ドクターズガイド

睡眠障害 秋は治しやすい季節

「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「2、3時間で目が覚めてその後寝られない」「充分寝ているはずなのに、昼間も眠くなる」。睡眠に関する悩みは千差万別ですが、睡眠が原因で日中の活動や体調に悪影響がでるのであれば、これは「睡眠障害」という病気です。

本格的な冬に入る前のシーズンは、快適な睡眠の習慣をつけるのに都合のよい季節です。睡眠に問題を感じていたら、この季節に改善してしまいましょう。

■人間の睡眠

生き物はなぜ眠るのか、すべては解明されてはいませんが、基本的には覚醒中の活動による肉体の傷や疲労を修復し、脳内では情報を整理するためと言われています。これらの作業に集中するために、外部からの刺激を最小にした状態を持つわけです。

睡眠によるリセットが行われないまま活動を続けていると、回し続けたエンジンがいつか壊れるように、体もその機能を損ねる事態を招きます。生命活動を維持するためには睡眠は必須なのです。

生き物によって睡眠の取り方は違います。例えば、いつでも捕食者から逃げる必要のある動物は一日に何度も浅く短い睡眠を、強力な捕食者は日に一度まとまった時間熟睡したり、という具合です。人間は、事実上捕食される心配のない最強の動物ですから、「まとまった時間熟睡」タイプということになります。健康を保つためには、毎日ある程度の時間、体を修復作業に集中させなければならないのです。

■人間の基本的な睡眠スタイル

睡眠を促すサイクルは、脳が支配しています。脳は目から入ってくる光の量を判断し、暗くなると脳内の松果体からメラトニンという物質を分泌し、これが体温や血圧をさげて体を休止モードへ導いて睡眠へ促す働きします。メラトニンが分泌されるタイミングには制約があり、眼が太陽光かそれに匹敵する光量を感じた後14~16時間は分泌されません。このことから朝太陽光を浴びて覚醒し、暗くなると眠ろうとするというサイクルで生命活動を維持しているのがわかります。正常な状態なら、暗くなる前に眠くなるということはないはずなのです。

■適切な睡眠時間

24時間のうち14~16時間は眠ろうとしないとすると、残りは8時間~10時間、そのうちの1時間は次のモードへの移行時間と考えると、純粋に睡眠にあてる時間は6時間~9時間ということになります。この長さは、最近アメリカでの研究でも確かめられており、6時間未満の睡眠を続けている人は心臓疾患、脳卒中、糖尿病、肥満、精神的ストレスのリスクが増加、また10時間以上の人は同じリスクで、脳卒中と糖尿についてはさらに高くなるという結果が出ています。

睡眠時間は、不足しても長すぎてもよくない、ということです。

■睡眠の質

しかしただ適切な長さの睡眠をとれれば問題はなにもない、ということでもありません。脳と体のリセットにはそれぞれ「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という違う種類の睡眠を必要とします。

レム睡眠(Rapid eye movement sleep)
体は眠っているけれど脳が活動している状態。体は弛緩した状態でほとんど動かずしっかりと休んでいるが、眼球は閉じた瞼の下で活発に動いている。脳は覚醒時とほぼ同じ状態で、日中に得た情報を整理、またこのときに夢を見ていると言われる。
ノンレム睡眠(Non-rapid eye movement sleep)
眼球の運動を伴わない睡眠。脳の活動が穏やかになり、いわゆる「深い眠り」で脳を休めていると考えられている。瞳孔も開いた状態で、このときに無理やり起こされるとまぶしくて目を開けてていられないという。
眠りに入るとまずはもっとも深い「ノンレム睡眠」に向かう。いびき、歯ぎしり、寝返りは移行時の比較的浅いノンレム睡眠時に見られる。

ほとんどの人は、このふたつの眠りを交互に1セット約90分で繰り返しています。90分ごとに眠りに入る直前にもっとも近い状態に戻るので、すっきり目覚めるために、意外と多くの人が1時間半、3時間、4時間半、6時間、7時間半すぎたタイミングに目覚ましをかける、という工夫を実行しています。

■睡眠障害とは

なんらかの原因で「必要な睡眠」が十分に得られず、とれない疲労や日中の眠気で日常生活に支障をきたしてしまう状態なら、それは「睡眠障害」です。症状には種類があって対処法も異なりますので、睡眠に関する問題を感じたら、まずは自分がどのタイプかを把握する必要があります。種類によっては、外科的な治療が必要な場合もあります。

生活習慣の修正で対処

入眠障害
【症状】寝付きが悪く、なかなか眠れない。
【原因】最も多いのが心配事などの精神的なストレス。
中途覚醒
【症状】夜中に何度も目が覚める。ちょっとした刺激ですぐ目がさめてしまう。眠りが浅い。寝付いて3時間くらいで目がさめてしまう。
【原因】日中の精神的緊張がとれていない。
早朝覚醒
【症状】朝早く目覚めてしまい、その後眠れなくなる。30代半ばから睡眠の老化として現れることがある。
【原因】睡眠自体の老化。うつ病の初期症状。
その他
むずむず脚症候群、リズム障害、熟眠障害

