ドクターズガイド

楠田 聡 医師 (くすださとし)

楠田 聡 (くすださとし) 医師

東京女子医科大学病院(東京都)59病院のクチコミ
母子総合医療センター
所長、教授 新生児医学科

専門

新生児呼吸器疾患、新生児内分泌疾患

医師の紹介

「NICUでのケアは子どもの一生や生命に直結する重大な医療」と、日本の新生児医療の底上げに尽力。医療従事者等を対象に、定期的に新生児蘇生法の講習会や新生児栄養フォーラムなどを開催する。ほか「医療の標準化検討委員会」委員長、厚生労働科学研究費補助金「周産期医療の質と安全の向上のための戦略研究」研究者代表、同「重症新生児に対する療養・療育環境の拡充に関する総合研究」研究分担者などとして活動。自らが開発した「早産児(低出生体重児)採血用シミュレータ」特許出願中。

診療内容

楠田医師が所長を務める同院母子総合医療センターは、東京都の中核周産期医療施設として総合周産期母子医療センターに指定されており、都内のみならず都外からも多くのハイリスク妊婦あるいは新生児が搬送されてくる。なかでも、NICU(新生児集中治療施設)15床、GCU(回復期病床)24床を運営する新生児部門は、国内有数の新生児診療施設。ここでは、ハイリスク妊婦から出生する新生児および院外出生のハイリスク新生児の集中治療が主に行われている。
「そもそも新生児とは大変弱い存在です。環境が子宮内から子宮外へと大きく変化し、未だ適応過程にあるからという理由だけではありません。自ら意志表示ができない、という理由も大きいのです。スタッフは単にハイリスク新生児の集中治療を行うだけでなく、ハイリスク児を取り巻く家族のケア、あるいは大きな問題なく出生したローリスクの新生児が無事に退院できるよう、補助することも重要な職務なのです」と、楠田医師は同センターとそこで働くスタッフたちのあり方を語る。特に、新生児の治療にはチーム医療の実践が命題。全体の診療方針を統一させるため「超低出生体重児新しい管理指針」「東京女子医科大学母子総合医療センター 周産期マニュアル」など、楠田医師自身も執筆や編纂に加わり、同センターで編集したマニュアルや教科書を用いて治療に当たるという。
同センターでの診療実績は、実に豊富だ。NICUで管理される新生児疾患は、ざっと挙げただけでも早産児(呼吸窮迫症候群・脳室内出血・脳室周囲白質軟化症・動脈管開存症)、胎児発育遅延、巨大児、母体糖尿病児、先天異常、先天性感染症、新生児仮死(低酸素性虚血性脳障害)、胎便吸引症候群、分娩外傷、呼吸障害(新生児一過性多呼吸・新生児蔓延性肺高血圧症)、低体温、低血糖、低カルシウム血症、重症黄疸、感染症、メレナなど…と実に幅広い。
なかでも「晩期循環不全」は、2000年以降症例数が増加した早産児の合併症のひとつであるそう。循環不全状態を起こす他の疾患をまず除外する必要があることから、治療ではカテコラミンの投与と容量負荷が行われる。さらに感染症の有無も確認。感染症もなく容量負荷にも反応しない場合には、グルココルチコイドが投与される。なお、効果と副作用を考慮するとハイドロコーチゾンの使用がもっとも適切だそう。投与の効果は数時間以内に表れるが、効果がない場合には、投与量を3~5倍にするか、他の循環不全の要因を精査する。
「同時に人工呼吸器で肺を助け、保育器で体温を調節し、点滴によって栄養を補給していきます。特に特徴的なのが、人工呼吸器。ほんのわずかな空気の流れの変化を感知できるセンサーが搭載されており、これにより、新生児の呼吸の強弱に合わせて空気を送り込むことができます。また、心臓などの動きを見る超音波装置も、大人に使用する装置よりも体の部位に当てる先端部分を細くするなど、使いやすく改善しています」(楠田医師)
また、新生児は高頻度に呼吸障害が現れるため、呼吸管理が重要。適切な呼吸管理のためには、血液ガス分析(酸素化状態、酸塩基、電解質、代謝バランスなど)による正確な呼吸状態の評価が必要となる。ちなみに、ハイリスク新生児の治療には多くの機器を必要とするが、その目的は胎児から新生児の適応の補助。可能な限り、新生児を胎時期と同じ状況に維持できるようにさせるものである。保育器は体温調節が不十分な新生児の体温を保つと同時に、ある程度の感染の防御するため。人工呼吸器は、胎盤呼吸から出生によって突然肺呼吸に変わった新生児の呼吸を補助するため。輸液ポンプは、それまでの胎盤からの栄養吸収から静脈栄養に換えるために必要。光線療法器は、赤血球の溶血により生ずる黄疸の治療に欠かせない。
危機的状況は乗り越えたものの、新生児が過程で過ごすにはもう少し成長する必要がある場合には、回復期病床(GCU)に移されて引き続き入院。通常はNICU入院期間と同じかそれ以上をGCUで過ごしてから、退院となる。GCUでは母親は我が子を抱っこすることも可能となるため「カンガルーケア」と呼ばれる方法でゆっくり肌を触れ合いながら、退院に向けての指導も行う。「私たちは小児科と協力し、ハイリスク新生児のフォローアップも実施しています」と楠田医師。
NICUに入院中あるいは退院後の家族の心の問題に対応するため、NICU専属の臨床心理士による心理相談も行っているそうだ。

診療を受けるには

病棟での診療が中心だが、水曜午後に新生児部門の専門外来を実施。セカンドオピニオンにも対応可能。ハイリスク児のフォローアップや予防接種等は、小児科外来より予約可能。

累積症例数または患者数

新生児の症例数は3,000例を超え、極低出生体重児がその約30%を占める。

年間症例数

病院全体の低出生体重児の年間入院数は150人前後。このうち出生体重1,500g未満の極低出生体重児が約1/3を占め、その半数が1,000g未満の超低出生体重児。これらの全てについて治療方針の相談に応じている。

医師のプロフィール

経歴
1978年 大阪市立大学医学部 卒業
1985年 アメリカ合衆国立医学衛生研究所小児の保健・発達研究所研究員
1988年 大阪市立小児保健センター医長
1997年 大阪市立総合医療センター新生児科部長
2003年 東京女子医科大学母子総合医療センター助教授
2005年 東京女子医科大学母子総合医療センター教授
2008年 東京女子医科大学母子総合医療センターセンター長
所属学会・認定・資格

日本未熟児新生児学会理事・評議員、日本周産期・新生児医学会理事・評議員・会計担当理事、日本糖尿病・妊娠学会理事、日本予防医学リスクマネージメント学会理事

予防に心がけたいこと

妊娠中はバランスの良い食事と、適度の運動が重要。出生後もバランスの良い食事を続けることで、母乳もバランスの良い内容となる。

費用のめやす

NICUへの入院費については、未熟児養育医療制度が適応されるので、医療費の自己負担は生じない。なお、新生児特定集中治療室の診療報酬は10,000点/日(10万円/日)である。

発信メディア(ホームページ、ブログ、Twitter、facebook等)

東京女子医科大学_母子総合医療センター_新生児科: