ドクターズガイド

心筋梗塞・脳梗塞 9月からの水分補給

「寒いときに起こる」イメージのある「心筋梗塞」「脳梗塞」ですが、6月~8月がピークというデータがあるそうです。またこれとは別に8月末~9月がピークであるという説もあり、いずれにせよ暑い季節には血管が詰まりやすいということになります。今回は、中心的に語られてはいませんが、考えようによっては真夏よりも危険度の増す8月~9月の発症についてのお話です。

■突然命にかかわる「心筋梗塞」「脳梗塞」

心筋梗塞や脳梗塞の発作の仕組みは、比較的シンプルで物理的です。
心臓や脳周辺の重要な血管に血中に流れる何かが詰まって、そこから先の血液の供給が著しく減るか無くなることで臓器がダメージを受けるというもの。当然ですが固形の成分が詰まりやすく、血中には固形成分である白血球、血球、そして血管内壁の傷にできてはがれたかさぶたのようなものも流れます。こういったものが血管につまって発作を起こすわけで、詰まったときの対処は、薬で溶かすなり、バイパス手術なりカテーテルなり、なんらかの方法で詰まりを無くすという物理的処置になります。

■問題は血液の質感-「ヘマトクリット値」とは

問題は血液の液体としての状態です。白血球や赤血球は、固形成分とはいえ本来は液体に含まれて支障なく流れているものです。しかし液体は水分が少ないドロッとした状態では当然細い管には流れづらく、詰まりやすい。そして固形成分の割合が大きくなるほど、液体はドロドロとした質感になります。言い方を変えれば、血液中の固体である血球の数に対して、液体成分が少ないのが問題なのです。血液検査の結果のなかに目にする「ヘマトクリット値」とは、この血液中の固形成分の割合をパーセントで表したものです。

■体感の暑さが薄れること

結局ここでも、すでに聞きあきた「水分補給」の話になるわけです。
夏は汗で水分を排出してしまう⇒血がドロッとしてしまう⇒水分を補給しましょう、といういつもの注意事項ですから、猛暑のころ、また実際に暑さを体感しているときには十分注意されているでしょう。しかし9月に入って朝夕涼しさを感じるようになると、その意識も薄れ、これが落とし穴となります。たとえば、

いい気候のなかでスポーツをして、ビールを飲み、タバコを一服

これは楽しい1日ですが、実は血液ドロドロ化の要素が勢ぞろいしています。

  • いい気候⇒ひどく暑くも感じないので、喉が乾かないと水を飲まない⇒脱水気味になる
  • ビールを飲み⇒利尿作用で脱水気味になる。
  • タバコを一服⇒喫煙者のヘマトクリット値は正常値の40~45%より10~20%高い

欧米ではヘマトクリット値が51%以上だと脳梗塞の発症頻度がそれ以下の2.5倍という報告、国内では46%から頻度が増加するという研究結果か発表されています。

これに加えて心臓の持病や心室細動でもあれば、血液内のかさぶたが脳に飛んで脳梗塞、という流れもあります。

■体感ではなく知識での行動を

もちろん梗塞の原因はドロドロ血液だけというわけではありませんが、非常に大きな要因であることは確かで、1年を通して水分補給を意識してこれを防ぐことは効果的な予防です。

ただ、水分補給も体感に従っているだけでは十分な摂取が望めません。飲食が常時保証されない生活を送っていた原初の名残で、多少程度の脱水ですぐに喉が渇くといった反応はおきず、渇きを感じた時点ではすでに血液がドロッとしている可能性があります。ドロッとした瞬間は少しもなく常時サラサラが一番望ましいのですから、涼しかろうが暑かろうが、もっと言えば寒いときであれ、喉が渇くまえに水分は十分に摂取していたい。「少しずつマメに」としつこく唱えられるのはこういうことからです。

体での感覚でなく、知識をもって水分補給のコントロールに努めましょう。

■動脈硬化による梗塞

たびたび出てきた「血中を流れる“かさぶた”」ですが、これは主に動脈硬化によるものです。動脈硬化とは、血管の内壁にコレステロールがこびりついて厚く硬くなった状態を指し、コレステロールがついた部位は炎症を起こして傷となります。血液成分のうちの血漿内のフィブリノゲンが繊維状のフィブリンとなって血小板成分に絡まり、凝固した血液となって傷口を保護・修復します。血管壁にとどまっているものは「血栓」と呼びますが、これが血流に乗って移動、別の場所で血管を詰まらせると「塞栓」と呼ばれます。

血管が硬いのに加えて血液がドロッとしていると、血流の一回の押し出しに強い力がかかります。これが「血圧があがる」ということです。強い力がかかれば血栓が血管壁からはがれ、血中に流れ出します。
そして体が暑さを感じると、今度は血管は拡張し、ドロドロでもサラサラでもそれまでよりは流れやすくなって血栓が別の場所に運ばれ、重要な部位に移動して「梗塞」としてつまらせる、という流れとなります。

脱水に動脈硬化と高血圧が加わると、どれほど危険なことになるか、ということです。

■発作の前兆

梗塞の前兆は、実に様々です。

心筋梗塞の前兆

  • 胸の痛み
  • 呼吸困難
  • 吐き気
  • 左手小指の痛み
  • 肩や背中の痛み
  • 冷や汗

脳梗塞の前兆

  • 片側の手足にしびれを感じる。
  • 手の力が急に抜けてしまう。
  • ろれつが回らなくなる。
  • めまいを感じて真っ直ぐに歩くことが困難になる。
  • 人の話していることを正しく理解することができない。
  • 文字が思い通りに書けない。
  • 一時的に物が見えにくくなる。物が二重に見える。

これらの症状を感じたら、まよわず受診してください。心筋梗塞、脳梗塞は命を脅かす病気ですが、発見と処置が早ければ高い率で助かります。

■助かった後のこと

心筋梗塞は後遺症が少ない病気ですが、脳梗塞の場合は助かっても四肢や会話に不自由が残ったり、寝たきりの覚悟を必要とすることもあります。脳梗塞の兆候は絶対に見逃さないようにしたいものです。危険な年代を家族に持つご家庭は、全員が知識を持ってください。

お子さんには、こんなアニメで覚えてもらうのもいいと思います。

★愛する人を救うため~脳卒中になったとき
http://www.youtube.com/watch?v=N7tvkHTa8_4

NPO法人救急医療の質向上協議会

 

(2013.8.30.)


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