ドクターズガイド

百枝幹雄 医師 (ももえだみきお)

百枝幹雄 (ももえだみきお) 医師

聖路加国際病院(東京都)65病院のクチコミ
副院長 女性総合診療部
部長

専門

生殖内分泌学(子宮内膜症、子宮筋腫、不妊)、内視鏡手術

医師の紹介

子宮内膜症治療の新薬の臨床試験に関わり、世界に先駆け日本での使用を可能にした立役者のひとり。一方で、内視鏡手術の名手としても知られ、聖路加病院が2011年に導入した手術支援ロボット・ダヴィンチを用いた手術でも中心的役割を担う。月経困難症や子宮内膜症の疫学研究班委員として活躍し、さらなる治療薬開発にも努めるほか、12年に子宮内膜症啓発会議を設立し実行委員長に。女性だけでなくサポートする立場の男性に向けても情報を発信し、女性が産婦人科に行きやすい環境づくりを目指す。

診療内容

最初に、子宮内膜症の治療方法について紹介してゆく。
まずは問診において月経痛、月経以外の腹痛・腰痛など自覚症状の内容・症状が出始めた時期などを確認。さらに、妊娠の希望・不妊期間・将来的な妊娠の予定など治療法の選択に関する情報も確認。続いて内診、超音波検査などの画像診断を総合して臨床診断を行う。
比較的大きな卵巣チョコレートのう胞(5cm以上が目安)が見つかった場合は、破裂や感染のリスクを避けるために早めの手術を薦める。それ以外では、妊娠希望時期などによって治療法の優先順位を決めてゆく。
「妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がない」あるいは「妊娠の希望はないが手術は避けたい」という場合には、薬物療法を考慮する。薬物療法には「対症療法」と「ホルモン療法」がある。
対症療法として処方される鎮痛剤は、痛みの原因となるプロスタグランディンの分泌を抑える薬である。ちなみに、痛みを限界まで我慢している患者が多いが、痛みがピークに達してからよりも、痛みがひどくなる前(月経開始前)からの服用のほうが効果は高いため、結果的に薬の使用を最小限に抑えることができる。対症療法で十分な効果が得られない場合、あるいは明らかな子宮内膜症病巣が存在する場合には、ホルモン療法を行う。
ホルモン療法には大まかに「偽妊娠療法」と「偽閉経療法」の2つがある。
「偽妊娠療法」は、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬あるいはプロゲスチン製剤を用いて、黄体ホルモン(プロゲステロン)による子宮内膜症の抑制を図る治療法。「偽閉経療法」は、GnRHアナログ製剤によって人工的に閉経状態をつくり、卵胞ホルモン(エストロゲン)を減らすことによって子宮内膜症の抑制を図る治療法である。
「偽妊娠療法」では、まずはホルモン量も副作用も少ない低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆるピル)を使用。排卵と子宮内膜の増殖を抑えるため、月経量が減って月経痛が軽減される。また、ピルはもともと避妊薬であるため、女性の症状コントロールに適している。プロゲスチン製剤は選択肢が広がっており、子宮内膜症病変に直接働きかける作用のある製剤も。服用中に不正出血が起こりがちではあるが、疼痛改善や病巣萎縮効果についてはピルよりも強力である。
「偽閉経療法」に用いるGnRHアゴニストは通常6ヶ月間続けて使用するが、人工的に閉経状態をつくるために、更年期様症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗、頭痛など)の副作用がある。有効性は高いが長期間連続して使えないため、偽妊娠療法では効果が不十な場合や、手術前や閉経前などに用いることが多い。
「希望しているのになかなか妊娠せず、不妊検査でも原因がほかに見つからない」という場合は「腹腔鏡手術」を勧める。「腹腔鏡手術」とは全身麻酔し、お腹に腹腔鏡と手術器具を挿入する穴を開け、お腹の中をモニター画面に映し出しながら行う手術のこと。お腹を大きく切開する開腹手術に比べて傷も小さく、術後の癒着も少ない。入院期間も数日~1週間ほどであるなど、患者にとっては負担の少ない方法である。さらに、同院では2011年11月より、手術支援ロボット 『da Vinci』を導入。腹腔鏡手術の更なる可能性を追求している。なお、子宮内膜症は再発を繰り返す病気であるため、手術後は再発する前になるべく早く妊娠できるよう、計画的に治療を行う。腹腔内の癒着がひどく、手術をしても自然妊娠の可能性が低い場合や、比較的年齢が高い(38歳以上)場合には、早期に体外受精・胚移植も考慮することが後手に回らぬポイントである。
以上の治療で症状が改善せず、かつ「妊娠を希望しない」という場合は、両側の卵巣を摘出する根治手術を行うこともある。これにより女性ホルモンが分泌されないので、原因となっている子宮内膜症の組織も自然に萎縮し、やがて消失する。
続いて、子宮筋腫の治療方法について紹介してゆく。
子宮筋腫については、過多月経や貧血などの月経関連症状、不妊症や不育症など妊娠関連症状、頻尿・便秘・腰痛など圧迫症状の3症状があれば治療となるが、特につらい症状がなく、筋腫がまだ小さい場合には治療をせずに様子を見る(経過観察)。
軽い症状の場合は、「薬物療法」を採用。薬物療法には、鎮痛薬や造血薬などを利用する「対症療法」とエストロゲンの分泌を抑える「ホルモン療法」がある。重い症状の場合に行う「手術療法」には、筋腫のみを取り除く「子宮筋腫核出術」と、筋腫を子宮ごと取り除く「子宮全摘出術」がある。子宮筋腫の大きさや周囲の癒着の状況にもよるが、最近は大部分の手術を腹腔鏡や子宮鏡を用いた内視鏡下手術で実施している。ほか、放射線科と協力した子宮動脈塞栓術も実施している。なお、薬物療法や子宮筋腫核出術では再発の可能性も残るものの、妊娠することは可能。治療方法は、患者の年齢・症状の程度・出産の希望・病巣の範囲などに合わせて選んでゆく。