薬物治療、医療用器具、手術で対処

睡眠時無呼吸症候群
【症状】睡眠時にいびきがあり、その途中で10秒以上呼吸が止まる状態が1時間に5回以上ある。結果的に十分な睡眠がとれていないことになり、日中に眠気があったり集中力の低下がみられる。
【原因】肥満、鼻腔やのどの形状などが原因で、睡眠中脱力した際に気道がふさがってしまう。
過眠症(ナルコレプシー)
【症状】日中に突然強い眠気に襲われて眠りこんだり、緊張した会話や試験中などにも眠くなってしまう。笑う、怒るといった興奮状態になると突然体の力が抜けてしまう(情動脱力発作)。
【原因】特定はされていないが、遺伝体質と環境や経験(大きな怪我など)によるストレスが複合的に作用して発症すると言われている。
その他
いびき、食いしばり

■冬の前に睡眠障害を改善する

真冬になる前の今の季節は、気温や湿度の点で比較的快適に眠れるので体も自然と深い睡眠をとるようになり、睡眠の問題を改善するにはよい季節です。専門医のなかには、この時期に睡眠薬を少しずつ減らす指導をする医師もあるようです。

そして実際の睡眠の問題改善は、基本的に生活習慣や睡眠中の環境を工夫することから始めます。そのゴールとするところはシンプルで、本来休むべきときにきちんと休むこと。特に精神のうえでリラックスすることです。

・生活習慣を整える

同じ時間に起床する

秋は日の出が遅くなってり、くわえて眠りが深くなります。このため起床が遅くなりがちになりますが、それまでどおりの時間に起床して、光を浴びることで体のリズムをリセットしましょう。光を浴びてから14~16時間たたないと睡眠を促すメラトニンが分泌されないのだ、ということを念頭においておくことが大切です。

体温変化を利用する

睡眠に入る直前は体温が1℃ほど低下することが分かっています。また体温変化の度合いが急であるほうが、より深い眠りを得やすいと言われます。このことを利用して、自然と深い眠りに入るように、自分の体を誘導してしまいましょう。

○就寝前の体温を高めにする:
夕方に軽い散歩や運動をする。寝る前にぬるい湯にゆっくりつかる。鍋物など、温かい食事で就寝前の体温を高めにする。

脳をリラックスさせる

脳が活発に活動する状態のままでは、休息モードの自律神経である副交感神経を優位にすることができず、休息を指令するホルモンの分泌が促されません。パソコンやゲームの使用は、脳を活発に活動させますので、控えたほうがよいでしょう。
穏やかな内容の読書、静かなBGMはリラックスに有効です。

・睡眠中の環境を整える

枕を低くしてみる

枕が高すぎて眠れない人は多くいます。少しずつ下げてみて、快適な高さを探してみましょう。首が少しだけ反るような感覚がひとつのめやすと言われています。

布団を軽くする

心身ともにをリラックスするためには、締め付け感のあるものはできるだけ避けたほうがよいでしょう。特に、軽いコートが快適と感じる年代になったら、布団も軽くて暖かい、羽毛布団などが適しています。

ベッドの幅を十分にとる

理想は両手を拡げられる幅です。寝返りが自由にできることが望ましいとされています。最低でも90cm以上の幅がめやすでしょう。

適度な硬さのマットレス

お尻が落ち込まない程度の硬さのあるマットレスを選びましょう。あまり柔らかすぎると腰の負担などが増えて腰痛の原因となったりします。

寝間着は専用のものを着用する

普通の運動着などは、暑すぎたり、十分に体を緩められないことが多くあります。就寝時には、専用に作られたパジャマなどの着用が望ましいでしょう。

照明の注意

寝室の照明は50ルクス程度でも十分といわれます。最高でも150ルクス程度に抑えるとよいでしょう。

■薬物治療、医療用器具、手術で対処

睡眠時無呼吸症候群、過眠症(ナルコレプシー)といった症状は、自分では気づきにくかったり、日常に著しく悪影響を及ぼす可能性のある、重篤な症状です。これらの症状が思い当たる場合は、一刻も早く専門医を受診しましょう。最近では大変有効な薬物治療や就寝時に着用する補助器具、また鼻腔の形状によるといった場合は手術などの対処が可能です。これまでお話したよい睡眠を得る工夫はもちろん心がけたほうがよいですが、眠れない不安からうつ病に進行してしまうといったことを避けるためにも、ためらわずに医師に相談してください。

毎日厳しいストレスにさらされることの多いのが日本の社会人です。睡眠障害を直すチャンスであるこの時期、眠るときくらいは、最高に快適で心地よい環境を整えてもよいでしょう。不眠、うつ、生活習慣病を予防にさえなります。

(2013.10.11.)


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