ドクターズガイド

酒井成身 医師 (さかいしげみ)

酒井成身 (さかいしげみ) 医師

国際医療福祉大学三田病院(東京都)14病院のクチコミ
形成外科部長、美容外科
国際医療福祉大学 教授

専門

乳がん手術後の乳房再建、陥没乳頭修正術、乳房の美容外科、眼瞼の美容外科、義眼床形成術

医師の紹介

酒井成身医師は、乳がん手術後の乳房再建において全国最多の症例を扱っており、マスコミにも多く取り上げられている。第28回美容外科学会会長を務め、美容外科手術にも精通。乳房手術としては豊胸術、乳房縮小術、陥没乳頭修正術など、眼瞼部の手術としては重瞼術、眼瞼下垂修正術、眼瞼しわとり術、義眼床術、顔面しわとり術も手がける。陥没乳頭修正術においては、自身で「酒井法」を開発。乳頭が皮下に潜り全く出て来ないような治しにくい難治性陥没乳頭でも、授乳機能を備えつつ突出させることを可能にした。

診療内容

特に乳房再建術に多くの実績をもつ酒井医師。シリコンインプラントを用いず、自家組織のみによる乳房再建術は世界的にも珍しく、他施設ではなかなかできないもの。首都圏はもとより全国各地から多くの患者が来院し、常時1年先まで予約が埋まっている状態である。
乳房温存で部分切除を受けた患者や乳房切除を受けた患者について、すべての乳房を再建することが可能。乳房を全切除した場合でも、それは同様である。乳がんを切除した部位の皮下組織が残っていれば人工乳房を挿入することも、広背筋皮弁や腹直筋皮弁など自分の体の組織を移植して再建することもできる。ただし、皮下組織が薄い場合や、傷の瘢痕が強い場合には、人工乳房は使えない。また、術後に放射線療法を行った場合は組織が硬くなるなどの理由により、乳房再建は難しくなる。
再建時期としては、乳房切除後1~3年経過してからのほうが、再発などの心配もなく望ましい(がん再発により再建した乳房を切除するような状況にならないよう、しっかり乳がんを治してから行うこと)。基本的には十数年後でも再建は可能だが、免疫力等の問題もあるため、若いうちに受けたほうが望ましい。なお、酒井医師が乳房再建を行う場合は「誰が見ても必ず満足できるような、左右対称で形態のいい乳房の作成」「決してがんが再発しないような状態の症例において乳房再建すること、または再発しないようしっかりと治してから乳房再建を行うこと」の2点にもっとも重点を置くという。
乳房再建の方法は、1)「人工乳房(生理食塩水バッグやシリコン・ゲル・バッグ・インプラント)」を用いる方法と、2)「自家組織(広背筋弁や腹直筋弁)」を用いる方法に大きく分かれる。
乳房切除部の傷跡の状況や年齢、背部や腹部の再建に用いる皮膚や筋肉の状態、今後妊娠や出産を希望するかなどのさまざまな要素を考慮したうえで、どの術式を選択するかが変わってくる。
1)は、乳房の皮膚の下に乳房と同じような柔らかい水風船のような袋を入れる方法である。この手術は、大胸筋が残っていて乳房部の皮膚にゆとりがあり、多少の皮下脂肪が残っている場合に用いることができる。
手術時間は2時間程度と短く、手術後の痛みも少ない。乳房切除の傷跡を利用するため、新たな傷ができることもない。とはいえ「バッグのパンク・破損」「瘢痕が硬く皮下組織が薄い場合に挿入した場合の人工乳房の露出」「バッグ周囲にできる被膜形成(被膜が拘縮を起こすと球状に変形硬化する)」「感染を起こした場合は人工乳房を取り出さなければならない」「皮下組織が薄いときに挿入した場合の表面に見える波打ち」などの欠点もある。なお、皮膚にあまりゆとりがなくても皮下に厚みがある場合は、まず、ティッシュ・エクスパンダーという袋を入れておき、皮膚の余裕を見ながら1ヶ月おきくらいに少しずつ食塩水を注入、3~6ヶ月後に十分に皮膚が伸びたところでコヘシブシリコン・バッグなどに入れ換える方法もある。
2)は、乳がん切除部の瘢痕が強く人工乳房が用いられない場合や、本人が異物による再建を嫌う場合に用いる手術法。
広背筋を使う場合、広背筋に皮膚と脂肪を乗せて肩のほうまで持ち上げ、腋窩から皮下のトンネルを通して乳房へ移動させて再建する。日常生活に支障をきたすこともなく、水泳、テニス、ゴルフなど運動も可能。また、妊娠や出産を希望する患者にも適している。
健康な側の乳房が大きい場合や、術後の鎖骨から腋の下の変形が大きい場合、かつては腹直筋を用いていたが、現在は腋窩のリンパを切除することはほとんどないので、腹直筋皮弁は使っていない。
一般には広背筋皮弁とシリコンインプラントを同時に用いなければ足りないとされているが、特に酒井医師が開発した広背筋皮弁に脂肪をたくさん付けて採取する拡大広背筋皮弁を用いると、ほとんどの症例にはシリコンインプラントを同時に用いずに、シリコンインプラントの欠点を除外しつつ形態のいい乳房を再建できている。
なお乳頭・乳輪の再建は、乳房再建後1年ほど経って再建乳房が落ち着いた段階で行う。健側から乳頭を採取しても、健側の授乳機能を温存できる方法を酒井医師が開発し、ジュネーブにおける国際美容外科学会で発表し好評を得た。
乳頭・乳輪の再建でも、健側とそっくりの乳頭・乳輪を再建している(図参照)。
乳がん後,再建
陥没乳頭については、婦人雑誌などで「手術しても60%ぐらいしか治らない」と書かれていることも多く、実際他院で手術を受け2ヵ月後に再陥没した患者がよく来院する。酒井医師の手術では「酒井法」を用い、ほとんどの症例の陥没は修正されている(図参照)
陥没乳頭

