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カビ -引き起こされる病気-

温度も湿度も高くなる季節。人にとっては不快に感じられる気候ですが、いわゆるカビと呼ばれる生き物にとって、天国のようなシーズンです。カビは数万種も存在するといわれ、その大多数は人には無害、もしくは有益な働きをするものですが、なかには、人間の体を攻撃、健康を害して重篤な病気を引き起こすものもいます。不安定な気候で体の抵抗力も弱りがちな季節。カビは私たちを狙っています。

正しい知識で、カビの被害から身を守りましょう。

■カビとは

ひとことで言うと、糸のような姿を持つ微生物で、分類としては「菌類」で、食品のきのこと親類です。菌類のほとんどは、適した環境におかれたときの増殖がすさまじく、誰でも一度は菌糸が増殖して綿のようになったカビを目にしたことがあるかと思います。

「細菌」との違い

「病気を起こす微生物」という点で細菌と混同されがちですが、菌類は細菌にはない「細胞核」があり、進化上は細菌よりあとに登場した少し複雑な生物と考えられています。細菌と区別する場合は菌類を「真菌」と呼びます。

活動する温度
カビが活動する温度は5℃~35℃。20℃~28℃の間でその活動はピークとなります。
湿度(水分)
温度に加えて、湿度が60%になると活動が活発化を始めます。80%になると、あっという間に増殖してしまいます。
栄養源
動物、植物など有機物全般のほか、ガラスやタイル、コンクリート、鉄、銅、岩なども養分として増殖します。接着剤などの化学物質が好物の種類さえ存在します。
酸素
酸素はほんの少しあれば生育できます。

菌類はほかのさまざまな有機物や物質を酵素で分解して養分としています。種類によって分泌する酵素が違い、この作用が発酵として役立ったり、人の細胞への攻撃として病気になったりするのです。

■体への害

カビ菌(真菌)はもともとそれほど強力な菌ではなく、病気の原因になることはまれでした。しかし現代人は、医学の発達によって、かなり弱った体であっても生き延びるようになりました。この抵抗力のない状態が、感染症を併発させる要因となっています。

カビ菌の異常繁殖

菌類は、私たちの体内にも常に存在しています。しかし通常は体内で正常菌叢と呼ばれるかたまりになってじっとして、特に害を及ぼしません。しかし例えば強い抗生物質を大量に投与したりすると一部が殺菌されてしまい、そこを埋めようと菌が異常繁殖を始めることがあります。この異常繁殖する菌は体に害を及ぼします。

この典型的なものが、一般的な感染症である「カンジダ症」です。多くの人がその菌を体内に保有していますが、抗生物質を長期にわたって服用したりすると、これによって殺菌されたぶんを埋めようと増殖が活発になって、症状が現れるのです。

抗生物質以外にも、なんらかの原因で抵抗力が非常に低下した場合、同じことが起きることがあります。

カビ菌が毒を作る

体内での異常な繁殖というだけでなく、カビ菌が毒を分泌して害を及ぼす場合もあります。
多くみられるのが、食品につくカビがつくりだす「マイコトキシン」という毒。マイコトキシンには発がん物質も含まれ、大変有害で危険です。

またカビの毒は、急激に死をもたらす種類のものではなく、たいていが慢性毒として蓄積された結果、病気を発症するものなので、その土地特有の風土病と考えられていたものもあります。

 

■害をもたらすカビ

カビ菌による害は、その作用によって下記のように大別されます。

【皮膚を侵すもの】
菌の種類 : 白癬菌
作用 : 水虫
発生しやすい場所 : 動物の皮膚
【内臓を侵すもの】
菌の種類 : アスペルギルス(白、黒、黄、緑色)
作用 : 気管支肺アスペルギルス症
発生しやすい場所 : 食品、カーペット、衣料品、エアコンダクト
菌の種類 : クリプトコッカス
作用 : 肺炎髄膜炎
発生しやすい場所 : ハトの糞便
菌の種類 : アフラトキシン
作用 : 発がん性物質を分泌
発生しやすい場所 : アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ。輸入ピーナッツで大きな被害がでたことがある。
【アレルギーを起こすもの】
菌の種類 : トリコスポロン
作用 : 夏型過敏性肺炎
発生しやすい場所 : エアコンの内部、浴室、トイレ、屋根裏
菌の種類 : アルテルナリア(スス状、湿度の高いところで、綿状)
作用 : 気管支喘息アレルギー性鼻炎
発生しやすい場所 : 水回り、押し入れ。高湿な壁面やカーペット、畳、皮革

皮膚やアレルギーを起こすカビは日常的にその作用もわかりやすいですが、体内で異常がおこる病気(内臓真菌症)を発症した場合、咳といった症状を風邪のようなつもりで軽くみてしまいがちです。しかし高齢者などはまれに死に至ることもあり、大変危険です。カビを避けるのはもちろんですが、咳が長く続くようなら、きちんと検査を受けましょう。

■予防

カビによる健康被害を防ぐには、カビを発生させないことがなによりですが、見えないレベルでのカビをまったくなくすことは事実上不可能です。また正常な健康状態であれば、きちんと免疫が働いて、健康を損なうまでに至ることは少ないでしょう。

しかし、特に梅雨時の不安定な気候で体調を崩したり、あまりに大量のカビにさらされては、やはり安心はできません。この時期に注意すべきことを踏まえて、生活環境のケアを心がけましょう。

室内の湿度は50%前後に⇒窓開け

雨降りが続くときなどはエアコンの除湿機能なども考えられますが、エアコン自体がカビの温床となって、室内にふき出してしまうということもあります。エアコン内の清掃もきちんと確認しましょう。
曇天くらいならば、できるかぎり窓をあけて換気を心がけると効果的です。

空気を停滞させない⇒扇風機

室内の空気をよどませないよう、扇風機をまわすのも大変有効です。部屋の隅から対角線上に向けると、まんべんなく風を送ることができます。
また、クローゼットも重要ポイント。クローゼットは湿気がこもりやすく、カビの栄養となる繊維がたくさんつまっているところです。年間を通して換気・除湿を心がけなければなりません。たまに扉をあけて扇風機の風を送るのもよいでしょう。また外出時は常に扉を開けておく、というのも効果的です。
浴室、洗面所などの水回りも同様です。

まめな掃除⇒はたきでひとふき

カビにとってほこりや汚れは、手軽に摂取できる最高の栄養源です。特に、目線より高いところや家具の裏など、普段目が行き届かないところは要注意。簡単でよいので、まめにはたきでひとふきしましょう。その際、なでるようにほこりをとるのがポイント。バタバタとはたき落しては、カビ菌を撒き散らしているようなものです。またはたき自体もまめに洗わなければ同じく逆効果になります。最近では使い捨てのはたきもいろいろと販売されていますので、はたきをきれいに維持できない、という方は、そういったものを使うのも手ですね。

 

(2013.7.10.)