ドクターズガイド

板橋家頭夫 医師 (いたばしかずお)

板橋家頭夫 (いたばしかずお) 医師

昭和大学病院(東京都)56病院のクチコミ
小児科
科長、教授

専門

小児科学、新生児医学(極低出生体重児の成長・栄養管理)

医師の紹介

専門診療としてNICUを退院した児のフォローアップ外来を担当し、成長や発達のみならず、早産低出生体重児の生活習慣病のリスクについても評価を行い、成人期まで見据えた総合的な診療を心がけている。一般診療では子どもと家族の幸福を第一とする「family centered care」がモットー。他の医師やコメディカルと密な連携のもと、診察にあたる。大学教授としては低出生体重児の静脈栄養や母乳強化パウダーの開発を中心とした栄養管理や、早産低出生体重児の生活習慣病に関する研究を行う。その他、厚生労働科学研究「成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業」研究代表者としてHTLV-1 母子感染予防の研究に携わっている。わが国の在胎期間別出生時身体発育標準値の作成し、現在国内で広く使用されている。日本小児科学会新生児委員会委員長として、国内の超低出生体重児の死亡率の全例調査を行い海外論文で発表し大きな反響を得ている。

診療内容

小児内科と新生児科の2つの専門科による総合小児科の診療科長として、小児領域の急性期・慢性期疾患の診療にあたる板橋医師。患児とその家族を第一義とし、他科の医師やコメディカルとの有機的な連携を大切にした「チーム医療」を行うことが、板橋医師のモットー。「小児、特に新生児に対する治療は、ときに大きなリスクを伴う。適切なインフォームドコンセントやアセントを得て、ご家族の十分な理解のもとに診療を行います」と、診察に対する姿勢を語ってくれた。
昭和大学病院の入院棟には「総合周産期母子医療センター新生児部門」として新生児集中治療室(NICU)および回復期病床(GCU)があり、ここでは重症新生児・未熟児を受け入れている。ここでは日々、リスクの高い分娩や早産等により、何らかの疾患や問題を抱えた新生児たちが運び込まれてくるという。
この項では、低酸素性虚血性脳症と早産低出生体重児の治療について説明する。

【低酸素性虚血性脳症】…出生直後の子宮外生活の適応が困難な場合には、新生児仮死となり、重篤な場合には本症を発症する。このような児に対して呼吸・循環管理がまず優先される。蘇生によっても呼吸が確立しない場合には、機械的人工換気を行う。その際は適切な動脈血炭酸ガス分圧の維持も重要であり、同時に極端な低炭酸ガス血症や高炭酸ガスによる脳血流の大きな変動を避けるよう注意する。心機能・腎機能が低下している際には、過剰な水分投与が悪化を招く一方、不必要な水分制限も循環動態を悪化させる。よって、体重や血圧、血液生化学検査(血清電解質、浸透圧など)、尿量をきめ細かくモニタリングし、さらに超音波検査による心機能を評価しながら輸液量を調節してゆく。必要の応じて適切な循環作動薬を併用する。その他、状況に応じて一酸化窒素の吸入療法や低体温療法も併用される。 「症状の発生を予知することが困難なケースも多々あります。速やかに適切な対応ができるようにするためには、日ごろから蘇生器具を点検しておくことや、蘇生法の手技に熟達するようトレーニングを積んでおくことが重要です」と板橋医師。
新生児仮死を伴う場合、出生後は沐浴などを行わず綿密な監視下に置くとともに、リアルタイムに家族への説明を行うこと、処置の内容や家族への説明を正確に診療録に記載すること、二次~三次施設との連携を図ることも、大きなポイントだという。
【早産低出生体重児】…早産低出生体重児が良好な予後を得るためには、呼吸循環管理や感染予防のみならず、栄養管理も極めて重要である。極低出生体重児の栄養管理は大きくわけて3つのステージがある。1つは出生早期で、2つ目は強化母乳栄養(あるいは低出生体重児用ミルク)が主体となる時期、3つ目は新生児集中治療室(NICU)退院後である。
最も緊急を要する「出生早期」では、出生後数時間以内から静脈栄養によって2 ~3g/㎏/日のアミノ酸投与を開始するとともに、生後数日以内に10~20mL/㎏/日の授乳を開始する。その際は可能な限り連日体重測定を行い、最大体重減少率は10~15%以内を目標に。さらに1日2~3回は血糖値を測定し、安定してきたらグルコース投与量を増量するたびに測定。アミノ酸を増量する際にはBUN(血中尿素窒素)、血清アンモニア、血液ガスを測定する。体重の変化や水分出納、血清電解質(とくにNa)を参考に、その後は水分量を増やしていく。過剰な水分摂取量は未熟児動脈管開存症や慢性肺疾患のリスクにつながるので、150mL/㎏/日を上限とする。なお、静脈栄養は低出生体重児にとって非生理的栄養法であり、経腸栄養が与えられなければ腸管粘膜が委縮し、消化吸収機能などが低下、結果としてさまざまな障害が出やすくなる。これを防止するためには、出生早期から少量であっても乳汁を用いて経腸栄養を行うことが重要である。
2つ目のステージでは、母乳を栄養の第一選択とする。
母乳の投与は精神運動発達面への効果や新生児壊死性腸炎、敗血症などのリスクを軽減することが明らかであるためだ。母乳分泌がない場合は、低出生体重児用ミルクを選択する。母乳の栄養素が次第に減少し、それだけでは栄養必要量を賄うことが困難である場合は、母乳強化物質を使用。一般には母乳摂取量が100~120mL/㎏/日になった時点で標準添加量の1/2で強化を開始し、数日を経て腹部膨満や残乳量の増加がないことを確認できれば、標準添加量を使用する。通常は、NICU 退院時まで強化母乳を与える。
なお、総合周産期母子医療センターでは患児に対する高度な診療の提供のみならず、出生後早い時期から母子分離を余儀なくされた母親をサポートするため、臨床心理士の配属や、母子早期接触、カンガルーケアの導入などさまざまな配慮が。日ごろから定期的な産科とのカンファレンスを設けているからこそ、胎児から新生児への一貫した診療が可能になるのだという。
「赤ちゃんに最先端の医療を提供することは当然のことであり、さらにご家族の皆様にも安心して赤ちゃんを育むことができる―そのような新生児医療を理想としています」(板橋医師)。
3年前の未熟児新生児学会学術集会では「子ども達に無限の可能性を与える新生児医療を目指して」というメインテーマを掲げたという板橋医師。「今度も日本の新生児医療の向上に貢献できるよう努力していきます」と、これから妊娠・出産を考える女性やその家族にとっては非常に心強い意志を語ってくれた。

診療を受けるには

板橋医師の担当は、火曜・木曜の午前(一般)と火曜の午後(乳児・発達検診)。要紹介状。

医師のプロフィール

経歴
1979年3月 昭和大学医学部 卒業
1979年4月 昭和大学小児科学教室
1988年2月 葛飾赤十字産院小児科部長
1990年7月 昭和大学小児科専任講師
1996年8月 浦和市立(現さいたま市立)病院小児科科長
1999年7月 埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター新生児部門助教授
2002年4月 昭和大学横浜市北部病院こどもセンター教授
2003年12月 昭和大学病院小児科診療科長、昭和大学医学部小児科学講座主任教授
所属学会・認定・資格

日本小児科学会代議員・専門医、日本周産期新生児医学会理事・暫定指導医、日本小児科学会新生児委員会委員長、日本未熟児新生児学会理事、日本母乳哺育学会理事長、International Society for Developmental Origins of Health & Disease会員