ドクターズガイド

頭痛は、誰もが大なり小なり日常的に経験するものですが、実はさまざまな種類があります。まず、病気とは何ら関係のない頭痛。二日酔いの朝に出る頭痛や、かき氷やアイスクリームを食べた時にキーンと頭に響く痛み(通称アイスクリーム頭痛)などは病的なものではありません。今回は、病的な頭痛の中でも、多くの人が抱える慢性頭痛について取り上げてみました。

監修:慶應義塾大学 医学部 神経内科 教授  鈴木則宏医師 →

■おもな頭痛の種類

一次性頭痛

頭痛そのものが病気であるタイプで、慢性頭痛とも言われます(以下、慢性頭痛)。慢性頭痛は3000万人もの日本人、つまり4人に1人が抱えるポピュラーな病気で、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つがあげられます。せっかく受診して検査しても異常は見当たらず、痛み止めを処方されることがありますが、その対応で治らないため悩む人が多い頭痛です。次に紹介する二次性頭痛と異なり、命に別状はありません。

二次性頭痛

別の病気の症状の一つとして頭痛が起こるものを、二次性頭痛といいます。くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などのように、頭部の病気で頭痛が起こる場合は、見逃すと命取りになる恐れがあります。

日常的な例でいえば、熱が出た時にも頭痛がある他、耳鼻科で言えば蓄膿症、眼科なら緑内障、歯科・口腔外科なら顎関節症なども頭痛を伴うことがあります。

以下に、一次性頭痛、いわゆる慢性頭痛について取り上げていきます。

■片頭痛

【特徴】

日本人の片頭痛有病率は8.4%と報告されています。性別でみると、成人男性の3.6%、成人女性の12.9%が片頭痛を持つと考えられ、女性の有病率は男性の3.6倍と言われます。ドクンドクンと拍動するような激しい痛みが片頭痛の特徴で、長くても3日、72時間ほどでおさまります。仕事や試験の後、あるいは週末のような、ほっとリラックスするタイミングで出る傾向があります。

片頭痛は、”痛くなり始める前ぶれ”が起こる人もいます。片頭痛の有病率8.4%のうち、前兆のない片頭痛(5.8%)、前兆のある片頭痛(2.6%)に分けられます。前兆とは、突然チカチカとする光、ギザギザしたノコギリのような光が見え、 それが拡大した後に真っ暗になる、「閃輝暗点」と呼ばれる症状です。前兆がある人の場合、この閃輝暗点を経て間もなく、強烈な頭痛が始まります。


芥川龍之介は、頭痛持ちだったと言われています。小説『歯車』の中に、片頭痛の症状の一つ、閃輝暗点らしき描写があります。


僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?–と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だつた。僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまふ、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、–それはいつも同じことだつた。

芥川龍之介『歯車』より

このくだりは視覚的前兆、閃輝暗点の典型なのです。

【治療】

片頭痛治療の第一選択は「トリプタン製剤」です。使用するタイミングは「痛くなり始めた時」で、痛くなる前でも、激痛が始まった後でも、効き目が低くなってしまいます。

なお、片頭痛に対して予防的に用いる薬があります。いくつか種類があり、どの薬も程度が軽くなったり頭痛が起こる頻度が減ったりはしますが、ゼロになるほど絶対的な効果がある訳ではありません。その人の状況により選び方が異なります。たとえば若い女性は低血圧の人が多いため、血圧を下げる作用のあるβブロッカーは使えません。喘息や糖尿病の人にも不可です。カルシウム拮抗薬は比較的使いやすいのですが、あまりパワーがないのが難点です。抗てんかん薬(バルプロ酸)は副作用で太ることがある上、妊娠したらすぐストップする必要があります。三環系の抗うつ薬(トリプタノール)は口が渇く、尿量が減る、眠気がある等の副作用がある…このように、どれも一長一短です。使ってみて効果を医師と話し合い、日常生活への影響などをトータルに見るアプローチが必要です。

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