武田卓医師は、近畿大学東洋医学研究所長赴任を機に産婦人科医としての専門性を生かした女性漢方外来と冷え症外来とを開設。従来からの東洋医学の枠組みにとらわれず、西洋医学の確かな専門性を持ったうえでの漢方治療を実施。併行して研究活動を続けており、分子細胞生物学手法により「子宮筋腫に対する新しい治療薬開発」について生薬中の有効成分を利用した基礎研究を行っている。2009年には「ヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法」、2014年には「漢方配合お香」で特許出願。東北大学では再診患者と臨床試験参加患者のみ診察を行う。
2012年4月、近畿大学東洋医学研究所長赴任を機に、その専門性を生かして「女性漢方外来」と「冷え症外来」とを開設した武田医師。
「女性には、月経・妊娠・閉経といったホルモンバランスの劇的な変化があり“冷え”等の女性ならではの症状も出現します。現代のストレス社会では、更年期障害や月経前症候群といった不定愁訴が増加しており“心と体はひとつ”と、とらえる漢方治療が有効な場合も多々あるのです。また西洋薬との併用も有効であり、ホルモン補充療法と漢方、がん治療副作用対策といった、漢方・西洋医学それぞれの利点を生かして、女性の皆様の辛い症状の改善を目指します」と、その意義を語る。
「女性漢方外来」「冷え症外来」ともに予約制の自費診療であり、自費診療の特性を生かした保険診療の枠にとらわれない有効な治療・検査が可能であるという。
初診患者においては「気・血・水」に基づいた問診票を記入後に、まずは西洋医学的な診断に基づいて「本当に漢方治療が適切かどうか」を判断。通常の漢方専門外来とは異なり、血液検査・心理検査・画像診断等の西洋医学的検査を併せて施行する場合もあり、器質的疾患のルールアウトを行う。特に、冷えの症例に対しては、器質的な血管病変を検索するために、脈波伝播速度測定を実施している。さらに、体組成計による筋肉量評価を実施し、体組成面からの冷え症状の原因検索を行う。2016年6月からは、最新の超音波画像診断装置を導入し、実際の血流やむくみを評価できるようになった(「むくみ外来」)。次に「舌診」「脈診」「腹診」による漢方的診断を行い、患者がどんな体質で、どんな症状があり、今の心の状態はどうなのかなどを知り「証」という治療の指針を定めてゆく。
診察時間は初診の場合には最低でも30分をかけ、患者の置かれている社会的背景・心理的背景もふくめた全人的な診断を行う。治療は主に、漢方薬の処方。必要に応じて、医師の指示のもとで、鍼灸師による鍼灸治療も併用する。
患者の症状や体質に合わせ、最適な漢方薬を選んで処方する。処方する漢方薬は、患者の希望によりエキス剤(ツムラ等のこな薬)・煎じ薬(自宅で自分で煎じてつくる)の両方が選択できる。エキス剤はどこでも内服できる利便性が、昔ながらの煎じ薬は手間はかかるが効果に優れるといった特徴が、それぞれにある。煎じ薬については、院内調剤の高品質な生薬を使用した漢方薬がその場で処方される。
「西洋薬に比べて比較的副作用が少ないと思われがちな漢方薬ですが、ほかの薬との飲み合わせで、副作用が起こる場合も。必ず医師からの処方を守って服用することが大切です」(武田医師)なお、服用から2~4週間である程度の効果が見られるという。
同研究所ではまた、脳神経科学研究をリードする遠山正彌名誉教授(大阪大学医学部)を客員教授に迎え、宮田信吾准教授を中心とした基礎研究部門もスタートさせた。ここでは、漢方薬の作用メカニズムを最先端の分子生物学的手法によって科学的に解明する試みが行われている。
現在は「抑肝散」という漢方薬を中心に、漢方薬の神経機能に対する効果についての科学的解析を行っており、有効成分の同定、作用機序の解明から新規創薬への展開を目指しているそうだ。
「古代中国からの長い歴史をもつ漢方治療ですが、これからは21世紀の現代医療にマッチした診療・研究、さらにはトランスレーショナルリサーチを展開していきたいと考えております」(武田医師)
要予約。診察受付時間は8:30~11:30。
【武田医師の診察】女性漢方外来:月・木曜。漢方診療科:火曜。冷え症外来:金曜。
月曜・木曜・金曜では、一般外来(男性患者も含む)も実施。一般外来では、がん治療中・治療後の副作用対策としての受診患者も多い。月曜・木曜は女性医師の診療もあり(月曜の偶数週:麻酔科医、木曜の偶数週:産婦人科医)。2016年6月からは、冷え症の原因にもなる、浮腫を対象とした「むくみ専門外来」を開設した(木曜の偶数週:女性医師担当)。また、診療とは別に、更年期障害や月経前症候群に対する臨床試験も適宜実施している。
・近畿大学病院産婦人科外来:金曜の午後「内分泌・更年期外来、腫瘍サポート漢方外来」を担当。
累積患者数は5,000人、うち冷え性患者1,000人を診察。
年間新患数は250人、うち冷え性患者100人を診察。
日本産婦人科学会専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科指導医・(産婦人科)専門医、日本女性心身医学会認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・癌治療認定医、日本東洋医学会専門医、日本内分泌学会代議員、日本女性心身症学会理事、日本未病システム学会評議員
薬物に頼る前に生活習慣の改善がいちばん。漢方治療の際にも併用してほしい。
具体的には、日常的な運動・ストレスをためない・入浴(38~40度でゆっくりつかる。シャワーではだめ)・睡眠をしっかりとる、など。
冷たいものの食べ過ぎ・飲みすぎには注意。お腹は冷やさないように。腹巻で温めると、手足も温かくなる。
漢方診療科は保険診療、附属診療所では自由診療を行う。自由診療を行うメリットは、保険診療では使用できる生薬の品目数が限られており、高品質な生薬を使用することができないため。エキス製剤でも保険病名の制限があるため、効果が期待される薬剤でも保険診療で使用できない場合もある。検査に関しても同様。混合診療とならないため鍼灸治療・漢方治療の同じ診察日での診療が可能。
附属診療所の診療費は初診5,000円、再診2,000円。薬代は1日あたり約200~500円(処方内容により異なる)、調剤料は10日ぶんを超えた場合に1日あたり10円加算。鍼灸治療は先の診察料+鍼灸治療費3,000円。(消費税別)
近畿大学東洋医学研究所: http://www.med.kindai.ac.jp/toyo/
近畿大学病院: http://www.med.kindai.ac.jp/huzoku/specialty_28.html
東北大学病院: http://www.ob-gy.med.tohoku.ac.jp/patient/index.html
東北大学医学部 産婦人科-研究室紹介: http://www.ob-gy.med.tohoku.ac.jp/laboratory/t-takeda.html