ドクターズガイド

若倉雅登 医師 (わかくらまさと)

若倉雅登 (わかくらまさと) 医師

医療法人社団済安堂 井上眼科病院(東京都)21病院のクチコミ
名誉院長 神経眼科、心療眼科

専門

視神経や眼位、眼球運動の異常(視神経炎、レーベル病、甲状腺眼症など)、眼瞼けいれんや抑うつによる眼の異常、化学物質過敏症、片側顔面痙攣

医師の紹介

若倉雅登医師は、視覚情報を伝達する眼と脳の協力関係が壊れて起こる病気を扱う「神経眼科」の第一人者。特に眼瞼けいれん治療におけるスペシャリストであり、日本神経眼科学会の診療ガイドライン編纂にも加わる。「眼は身体と心のバロメーター」として患者の精神面に着目した診療を心がけ、日本ではまだ珍しい心療眼科の創設にも携わってきた。自著やマスメディアを通じて見落としがちな目の病気について解説する機会も多く、全国からセカンドオピニオンを求める患者が来院する。化学物質過敏症にも詳しい。

診療内容

40歳以上の女性に多い眼瞼けいれん。軽症のうちはドライアイや眼精疲労と誤診されやすく、診断がついた時にはすでに進行していることも少なくない。進行すると歩行中や運転中に不意の閉眼から事故を起こす恐れがあり、重症になると自力で開瞼できなくなるため早期の診断・治療が求められる。現在のところ詳しい原因は不明だが、眼輪筋(眼の周辺の筋肉)をコントロールする脳のスイッチ相当部分に何らかの不調が生じたために起こると言われる。「目から入った視覚情報は脳で認識され、眼と脳の協力関係のもとに物が見える訳ですが、その関係が壊れた状態を扱うのが神経眼科です。片側顔面けいれんのように、機械的に神経が圧迫されて起こる病気とは性質が異なるものです」と若倉医師は語る。
眼がショボショボして普通の電灯やテレビの光さえまぶしい、目薬を続けても効果がない、眼科、さらには精神科など病院を転々としても原因不明とされてしまう…若倉医師のもとにはこうした眼の悩みをもつ患者がセカンドオピニオンを求めて訪れる。中には、若倉医師の診察で初めて「眼瞼けいれん」と明確に診断された患者も多い。
若倉医師は神経眼科のスペシャリストとして、眼瞼けいれんの診断についてこう語る。「多くの医師は“けいれん=目の周辺がピクピクするもの”と誤解し、けいれんがあるかどうかで診断します。しかし軽症では外見上で判別しにくく、重症になってからけいれんが見られることが多いのです。不定愁訴で眼科を受診する人のうち、かなりの人が眼瞼けいれんを患っているのではないかと思います」。若倉医師によれば、眼瞼けいれんの診察は、白内障・緑内障などに比べるとかなり時間かかり、まずは患者の症状を「きく」ことが診療の大事なファクターであるという。
現状では眼瞼けいれんにおいて根治療法はないとされ、対症療法として「遮光メガネ」「クラッチメガネ」といった医療用レンスが用いられる。さらなる対症療法として、ボツリヌス製剤を注射して眼輪筋を弛緩させる方法が一般的である。ボツリヌス治療では注射の後3~4日で効果が表れはじめ、持続期間は約3か月である(対症療法であるため繰り返しの治療が必要)。笑顔が不自然になるといった一時的な副作用が見られることもあるが、治療を受けた患者のうち約7割は満足しているという。
ボツリヌス治療について若倉医師はこう語る。「私は眼瞼けいれんの治療にあたり、ボツリヌス治療が第一選択と考えています。ドライアイと誤診されるような軽症のケースにこそ効果的で、治癒へつながる場合もあるからです。しかし、実際には重症例に対してボツリヌス治療を適応するべき、という医師も多く見られます」。若倉医師によると、ボツリヌス治療の効果を高め、より長く持続させるためには薬物治療や手術治療も有益であるが、抗不安薬投与は避けるべきだという。「抗不安薬により眼瞼けいれんが誘発されたとする例があるからです。現代の日本では抗不安薬や睡眠導入剤を服用する人が増えており、これが眼瞼けいれんの発症原因となっている可能性も否めません」
また、若倉医師は地下鉄サリン事件被害者の検診を担当した実績を持つなど「化学物質過敏症」にも詳しい「サリンもそうですが、新築住宅でよく起こるシックハウス症候群のように、化学物質が影響する病気では、眼は症状が出現しやすい部位です。眼が非常に疲れた感じがして開けていられない、動く物を見ていられないなど、脳と眼の協力関係が壊れることで様々な症状が出てくるのです」
さらに、眼疾患治療のエキスパートであるだけでなく、神経・心身の全体的な状態からアプローチする「心療眼科医」としても広く知られている。患者の精神面も包括的に扱う「心療科」と「眼科」が融合した医療に対し、原因不明の不定愁訴に悩む多くの患者が信頼を寄せている。同院での心療内科の創設の経緯を若倉医師は次のように語る。「身体的・器質的な問題はなくても、ちょっとした目の違和感があるだけで日常生活に支障をきたす患者が多く見られます。実際にストレスなどの精神的問題が目に出ることがあり、メンタル面に考慮した対応で改善するケースもあります。眼は身体と心のバロメーターであり“健康は眼に聞け”と言うくらい、眼を見ればその人の体調や心理状態がわかります。病院は身体の異常だけ診る所ではなく、患者の精神的な部分も支援すべきとして開設したのが心療眼科なのです」
若倉医師によると、内科には心療内科があるが、どの科にも必要であるにもかかわらず、まだ“心療”と銘打った科は少ない。どの病院も臓器別に科が分かれ、眼は眼、肺は肺…とそれぞれ違う医師が診療している。「症状が多岐に渡る場合に対応できる医師は少ないものの、実はそういう病気が非常に多い。それがカバーされていないのが日本の医療の現実です。いや、日本だけでなく世界においても同じことが言えるでしょう。診断基準や治療法が確立してないから私の科では診療できないというのは、患者にとっては困ることです。ですから“まず受け入れて、一緒に悩んでいく”というのが私の考え方です」
ただし現在は心療眼科は全国でも珍しいため、遠方からわざわざ訪れる患者も少なくない。今後、若倉医師による指導の下、心療眼科の専門知識を備えた眼科医が育ち、同院に限らず日本の至る地域で心療眼科の体制が整うことが期待される。

