ドクターズガイド

日常的な「痛み」
支配されず「管理」する(1)

体に感じる不調のなかでも、そうとうやっかいなのが「痛み」という感覚です。少なくとも人間は、あらゆる場合に、あらゆる原因で、あらゆる種類の痛みを経験すると言っていいでしょう。

怪我や特定の疾患などで強い痛みを感じる場合、苦痛は大きいですが、対処の仕方は比較的シンプルに判断できます。しかし、肩が痛い、膝が痛い、なんとなく頭痛がするといった、日常の端々で起きる「なんとかなる」ぐらいの痛みは、原因が特定できないことも多く、うっとおしい悩みとして持ち続けている方が多いのが現実です。

今回は、そういった「日常生活をちょっとだけ不便にする」痛みについて、仕組みを知り、対処を考えます。

■「痛み」は警告と学習のため

「痛い」という感覚は、本来は体の異常を脳に伝える「警告」です。ダメージを受けると、その場所の神経で情報が発生して脳に送られ、体の地図と照らしあわせて「ここに異常が起きている」ことを知覚します。そして脳はダメージに対処し、次に同じことが起こったら回避するために、この経験を学習します。痛みが強いほど、「これは大きな問題だから今後は絶対避けるべき」という認識になるわけです。

数時間から1日程度しか寿命の無い昆虫のなかには、経験を繰り返す可能性が低いので学習を必要とせず、痛覚を持たないものもいるといわれています。しかし多くのことを繰り返し経験する人間は、たくさんの避けるべきことを学習しなければなりません。「痛み」の感覚はそのために必要なものなのです。世界には、痛覚を持たなくなる難病がありますが、この病気の患者は骨折ややけどといった大きな怪我に気づかず、特に幼少時には何度でも命を危険にさらしてしまう可能性があるために、細心の注意を持って生活しなければなりません。

■原因不明の痛み

「痛み」の正体は脳に送られる警告信号、すなわち情報です。ところが、時に体がこの扱いを間違えて、実際にはダメージが起きていないのに「痛い」という情報だけを送ってしまうことがあり、これが「原因不明の痛み」になります。こういった、警告の役割を持たない「痛み」は、後に出てくる悪循環の始まりになりかねませんので、早いうちに解決すべき問題です。

■痛みの種類

「痛み」の原因は大きく3種類に分けて考えられます。

炎症性の痛み

切り傷、やけど、打撲、骨折といった外傷が含まれます。原因の刺激を受けることで交感神経が興奮し、血管収縮や筋肉が縮む攣縮、血流の不足などを起こします。血流の不足は酸素の不足をもたらし、痛みを起こす物質を発生させて痛みの信号を増幅させるメカニズムです。

神経性の痛み

神経の切断や圧迫など、神経への直接的な刺激によるものです。一般的なのは、ヘルニアのように体内で部分的な位置や大きさが変わり、周辺の神経を圧迫することで痛みを感じる症状です。

心理・社会的要因

心理的なストレスを感じたときに起こる通常の脳の反応が、痛み物質の発生につながることがあります。

■ストレスが起こす「痛み」

心理的ストレスがかかると、体に痛みを生じることがあります。これはいろいろと複雑な説もありますが、簡単にいえば、先の「炎症性の痛み」と同じ交感神経の興奮というしくみによるものと考えてよいでしょう。「イヤだ」「辛い」という感覚も交感神経を興奮させ、

部分的な血液不足→酸素不足→痛み物質の発生

という流れを起こす可能性があるのです。これが体のどの部分に起こるかは人によりますが、当然、日常的に負荷が大きい場所ほど可能性は高くなります。頭、目、腰、膝に痛みが出ることが多いというのも、順当な結果といえるでしょう。

また一般的に、ストレスがあると痛みにも敏感になる傾向が見られますが、すでに痛み物質を出す準備が万端の状態のところへ痛みを発生する刺激を与えられるわけなので、強い反応になるとも考えられます。

痛みの悪循環

痛みは、それを感じること自体がストレスとなります。最初の原因が外部的なものであっても、治療が長引いて痛みが続けば脳はそれをストレスと感じ、今度はストレスによって痛みを発生または増幅させ、それを感じることがまたストレスとなり…こうして痛みの悪循環に陥り、慢性的に痛みに苦しむということも珍しくはありません。

続きを読む →



慢性疼痛関連情報 ⇒

うつ病関連情報 ⇒

腰痛関連情報 ⇒

変形性膝関節症関連情報 ⇒

肩こり・肩の痛み関連情報 ⇒