診療を受けるには

酒井医師の担当は月、木曜の午前9:00~11:30(予約患者のみ)。予約の際は月曜・水曜・金曜の17:00~18:00に直接酒井医師に電話すること

累積症例数または患者数

自家組織による乳房再建術は、これまでに約1,000例。

年間症例数

形成外科での手術数は2011年度で179例。うち乳房再建術(自家組織・シリコン含む)については67例。

医師のプロフィール

経歴
1970年 新潟大学医学部 卒業
1976年 ニューヨーク大学形成外科臨床医留学
1977年 バージニア大学形成外科臨床医留学
1979年 聖マリアンナ医科大学形成外科講師
1983年 聖マリアンナ医科大学 助教授
1998年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院形成外科部長兼任
2006年 国際医療福祉大学附属三田病院形成外科教授
所属学会・認定・資格

日本美容外科学会理事・専門医、日本形成外科学会評議員・専門医、国際美容外科学会、東洋美容外科学会、国際形成外科学会、日本乳癌学会、日本臨床外科学会、日本頭蓋顎眼面外科学会、日本眼科学会、日本外科系連合学会

予防に心がけたいこと

乳房再建のためには、太ってはいけない。
乳房再建には脂肪組織が必要と考え「太らないと」と思っている患者がいるが、太った脂肪は再建後に溶けて変形するので、絶対に太ってはならない。痩せている患者はそれなりに乳房も小さく、拡大広背筋皮弁で十分に再建できる。
拡大広背筋皮弁で再建を希望する患者は、背中の筋肉が発達しているほど血行が良く、再建後脂肪が溶けるなどの合併症が少ない。背中の筋を強くするためには鉄棒で懸垂するなどが効果的だが、ペットボトルに水を入れて上げ下げ運動をするだけもかなり効果がある。

費用のめやす

乳房再建術にかかる費用は、再建方法や再建するタイミングによって異なる。広背筋皮弁や腹直筋皮弁など自家組織を用いる場合は、どのタイミングで再建を行っても健康保険が利用可能。
ティッシュ・エクスパンダーを利用して皮膚組織を伸ばす場合は、乳房切除術から一連の治療として行う場合のみ健康保険の対象となるが、その後の人工乳房の挿入は美容的な豊胸術とみなされるため、健康保険は使えない。この場合、片側で50~100万円ぐらいかかる。