コラム
第5回 食事療法について
これまでにお話してきた動脈硬化で起こる病気の大きな原因は肥満(内臓脂肪型肥満)です。肥満は、脂肪代謝異常、高血圧、糖代謝異常などを引き起こし、食生活の改善や定期的な運動によって改善できる可能性を多く秘めています。
肥満を予防するにあたって、まず、食生活からなる自分の摂取量が適量かどうかを確かめてみましょう。
私たちは安静状態であっても、心臓を動かしたり、呼吸をしたりしますね。この様な、生きる為に必要な最低限消費されるエネルギーを基礎代謝と言います。基礎代謝量は年齢や、日々の運動量によっても変わってきますが、生きる為に絶対に必要なカロリーなので必ず食事から摂取する必要があります。一般的な数値は[表1]を参照してみてください。ちなみに、スポーツ選手や筋力トレーニングをしている人等は筋肉量が多い傾向にあることから、基礎代謝は増加します。
表1 ≪基礎代謝基準値≫
年齢 | 男性 基礎代謝基準値(kcal/kg/日) |
女性 基礎代謝基準値(kcal/kg/日) |
18~29 | 24.0 | 22.1 |
30~49 | 22.3 | 21.7 |
50~69 | 21.5 | 20.7 |
(※厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2010年版)参照)
次に自分の一日の平均消費カロリーを計算してみましょう。
1日の平均消費カロリーは表1で出した基礎代謝に表2の数字をかけて導き出します。会社までほとんど歩かず、会社でもほとんどデスクワークと言うような生活を送られているかたは低いレベルを、毎日駅まである程度歩いて出勤されている方などは普通レベルを、定期的に運動をされている方で、普段から歩くことの多い方は高いレベルを選んで計算してみてください。
例えば、50歳で60キロの男性で身体活動レベルが普通の人ならば、
21.5×1.75×50=1881kcal
となります。
この計算で出た数字が普段生活する上で必要なカロリーと予想されます。[表2]
表2 年齢別にみた身体活動レベル(男女共通)
身体活動レベル | 低い | 普通 | 高い |
18~29(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.0 |
30~49(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.0 |
50~69(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.0 |
70以上(歳) | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
では、今度は自分が本当に肥満なのかどうかを確かめてみましょう。
それを確かめるのにBMIを使います。BMIはBody Mass Indexと言い、自分の肥満度を確かめることができるのです。
BMIは 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。
この値は、22程度が理想と言われていますが、表3を参考に肥満度を確かめてみてください。スポーツ選手などは筋肉量が多い傾向にある事からBMIは多めにでます。
表3 判定基準値
肥満指数(BMI) | 状態 |
18.5以下 | 痩せている |
18.6~24.9 | 正常 |
25.0~29.9 | 太っている |
30.0以上 | 肥満 |
正常は、表3のようにBMI18.6~24.9ですが、2011年の厚生労働省の発表では、25~29.9(表3 状態 太っていいる)が最も寿命が長いというデータが出ました。
しかし肥満の基準(BMI30.0以上 腹囲 男性85cm、女性90cm)以下になるように努力する必要があります。
食事の内容は、炭水化物を豊富に、コレステロール 飽和脂肪酸を低く、野菜 果物 ナッツなどで食物繊維を増やし、減塩することにより効果的に血圧を低下させることができます。
また、油はコーン油 紅花油を使い、青魚を食べると中性脂肪が減量し、高脂血症の人の食事として勧められています。
最後に、お酒の好まれる方へ。
暴飲は心疾患のリスクが高くなりますが、毎日のアルコール25.0g(ワイン250mlまたはビール500ml)は逆に心疾患のリスクが軽減されます。ということは適度な飲酒が勧められますね。
次回は運動療法についてお話しします。
(※表1~表3について:2011年度厚生労働省発表参照)
第1回 胸が痛いと感じたら・・・
第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法
第3回 治療法
第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症
第5回 食事療法について
第6回 運動療法について
<大西健二氏 プロフィール>
大阪大学医学部卒業。医学博士。1974年、ケニア共和国 国立ケニアッタ病院心臓外科開設のため、日本チーム隊長として勤務。1977年、紀南総合病院心臓血管外科開設部長として勤務。大阪大学医学部付属病院第一外科講師、大阪府立病院心臓外科部長、桜橋渡辺病院副院長などを経て厚生年金病院医療顧問として現在に至る。