診療を受けるには

名誉院長特別外来(神経眼科・心療眼科、眼科難病疾患)は月曜~水曜。完全予約制で約2か月待つ場合が多い。紹介状があれば尚可。情報や画像等の資料は初診前送付が望ましい。

累積症例数または患者数

ボトックス治療を行っている疾患と症例数…眼瞼けいれんは約8,000例、片側顔面けいれんは約2,500例(井上眼科病院として)

医師のプロフィール

経歴
1976年3月 北里大医学部 卒業
1980年3月 北里大学大学院医学研究科 博士課程修了
1982年 北里大眼科専任講師
1986年 グラスゴー大学シニア研究員
1988年 北里大眼科 専任講師
1991年 北里大医学部 助教授
1999年 医療法人社団済安堂井上眼科病院 副院長
2002年 医療法人社団済安堂井上眼科病院 院長
2012年4月 医療法人社団済安堂井上眼科病院 名誉院長、北里大学客員教授
所属学会・認定・資格

眼科専門医・指導医、医学博士。日本神経眼科学会理事長、日本眼科学会評議員、Neuro-ophthalmology誌advisory panel。
2006年には増上寺にて国際神経眼科学会を開催。他に、心療眼科研究会共同代表世話人、メンタルケア協会評議員、NPO法人目と心の健康相談室副理事長、日本神経眼科学会相談医、眼瞼・顔面けいれん友の会顧問

主な著書(編集・共著含む)

『医者で苦労する人、しない人: 心療眼科医が本音で伝える患者学』(2015年 春秋社)amazonでみる⇒ 
『絶望からはじまる患者力-視覚障害を超えて』(2013年 春秋社)amazonでみる⇒ 
『一歩手前の「老い入門」: 眼と心身の健康道場』(2012年春秋社)amazonでみる⇒
小説『高津川―日本初の女性眼科医 右田アサ』(2012年 青志社)amazonでみる⇒
『実践! 心療眼科』(2011年 銀海舎/編著)amazonでみる⇒
『健康は眼に聞け』(2011年 春秋社)amazonでみる⇒
『目の異常、そのとき』(2010年 人間と歴史社)amazonでみる⇒
『これで解決! 眼のトラブル相談室』(2010年 共同通信社/共著)amazonでみる⇒
『三流になった日本の医療』(2009年PHP研究所)amazonでみる⇒
『目がしょぼしょぼしたら-眼瞼けいれん?』(2008年メディカルパブリケーションズ/共著)amazonでみる⇒
『目力の秘密』(2008年 人間と歴史社)amazonでみる⇒
『神経眼科をやさしく理解するための視覚と眼球運動のすべて』(2007年メジカルビュー社/共著)amazonでみる⇒ 
『目は快適でなくてはいけない』(2005年 人間と歴史社)amazonでみる⇒
『中途視覚障害者のストレスと心理臨床』(2003年 銀海舎/共著)amazonでみる⇒
『イラスト眼科手術シリーズ』(金原出版/監修)amazonでみる⇒
『視覚情報処理』(メジカルビュー社/編著)
『神経眼科外来』(1999年メジカルビュー社/編著)
『アトラス視神経乳頭のみかた・考え方』(1996年 医学書院/共著)amazonでみる⇒
『解決!目と視覚の不定愁訴・不明愁訴』(金原出版/編著)amazonでみる⇒

予防に心がけたいこと

眼瞼けいれんの症状は、まぶしい、眼を開けたいのに開けられない、眼が乾くといった眼そのものの症状から、さらに抑うつ、不安まで多岐に渡る。気になったら早いうちに「神経眼科」を掲げる病医院を訪ねること。ボツリヌス治療の副作用として起こりうるものは眼周囲筋の麻痺感、笑いにくい、眼瞼下垂などである。2~3週間ほどで改善するが、初回投与時に出やすいので注意したい。

費用のめやす

若倉医師による名誉院長特別外来の予約料は1回の来院につき4,000円 が会計時加算される。初診は2~4ヶ月待ちが通常なので、緊急の場合はまずお茶ノ水・井上眼科クリニックに予約して下さい。

発信メディア(ホームページ、ブログ、Twitter、facebook等)

読売新聞ウェブサイト「ヨミドクター」コラム「心療眼科医・若倉雅登のひとりごと」連載中:

NPO法人目と心の健康相談室:metokokoro@jimdo.com
参天製薬メディカルシリーズ「眼科専門医に聞く」: 
眼瞼・顔面けいれん友の会: 
眼瞼痙攣・片側顔面痙攣スペシャリストインタビュー: 
若倉雅登著作一覧/春秋社: 
中高年から気をつけたい目の健康 マイナビニュース: