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朝田 隆 医師 (あさだたかし)

朝田 隆 (あさだたかし) 医師

メモリークリニックお茶の水(東京都)
院長
筑波大学 名誉教授

専門

臨床精神医学、認知症疾患、脳機能画像を専門分野とし、とくに老年学、アルツハイマー病に詳しい

医師の紹介

朝田隆医師は、アルツハイマー病を中心に認知症疾患の基礎と臨床に携わり、脳機能画像診断の第一人者。SPECT画像とMRI画像を融合して用いて脳の萎縮を伴わずに血流が低下している部位を検出する画像処理手法とソフトウエアFUSEの開発を行って、認知症のより確実な早期診断を可能にしている。音楽療法、絵画療法による脳機能改善効果についての調査研究のほか、運動や食事、30分以内の昼寝等生活改善による認知症予防効果を世界で初めて明らかにし注目を集める。若年性及び老年性認知症患者の有病率調査等大規模実態調査に尽力し、認知症対策推進にも貢献する。認知症患者の家族や介護、福祉関係で働く人々に向けて講演も積極的に行っている。

2015年4月よりメモリークリニックお茶の水をオープン。

診療内容

人の脳細胞は誕生以降は減少し続け、新たに発生することはないとされてきたが、近年、その学説を覆すような発見がなされ、人の脳では神経細胞が新生すること明らかにされてきた。実際にラットの実験では学習、運動、豊かな環境が神経の新生を促進することが報告されている。こうしたことを背景にアルツハイマー病の認知リハビリテーションにおいても大きな変化が起こっている。
アルツハイマー病の超早期の介入・予防、認知機能のリハビリについても積極的に取り組んでいる朝田医師は脳の代償作用について注目し「アルツハイマー病においては大脳全体が病気で侵されるわけではないので、ほとんど無傷であったり、軽度障害ですむ部位もあります。そうした場所の神経細胞に働きかければ、代償作用が生じる可能性が大きい」としている。(朝田医師)
朝田医師はアルツハイマー病患者に特徴的な脳血流パターンをSPECTにより明らかにする研究を重ねてきたが、その中で血流低下をする部位と、逆に血流が有意に増加する部位が少なからずあることがわかってきた。増加した部位については、失った機能を補完するための代償機能が働いた可能性があるとしている。また、アルツハイマー病治療薬のアリセプトの服用によって前頭前野の血流低下が進行しないことを確認し、前頭前野の機能保持に薬物治療の効果があることを指摘している。前頭前野はワーキングメモリーを担い、想起に関して最初に引き金を引く部位であり、遂行機能にも関わることなどが明らかにされている。前頭前野はアルツハイマー病患者の脳では症状が進んでも比較的その機能が保たれる部位でもあることから、リハビリテーションのターゲットとなりうる期待が大きいとしている。
これまでのアルツハイマー病のリハビリの多くは言語を媒介として記憶そのものを標的としてきたが、残念ながら満足できる効果は得られていない。一方、音楽や絵画を介した療法については注目されてこなかった。左右の脳の分担ということでは言語に関しては概して左脳が、音楽・絵画は右脳が関係するといわれている。歌を歌ったり楽器を演奏したり、絵画を描くことで右脳に刺激を与えることで脳の代償機能を促す可能性があり、音楽や絵画によるリハビリについてもっと注目してよいはずと朝田医師は言う。
そこで朝田医師は初期アルツハイマー病患者を対象に、有酸素運動と特殊な合奏療法、絵画療法を半年間にわたり試行し、こうした療法を行わないグループとの比較研究を行ったところ、合奏療法と絵画療法を施行した群では有意な改善が認められ、初期アルツハイマー病患者に対する音楽や絵画によるリハビリの効果があることを明らかにした。
