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変形性膝関節症 安易な手術は避け、運動療法での改善が大事

※この記事は2013年6月にインタビューし掲載したものです。最新の情報はこちら⇒(医師情報)

-軟骨のすり減りだけでなく膝関節全体に関係する疾患

最初は立ち上がりや歩きはじめなど、動作の開始時に膝にズキっと来る痛み。 「あ、痛たたた」とは思っても、動いているうちに気にならない、あるいはちょっと休めば痛みはとれていたのが、徐々に正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になる膝の病気が「変形性膝関節症」。男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなる。主な症状は膝の痛みと水がたまること。

「膝関節の種々の老化により、膝の関節に炎症が起きて水がたまり、軟骨が摩耗し、関節が変形したり痛みが生じる病気です。 主として軟骨のダメージが原因と言われていますが、実際は、軟骨のほかにも、関節は硬くなり、半月板も減り、靭帯ももろくなり、周囲の筋肉は弱ってくる…というように膝関節全体に関係しています」
そう教えてくれたのは、膝関節の名医として知られる東京医科歯科大学の宗田大医師。

「肥満や素因(遺伝子)が関与し、骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することもあります。また軟骨が弱い人、筋肉や筋が硬く痛みに敏感な人は、若くても痛みが出やすいです」と注意を促す。高齢者に起こりやすい疾患ではあるが、若くても油断は禁物だ。

-保存療法がしっかりできれば手術なしで治せる

痛みを感じたら整形外科へ。診断は、問診、視診や触診で、主に膝内側の圧痛の有無、関節の動きの範囲、腫れやO脚変形などの有無を調べ、X線(レントゲン)検査、関節液検査等によって行う。レントゲンは、ひざを曲げて体重をかけた状態で撮影をすることが大切。必要によりMRI検査なども行う。

「レントゲン検査でもMRI検査でも、画像だけで話を聞かず診断しようとする医師はお勧めできません。触診もしっかり行って診断してくれる医師を選びましょう」と宗田医師はアドバイスする。

治療はまず、保存的治療として、薬物療法、運動療法、物理療法の3つを行う。薬物療法は痛み止めの内服薬や外用薬を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをする。運動療法は大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練など。膝にかかる負担を減らすための減量指導も大切だ。 物理療法は、膝を温めたりする。そのほか、足底板や膝装具を作成することもある。このような治療でも病気が進行し治らない場合は手術療法が検討される。手術療法には関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り術(骨を切って変形を矯正する)、人工膝関節置換術などがある。

「私の場合は、手術は最後の手段と考えています。まずは保存的な治療をしっかりと行うことが大事です。変形性膝関節症で継続して10年以上見た患者さんで手術に至った患者さんは1人しか記憶にありません。早い段階から保存的治療が出来れば、手術はほぼ避けられます」と宗田医師は力説する。整形外科ではあるが、手術はできるだけ避け、痛みのメカニズムを考慮した薬物療法、運動療法に力を入れているのだ。

「ストレッチなどの運動療法は、一番効果があって、一番安上がりだと思います」 そしていよいよ手術となった場合には、最も信頼しているのは人工関節置換術。 「手術の患者さんは、来院する段階で、既に手術するしかないほど悪くなった状態で見えられます。もっと早く来てくれれば手術しないで済んだのに、と残念に思いますよ」 宗田医師のもとには、他の病院で不必要な手術を受け、逆に悪化させてしまった患者も数多く訪れるという。

「個人的には保存治療がちゃんとできない医師ほど、安易に手術を勧めるのではないかと思っています。患者さんにとっては、切らずに済むなら切らないのが一番。私は保存的治療に自信を持っています」


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宗田大先生(医師情報)

東京医科歯科大学医学部 大学院 運動器外科学分野 教授。1979年東京医科歯科大学医学部卒業。1990年米国ミネソタ大学整形外科学教室留学(リサーチフェロー)、1993年東京医科歯科大学整形外科講師、2000年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動機能再建学教授、2004年運動機能再建学より運動器外科学に分野名を変更、現在に至る。スポーツ医学における膝関節の第一人者として、多くのプロスポーツ選手の治療も行っている。