ドクターズガイド

働き盛りを襲う 脳梗塞

ここまで防げる、ここまで治る「働き盛りを襲う 脳梗塞」

今、日本では5人に1人が脳卒中を発症していると言われます。脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称で、その中でも一番多いのが脳梗塞です。 脳梗塞とは、脳動脈が狭くなったり、血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために脳細胞が壊死してしまう病気。以前は、高齢者の病気だと考えられていました。もちろん現在でも高齢者に多い病気なのですが、若いから脳梗塞にはならないというわけではなく、今や20代・30代さらには10代でも発症する、若い人を襲う「若年性脳梗塞」が注目されています。

高齢者の場合は、生活習慣病や老化のために動脈硬化が進んで発症するのに対し、若い人は、動脈解離・片頭痛・ピルの常用・ドラッグなどさまざまな要因が考えられます。 山王メディカルセンター脳血管センター長 内山真一郎医師は、著書 『働き盛りを襲う脳梗塞: ここまで防げる、ここまで治る最新医療』(2014年 小学館)で、正しく原因を知れば、脳梗塞を防ぐことも、再発を防止することも可能です。また、発症してしまった場合の適切な対応や最新の治療、後遺症やリハビリについてなど紹介しています。その一部をご紹介しましょう。

■第1章 脳梗塞ってどんな病気?

脳には数えきれないほどの神経細胞が納められています。見たり、聞いたり、話したり、手足を動かしたり、心臓を動かしたりなど全身の全ての機能は、脳の神経細胞からの指令によって行われています。その神経細胞に、酸素や栄養を運ぶのが血液です。血管が何らかの理由により詰まったり破れたりするとその部分の血流が止まり、神経細胞に酸素や栄養が届かなくなります。そのままにしておけば神経細胞は死んでしまい、機能が失われてしまうため、早く処置しなければなりません。脳の神経組織が壊れると言語障害や運動麻痺などの症状が現れます。日本では5人に1人、年間50~60万人の人が脳卒中を発症しています。最近は、医療技術の進歩や啓発活動により死亡者は減少していますが、それでも死亡原因の4位です。脳卒中とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つを合わせたもので、脳の血管が詰まると脳梗塞、血管が破れると脳出血、動脈瘤が破裂して脳を覆う膜のひとつ”くも膜”の下に出血があるとくも膜下出血になります。この章では、若年性脳梗塞についてや動脈硬化による脳梗塞などさまざまな場合を想定した脳梗塞について解説しています。

■第2章 脳梗塞の症状と意外な原因

こんな症状が起きたら脳梗塞かもしれません。代表的な症状として、顔面の麻痺やしびれ、言葉がうまくしゃべれない言葉のもつれ、片目が見えなくなるなどですが、脳のどの部位に虚血が起こったかによって、現れる症状が違います。例えば、眼の視野の左右半分だけが欠けて見えなくなる、視野の4分の1だけが見えなくなるなど、この症状は半盲と言い、視覚中枢のある後頭葉が障害されるために起こります。
脳梗塞が疑われる症状や代表的な症状、働き盛り世代は知っておきたい稀な症状、間違った健康法が深刻な病気について解説しています。

■第3章 治療は時間との勝負

異変を感じたら、すぐ救急車を。救急車を呼ぶメリットや脳卒中急性期医療機関一覧表、血管内治療ができる主な医療施設などの紹介をしています。

■第4章 後遺症、リハビリテーションと再発防止法

2章でも触れましたが、脳卒中は、病変のあった脳の部位によってさまざまな障害が現れます。私達には脳梗塞を起こす場所を選ぶことはできません。起きた症状に対して精一杯対応していくしかないのです。言語障害「失語症・構音障害」や脳梗塞になると感情が抑制できなくなりうつ病になる場合もあります。リハビリで回復する人とそうでない人の違いや薬はいつまで飲み続けるのかなどを解説しています。

■第5章 脳梗塞を経験した方の証言

発症半年前から後遺症と現在の状況まで、脳梗塞を発症した人の体験談を紹介しています。

■第6章 発症する前に脳卒中を予防する

脳梗塞を完全に予防することはできるのでしょうか?と言う問いに、内山医師は「将来、医療が飛躍的に進んだとしても、脳梗塞を完全に予防することは難しいでしょう」と言います。理由は老化です。血管の老化を完全に抑えられれば予防できるかもしれませんが、人は最終的には血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞で死に至ることになります。いくら健康的な人でも老化を防ぐことはできません。仮に画期的な進歩を遂げ血管の老化を抑えられたとして、今度は死にたくても死ねないと言う悩みが発生します。

(2015.03.25)

内山真一郎
内山真一郎医師

山王病院・山王メディカルセンター 脳血管センター長

1949年、埼玉県生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学に勤務。米国メイヨー・クリニックへの留学などを経て、2008年より東京女子医科大学神経内科主任教授、2009年から同大学脳神経センター所長。2014年4月より国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院・山王メディカルセンター脳血管センター長。脳卒中治療のエキスパートであると同時に、関連学会の理事、学会長といった要職を歴任。脳梗塞の予防や啓発活動にも力を入れている。

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