ドクターズガイド

病気の解説

顎変形症

病気・症状

顎骨の異常によって顔貌の変形、咬合の異常をきたす疾患が「顎変形症」。先天性と後天性、発育異常によって生じる場合の3種類があるが、最も多いのは発育以上による変形。中世ヨーロッパのハプスブルグ家の「下顎前突症」はその典型例として知られている。上顎あるいは下顎が前に伸び過ぎていたり、逆に顎が小さいなどで上下の歯の噛み合わせが大きくずれてしまっていたり、あるいは顔が非対称で左右に歪んでいるような場合、顎変形症が疑われる。うまく噛めない、言葉がわかりづらいなどの障害が伴うほか、「受け口」「出っ歯」などと言われ、容貌にコンプレックスを抱え、悩んでいるケースも少なくない。しかし、外科手術と矯正歯科治療を併用した治療によって改善できること、しかも保険診療で行えることはあまり知られていない。

検査・治療

通常の不正咬合と比べて顎のズレが大きいため、外科的手術と矯正歯科治療を併用した治療が必要となる。治療はまず、術前矯正から。短い場合で半年、長い場合で1年半を要する。その後の外科的手術では、上顎骨、下顎骨といった骨全体を手術で前後、上下、左右に移動したり(通称、骨切り術)、歯を含む骨の一部だけを切って動かし、噛み合わせと容貌を整える。手術は全身麻酔下で行い、移動させた骨はからだに為害作用のない材料でできたネジやプレートで固定する。入院日数は2週間弱。退院後はさらに、最終的な噛みあわせを調整するための術後矯正を行う。手術後あごの骨の強度が十分に回復する期間などを見込みながら治療するため、最低でも1年、通常1年半?2年前後の期間が必要。健康保険と高額医療費制度が適用されるため、自己負担額は年間10万円を下回る。また基本的に、すべての操作を口腔内で行うため、顔の外にずっとあとまで残る手術瘢を作ることはない。

ドクター・病院選びのポイント

受診は矯正歯科もしくは口腔外科へ。健康保険が適用されるのは、「顎口腔機能診断施設」のみ。ホームページ等で、確認してから受診すること。テレビ番組等で、美容外科による噛みあわせの治療を無視した「美容整形」が紹介されているが、外見は整っても、噛みあわせの乱れは悪化する上に、健康保険が適用されないため、高額な治療費がかかる。顎変形症は歯科で、保険適用で治療可能な疾患であることを、覚えておきたい。


監修

覚道健治医師: 大阪歯科大学附属病院 病院長