ドクターズガイド

コレステロール 注意を要する必須栄養素

■コレステロールとは

コレステロールは19世紀初頭に、ギリシャ語で胆汁を表す「コレ」、固まったものを表す「ステリン」をあわせて「コレステリン」と名付けられ、これがコレステロールという名で定着。ウサギに多く与えたところ動脈硬化が見られたたため、「悪いもの」というイメージが広まりましたが、タンパク質、炭水化物とならぶ、三大必須栄養素のひとつです。

■役目

イメージ的にはともかく、生体活動にはかかせない物質です。

  • 栄養やエネルギーが出入りできる細胞膜の構成成分。
  • 体内の1/4は脳にあり、神経細胞軸策を包んで絶縁体として保護。
  • 副腎皮質、精巣、卵巣、胎盤で作られるステロイドホルモンの材料となる。
  • 脂肪を消化する胆汁酸の材料となる

■体内で作られるものと摂取するもの

体内では、脂質、糖質、たんぱく質を材料として一日に1gから1.5gのコレステロールが、肝臓、小腸、副腎皮質、性腺などで作られます。また通常の食事でも外部から0.3g~0.5gは摂取され、その量によってホメオスタシス(動的恒常性)が働いて体内で生成する量が調節されて、常に一定量を保とうとされます。

■体内での移動

摂取、体内生成にかかわらず、脂質なので血液に溶け込めないため、比重・働きの違う4種のリポタンパク質(タンパク質と脂質の複合体)となって血流に乗って全身に運ばれます。

●比重の違う4種のリポタンパク質とそれぞれの役目
カイロミクロン(たんぱく質2%:脂質98%)
食物から摂取した中性脂肪を体内組織に送る
VLDL(超低比重リポタンパク質)
肝臓で作られた中性脂肪を体内組織に送る。
LDL(低比重リポタンパク質 中性脂肪10%:コレステロール40%)
VLDLが血中の酵素の働きでLDLとなり、体中の各細胞に細胞膜やホルモンの原料としてコレステロールを運ぶ。
HDL(高比重タンパク質 コレステロール10%~15%)
細胞から余分なコレステロールを受け取って肝臓に運び、肝臓が胆汁として排出。「コレステロールを回収する」ということで「善玉」とされます。

■問題となる点

体内のコレステロールは、通常はホメオスタシスによって過不足ない状態に保たれるようになっています。しかし過剰な摂取やなんらかの機能障害によって各部で使い切れなかったぶんが血中に残り、かつ善玉コレステロールによる回収・排出の処理が追いつかなくなって血中に残ってしまうとき、「悪玉」として血管にダメージを与えるなど健康を害する問題が生じることになります。

反面、不足した場合は細胞膜やホルモンといった生体に必要なものの材料が不足する事態となり、組織がもろくなる、機能が低下するといったリスクも発生します。

コレステロールの悪玉化を促進する要因

疲労やストレス
ストレスを感じると、副腎皮質ホルモンの分泌が活性化し、合成されるコレステロールの量が増え、使い切れずに過剰となる。
暴飲暴食
摂取するコレステロールが多すぎて使い切れず、過剰となる
不規則な食事
体内時計が狂って肝臓の機能が低下。胆汁の分泌が減って、胆汁とともに排出されるコレステロールが減る。
また、次の栄養摂取までの時間がまちまちだと、体が栄養を溜めこもうとする。結果、体内コレステロールも増える。
運動不足
脂質の消費が足りず、コレステロールが過剰となる。
たばこ
たばこに含まれる過酸化水素は肺の中で活性酸素となり、LDLコレステロールを酸化させる。酸化されたLDLコレステロールは、されていない場合の数倍も血管壁に溜まりやすく、より動脈硬化を促進する。LDLコレステロールが高い人に喫煙習慣があった場合、たばこを吸わない人の何倍もリスクが高い。

動脈硬化

血中に残ったコレステロールは酸化し、血管壁にとりつくとその部分に溜めこまれて腫れ上がり、血管を細くまた硬くして動脈硬化を起こします。そして最終的にはたまった部分が破れ、血管に傷がついてこの修復のためにかさぶたができ、それがはがれて血管内に流れ出すと、血栓となって心筋梗塞、脳卒中などの循環障害の引きがねとなることがあります。

この場合は、一番はじめに起こる余剰コレステロールの「酸化」という問題を何とかしなくてはなりません。動脈硬化を予防するためには、脂質の摂取を適量にするとともにコレステロールの酸化を防止する抗酸化物質の摂取も必要です。抗酸化物質には、ビタミンE、C、βカロチン、リコペン、フラボノイド(ポリフェノールなど)などが一般的です。

「不足」しても脳卒中の危険

過剰での問題が目立つコレステロールですが、コレステロールは細胞膜の成分でもありますから、血管の細胞を健康に保つためには最低必要な量があります。血管組織の弱さが問題となる脳卒中の予防に対しては「過剰」ではなく「不足」を避けるようにしなければなりません。

■自分自身のコントロールにかかっている

コレステロール自体は体に必要なもので「悪」ではありません。体内で「過剰」となったものが健康を害する側に回り、不足すれば正常な生体活動ができなくなるものです。そして過剰になるか不足するかは、ほとんどの場合自分自身のコントロールによります。コントロールの手段は何かといえば、「食事、ストレス、運動」の管理。「またか」と思う方も多いでしょうが、それだけ重要なことだからこそ、あちこちでしつこく耳にするのです。いまや「食事、ストレス、運動」の管理は大人としての常識といえるのでしょう。

(2013.11.07.)


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