弱っている場合に起こしやすい。

とはいえ、澤選手に限って「運動不足」ということはありえない。 「同様の頭位性めまいは、交通事故のむち打ちや、転倒での頭部打撲でも起こしやすく、澤選手は、ボールのヘディングや転倒での身体の打撲によるむち打ちに近い現象を繰り返したために起こした可能性が強いと思っております」

-運動療法、カウンセリングも有効 改善が見られない場合は手術も

診断の基本は問診だ。

「めまいの起こった時期や様子、そのとき聞こえの状態はどうだったか、日常生活の過ごし方、ストレス等を尋ねます。検査は、眼振検査(めまいの程度を調べる検査)、平衡機能検査(からだのバランスがきちんととれているかを調べる検査)などの他、脳血管障害や脳腫瘍などが原因のめまいと鑑別するための小脳・脳幹機能検査、必要に応じてMRIによる画像診断も行います」

治療には薬も使用するが、根本的に治すには、メニエール病であれば、原因となっているストレスや疲労が改善するよう環境を変えることが必要であるし、良性発作性頭位めまい症であれば、三半規管に耳石が溜まるのを防ぐ浮遊耳石置換法・運動療法が、簡単な上に効果もある。

また薬物療法では利尿薬、循環改善薬で、めまいを起こす、内耳のむくみを取り除くや内耳機能改善させる。さらに症状が重く、改善が見られない場合は、鼓室換気チューブ留置法、内リンパ嚢解放術、鼓室内薬液注入法などの手術が検討される。

「良性発作性頭位めまい症に対する運動療法は、うちの科で独自に考案したもので、自宅で行えます。『東邦大佐倉病院方式の良性発作性頭位めまい症の運動療法』と名付けているんですがね。この療法を指導することで、通院回数を減らしながら大きな治療効果があげています」

しかしながら、山本医師の治療は、そうした純然たる耳鼻科的な医療を超えている感がある。というのも、めまいはストレスがそもそもの原因になっている場合も多い病気だからだ。

「治療には薬も使いますが、根本を解決しないと本当によくはなりません。カウンセリングを30分から1時間ぐらい行って、たとえば職場の人間関係が原因だと突き止めたら、実際に会社の方に来ていただき、患者さんの配置換えをお願いすることもあります。もちろん、患者さんと話し合った上で、です。
めまいの診療は、まるで人生模様を見ているようですよ」

(2013.12.12.)

 


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山本昌彦先生(医師情報)

東邦大学医療センター 佐倉病院 耳鼻咽喉科 名誉教授
1973年東邦大学医学部卒業。同大医学部講師、助教授、東邦大学医学部佐倉病院耳鼻咽喉科学教授を経て、2012年より東邦大学名誉教授に就任。同年より東邦大学医療センター佐倉病院非常勤担当ならびに東京女子医科大学八千代医療センター非常勤担当として勤務。