ドクターズガイド

病気を調べる(家庭の医学)

ベーチェット病

全身性の病気で、原因は不明です。
日本人の報告症例数は特に多く、ぶどう膜炎中に占める数ももっとも多い病気の1つです。

[症状]
全身的にくり返し起こる“アフタ性口内炎”〔食べ物や飲み物がしみる小潰瘍(かいよう)〕、皮膚症状(下肢にできる紅い結節、にきび様皮疹、皮下の血栓性静脈炎など)、外陰部潰瘍(かいよう)および目の炎症が4つの主症状と呼ばれています。




このほか関節炎症状、消化器症状、大血管炎、精神・神経症状、副睾丸(こうがん)炎、腎障害や肺症状など、全身的にさまざまな症状を起こします。
4主症状以外を副症状といいます。

診断はこれらの症状を組み合わせておこなわれます。
発病は20代から50代に多く、男女比はほぼ同じです。
目では虹彩毛様体炎を中心とする前眼部型と、眼底〔網脈絡膜(もうみゃくらくまく)炎〕に強い滲出(しんしゅつ)や出血を起こす後眼部型に分かれます。
90%以上が両眼性です。

この病気が問題なのは、視力の予後が非常にわるいことで、特に後眼部型では従来、ぶどう膜炎を起こしてから10年以内に視力が0.1以下になるのは、80%といわれていました。

失明していくのは併発白内障、視神経萎縮、黄斑部変性、黄斑部孔形成、緑内障(りょくないしょう)や“眼球癆(がんきゅうろう)”(目が力をなくし、しぼんでしまった状態)などによります。

[治療]
急性の発作をくり返し起こさないようにすることが大切です。
前眼部型では発作時には、1%アトロピン点眼により目の安静を保ち、副腎皮質ステロイド薬の点眼で炎症を早く抑える必要があります。

頻回に発作を起こす場合には非ステロイド抗炎症薬や、時に免疫抑制薬の内服もおこないます。

後眼部型は、一度発作を起こすと視力の回復に時間がかかると同時に、視力障害を残してしまうことも多いので、できるだけ発作を起こさないように治療する必要があります。

内服薬としてコルヒチン、シクロホスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬がよく使われます。
前眼部にも炎症が及んでいることが多いので、このための治療は前眼部型と同じです。

これらの治療で効果がないときは、シクロスポリンやタクロリムス内服もおこないます。
この薬は特にTリンパ球にはたらいてその作用を弱めることにより、病気に効果があらわれますが、ベーチェット病では、いままでの薬では効果のなかった例でも、よく効く場合が多くあります。
しかしこの薬には腎障害をはじめとしていろいろな副作用があきらかにされていますので、使用にあたっては十分な検査と注意深い観察が必要となります。
(ベーチェット病)