ドクターズガイド

胃潰瘍や胃炎の原因として、広く知られるようになった「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」。2014年に発表されたWHO(世界保健機構)の報告によると、全世界の胃がんの約8割がピロリ菌の感染が原因であるとされ、「ピロリ菌除菌」は世界的にも胃がん対策のキーワードとなっている。ピロリ菌は私たちの体にどのような影響を与えているのか。「ピロリ菌」の正体や除菌・感染予防についてまとめた。

日本では40代以上の50%がピロリ菌に感染しており、日本人に棲みついているピロリ菌はとりわけ毒性が強いという。さらに、最近の研究ではピロリ菌は消化器内だけでなく、血液を通して全身に運ばれ、体全体に影響を及ぼすこともわかってきた。

1984年にオーストラリアのマーシャル博士らがピロリ菌を発見するまでは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の主な原因はストレスによる消化器内の炎症と予想されるだけで、根本的な原因は不明だった。後にノーベル賞を受賞するマーシャル博士らの発見は、強い胃酸の中でピロリ菌と呼ばれる細菌が生息していることを裏付けるもので、世界に衝撃を与えた。

●そもそもピロリ菌っていったい何?どんな形?どこで発生?どのように感染?

ピロリ菌の長さは4ミクロン(1000分の4ミリ)、胃の粘液を栄養源にして通常は胃粘膜のひだの奥に潜り込み、胃酸を中和して、自分たちの生存可能な環境を作って生息している。ピロリ菌はヒトの体外に出ると球状になって休眠するため、ヒトが唯一の感染源であり、基本的には経口感染のみ。空気に浮遊して空気感染することはなく、糞便や飲み水からの感染が有力とされている。但し感染するのは学童期以前。大人になってから感染することはほとんどない。キスからの感染も否定されている。

ピロリ菌  ピロリ菌

画像提供:東海大学医学部 古賀泰裕 教授


ピロリ菌の感染者は世界中で約20億人。アジアやアフリカなどの発展途上国に多く、先進国には少ないということから、衛生環境が整っていない地域や環境が感染率を高めていると推測される。

日本人の推定感染者数は全人口の1/3である約4000万人と世界的にみても多い。その大多数が40歳以上。計算上は中高年が10人いたら5人は感染しているということだ。戦争前や戦争後の衛生環境が整備されていない劣悪な環境下で幼少期を迎えた人たちが、その時代に感染したものと考えられている。ということは日本に住んでいる以上、現在、学童期以上の人が新たに感染する可能性は極めて低い。

●ピロリ菌が胃がんを発生させるメカニズムとは

ピロリ菌はどのようにして胃粘膜を傷つけて炎症させ、その後、胃がんを発生させるのだろうか。慢性胃炎から胃がんを発生させるメカニズムについては二つあり、長期にわたる慢性胃炎で粘膜が萎縮し、胃がんが発生するという考え方とピロリ菌自体に発がん促進作用があるという考え方だ。

現時点で正確にわかっているわけではないが、いくつかの説があり、これらの要因が重なって発生すると考えられる。

●ピロリ菌による胃がんの発生要因

①アンモニアによる障害説

ピロリ菌が持っている酵素は、胃の中にある尿素からアンモニアを生成させる働きがある。アンモニアによって胃粘膜が傷つけられる。

②活性酸素説

ピロリ菌が粘膜細胞に付着し、免疫反応が起きる。活性酸素は白血球が細菌を殺すときには有用だが、大量に発生すると、細胞膜を傷つける。

③CagA説

ピロリ菌がCagAと呼ばれる菌体成分を胃粘膜細胞へ注入することで細胞をがん化させる。

どの説においてもピロリ菌に感染していることで、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんになるリスクが高くなるのは明らかだ。胃がんの発生を30~40%抑えることができるという。

2000年11月に「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」患者のピロリ菌除菌療法が保険適用になり、2013年2月には「慢性胃炎」でのピロリ菌除菌療法が保険適用に加えられた。除菌療法の受診者数は年々増えている。しかし、除菌成功率は少しずつ低下している。

■ピロリ菌除菌治療時に保険適用する疾患

2000年11月~ 胃潰瘍、十二指腸潰瘍

2010年 6月~ 胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、早期胃がんの内視鏡治療後の胃

2013年 2月~ 慢性胃炎(ヘリコバクター・感染胃炎)

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