ドクターズガイド

塩分 日本人の要注意事項

人間の体に不可欠な塩は、古い時代では今より入手が難しく、扱う商人が莫大な富を築くほど貴重なものでした。しかし今ではもっとも手軽な調味・保存料として各地域の食文化に浸透し、毎日口にする塩分は良くも悪くも人間の健康への影響が大きくなっています。

なかでも日本の伝統的な食事はひときわ塩分が多く、これは近年の日本人特有の健康不安要因のひとつです。

■塩分の役割

塩のなかには塩化ナトリウムという成分が含まれ、これが必須ミネラルとして大きく3つの働きをします。

体液のph調整
体液はph7.35~7.45の弱アルカリ性が理想。体が代謝を行う際にできる酸性の物質をナトリウムのアルカリで中和する。
消化液の成分
消化液成分としてタンパク質の分解やミネラルの吸収を促進する。
筋肉を動かす
体内のナトリウムとカリウムが細胞内外で入れ替わる際に電気を出し、 この刺激によって筋肉の弛緩・収縮が行われる。

塩分の摂取に問題があると、これらの機能に支障をきたすことになるわけです。

不足すると

水分不足

体は、塩分を含むミネラル・電解質の濃度を一定に保とうとするため、塩分が少なくなれば濃度を下げないよう、排出などで水分量を減らす調整をします。これによって起こる体内の水分不足が最大の問題といえるでしょう。その弊害は数え上げればきりがないほどですが、わかりやすいものとして血圧が下がって脳への酸素供給が不足、めまいを起こすという症状があります。

消化液の不足

成分であるナトリウムの不足によって消化液も不足、これが食欲減退を減退させます。結果としてエネルギーが足りなくなって倦怠感、脱力感につながります。

筋肉の異常

これは重大な問題です。筋肉を動かすための電気信号の発生に支障がでるため筋肉痙攣の原因となり、これが心臓の筋肉に起これば心筋梗塞のひきがねとなる可能性があります。

過剰になると

不足時と同様、濃度を一定にする働きで体内の水分を増やそうとする作用がおこります。

のどが渇く

体内濃度をもどすために、より水分を摂取しようする。

むくむ

水分を保持するために尿や汗による排出を抑えるようになる。溜めこんだ水分は過剰になると細胞からあふれて細胞の周囲に溜まり、「むくみ」として現れる。

血圧の上昇

水分が増える、すなわち血管内の血液量が増え、血圧の上昇を促す。この状態が慢性的に続くと、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞といった重篤な病気のきっかけとなりやすい。

腎臓疾患

過剰なナトリウムの排出のために過度に働き、ダメージを受ける。

不整脈、心疾患

塩分過剰の場合も筋肉への電気信号の異常が不整脈や心疾患へつながる可能性がある。

カルシウムの排出

多過ぎるナトリウムは、体内のカルシウムと結合して排出する。この作用が過剰に働けばカルシウムが不足し、歯への悪影響や骨粗鬆症の恐れがある

■食塩感受性

腎臓のナトリウム排泄機能が正常であれば余分なナトリウムは4~5日で排泄されますが、この機能が弱い、もしくは低下すれば塩分過剰による弊害を起こしやすい状態となり、「食塩感受性が高い」と表現されます。

高血圧の症状が出ていてかつ食塩感受性が高ければ、塩分過剰が原因のひとつと考えられるので、「減塩」という対策が選択されます。逆に、塩分排泄機能が十分働いている場合は「食塩非感受性」とされ、高血圧であっても原因は塩分とはみなされず、減塩以外の対策が優先します。

現時点では食塩感受性を簡単に測る方法はなく、高塩分食と低塩分食を交互に1週間ずつ実践して血圧の変化を観察する検査となります。

■日本人の問題点

必要量は2~3グラム、日本の日常は9~11グラム

体の機能を保つために必要な塩分量は、1日2~3グラムとされています。これは本来なら素材となる食物だけで摂取が可能な量であり、食塩をプラスする必要はありません。事実、アマゾンやニューギニアなどで自然に近い生活をおくり、素材以外から食塩を摂る習慣のない種族にも塩分不足による症状はみられず、また高血圧もないといわれます。文明社会での活動を考えると8グラム程度は必要だろうといわれますが、WHOの推奨摂取量は1日6グラム未満です。

これに対し、醤油や味噌など塩分の多い調味料を多用する日本人の摂取量は、1日平均9~11グラム、明らかに多すぎます。調味料や食料自体が少なく貴重であった時代にはこれほどまで過剰にならなかったと思われますが、すべてが豊富になった現代では、むしろ減らすことが困難な状態です。

■対策

過剰な塩分を1日1グラム減らせば、血圧が1ミリ下がるといわれています。摂取の注意とあわせて排出も促す工夫をすれば、食塩感受性高血圧の対策としては大変有効でしょう。

摂取減量の工夫

過剰摂取の原因の大部分は調味料。少量の塩分で同じ満足感を得られる工夫する。

出汁をしっかりとる

汁物の場合、しっかりと出汁をとれば、味噌・醤油を少なくしても十分なうまみ成分で満足感が得られる。

レモン

レモンの果汁は塩分を含まないが、薄い塩味に加えると酸味の助けで強い味を感じる。風味も加えられ、食べる満足感が増す。

酢も味を強くする。酸味が苦手な場合でも、酢を感じないくらいの少量を加えるだけで塩味を強く感じる。

七味・胡椒などの香辛料を使う

香辛料も満足感が多いに増加する。食べ物は、舌で感じる味だけでなく香りや風味でも楽しめるもの。

麺類の汁は残す

麺類の塩分の大部分が汁に含まれているので、特に外食で最後に汁だけが残ったときは、迷わず残すほうがよい。

油を使った料理の味つけは濃くしがち

油で炒めたり揚げたりした料理は、油でコーティングされてしまうので、塩味を感じにくくします。味つけを足す場合は、上記にあるレモンの使用など、ちょっと注意してひと工夫するとよい。

排出の工夫

塩分の摂取を減らすと同時に、排出も促進したいものです。

カリウムの摂取

ナトリウムは、カリウムとも結合して排出される。カリウムの多い食べものは有効。
例)モロヘイヤ、イモ、豆、海藻、ほうれん草 など。

軽い有酸素運動

ダイエットに至らない程度の軽い運動でも、塩分代謝を促進する効果がある。「ウォーキング」ではなく、「ただ歩く」だけでもいい。

■塩分が悪者かどうかは自分しだい

もともと塩分は必要なもので、そのもの自体が直接体を攻撃しているのではありません。水分をに摂取しすぎる、排出のために腎臓が働きすぎる、そのためにカルシウムを使いすぎるといった、とりすぎた分を調整する自然な反応が過剰に行われることでダメージとなっているのです。

本来生き物は「足りて」いればそれ以上を摂取しません。人間は脳の発達とともに「楽しむ」欲が大きくなって「足りている」ことを感じるセンサーが鈍った結果、自分を攻撃することとなりました。少なくとも「食」に関しては、すでに変化してしまった味覚や量の習慣にひきずられることなく「足りているかどうか」を都度自問する習慣を持ちたいものです。

(2013.10.18.)


高血圧の関連情報⇒

慢性腎臓病の関連情報⇒

不整脈の関連情報⇒

狭心症・心筋梗塞の関連情報

骨粗鬆症の関連情報⇒