診療を受けるには

紹介状を用意のうえ事前予約が必要。予約受付時間は平日8:30~17:00、土曜・日曜祝休診。
百枝医師の担当は、月曜・水曜。

累積症例数または患者数

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症については10,000人以上の治療実績。

年間症例数

2013年は、年間手術例数 1,354例で、そのうち内視鏡下手術は435例。
子宮内膜症に対しては、腹腔鏡下卵巣嚢胞摘出術119例、腹腔鏡下付属器切除術83例。
子宮筋腫に対しては、腹式子宮全摘出術が80例、腹式子宮筋腫核出術が74例、腹腔鏡下子宮筋腫核出術が70例、腹腔鏡下子宮全摘出術が89例、子宮鏡下子宮筋腫摘出術が48例。

医師のプロフィール

経歴
1984年 東京大学医学部 卒業
1984年 東京大学医学部産婦人科
1985年 東京都立築地産院
1986年 焼津市立総合病院
1988年 長野赤十字病院
1992年 米国国立衛生研究所(NIH)
1995年 東京大学医学部産婦人科助手
2004年 東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講師
2006年 東京大学医学部附属病院女性診療科・産科外来担当副科長
2010年 聖路加国際病院女性総合診療部部長
2012年 聖路加国際病院副院長
所属学会・認定・資格

医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本産科婦人科学会代議員、日本生殖医学会代議員、日本産科婦人科内視鏡学会評議員、日本エンドメトリオーシス学会代表幹事

予防に心がけたいこと

普段の生活では、1.ストレスをためない、2.身体を冷やさない、3.バランスの良い食事を摂る、4.リラックスする時間をもつ、5.自分の身体のリズムを知り、生理痛のひどい時期の前に鎮痛薬を飲む、イライラ時にはアロマやストレッチでリラックスする、などを心掛けること。なお、子宮内膜症の自覚症状で最も頻度の高いものが、つらい月経痛である。月経の回数を重ねるごとに痛みが強くなっていくのが特徴で、月経のたびに寝込んでしまう人も少なくない。 病気の進行にともない腰痛や下腹痛・性交痛・排便痛などの訴えも多くみられるほか、遺伝性があるとも言われている。「以前に比べて月経が辛くなった」「お母さんや姉妹が子宮内膜症を患ったことがある」という場合は、なるべく早く婦人科を受診したほうが良い。早期発見は、病気の進行を抑え、症状の軽減につながる。

費用のめやす

手術の場合、保険診療3割負担で、子宮筋腫は20万円前後、子宮内膜症は16万円前後。
なお、当院は全室個室(3万円/日)であるため、子宮筋腫は21万円、子宮内膜症は15万円の部屋代が別途必要となる。