我が国の高齢化の進展とともにアルツハイマー病患者数もまた、加速度的に増加していると考えられる。しかし、近年、こうした現状に即した形での実態調査が行われていないこともあり、朝田医師はアルツハイマー病の全国的な実態調査を行った。厚生労働科学研究費補助金事業の認知症対策総合研究事業「認知症の実態把握に向けた総合的研究」(2010年度)がそれで、朝田医師が主任研究員として携わり、認知症有病率調査等を1年かけて行った。その結果はそれまでの先行研究の数値をはるかに上回るものとなり、大きな衝撃を持って迎えられた。
調査は茨城県利根町や愛知県大府市など全国7ヶ所で認知症高齢者数(有病率、症状別分布、所在の推計)を推計するという目的で行われた。65歳以上の地域住民を対象に全地域で合計約5,000人について1次調査を行い、認知症の疑い(CDR0.5以上and/or MMSEが23点以下)のある人を抽出し、2次調査において、医師や臨床心理士ら専門職が家庭訪問したり、病院や介護施設に訪問して診察、採血をはじめ一般身体・神経学的検査、PAS(Psychogeriatric Assessment Scale)による構造化面接(認知症、うつ、脳卒中診断)、各種認知症の診断を行った。
その結果、65歳以上人口における認知症有病率は15.7%(12.4%~22.2%)となり、どの先行研究と比べても高い数値となった。この理由として朝田医師は、日本の高齢化率の急激な上昇が有病率に反映しているためとしている。認知症の最大の危険因子は加齢であり、年齢層別の認知症の出現率は5歳ごとに倍増するという報告もあり、高齢化率の上昇はとりもなおさず認知症の有病率を押し上げることになる。
厚生労働省では65歳以上の高齢者における有病率を8~10%と推定し、2010年で226万人、2020年で292万人と推計している(厚生省「1994年痴呆性老人対策に関する検討会報告」)が、朝田医師の調査結果をもとに算出すると約2倍の患者数となり、認知症対策が火急を要することを改めて示唆している。同時に、高齢化に伴う認知症患者数がこれほど急激に増加しているとは予想されていず、認知症対策を根本から見直さなければならないともいわれている。
朝田医師は今後、都市部における同様の調査を行って本調査結果と比較検討することにより、全国レベルの有病率推定を行いたいとしている。
朝田医師はまた、この調査に先立ち、若年性認知症についての疫学調査も行っている。「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究(2006年~2008年に調査、2009年3月に発表)」がそれで、若年性認知症の有病率を算出するほか、当事者・家族が直面する問題点を明らかにすることを研究の目的としている。同調査において全国5県(熊本県、愛媛県、富山県、群馬県、茨城県の全域)で疫学調査を行った結果、推定された18~64歳人口における10万人対の患者数は47.6人(男性57.9人、女性36.7人)で全国における推定患者数は3.78万人と推定される。
基礎疾患として脳血管障害(39.8%)、アルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、FTLD(=前頭側頭葉変性症3.7%)、アルコール性認知症(3.5%)、DLB/PDD(レビー小体型認知症/認知症を伴うパーキンソン病 3.0%)がある。
若年性認知症とは発病年齢と調査時点における年齢がいずれも65歳未満の場合をいうが、患者の約8割は50歳以上であり、推定発症年齢についても同様の傾向がある。40歳代以下での発症は約3割であり、症状の分類では軽度、中等度、重度それぞれ3分の1程度ずつに分けられる。日常生活動作(ADL)については自立できている人は半数以下である。
合併症では高血圧、糖尿病、高脂血症、てんかんが多く、特に高血圧は3割近い症例があり、糖尿病も1割以上と多い。
生活の場は自宅と病院・施設との比率はほぼ等しく、介護保険の要介護認定については、申請なしが3分の1以上と多く、要支援1から要介護5まで満遍なく分布していた。要介護3以上が3分の1を占めた。
日本では認知症介護についての制度や社会的取り組みについては整備されてきており、世界のトップレベルに達したといわれる一方で、若年性認知症に対策については一向に進んでいない状況があるが、そうしたことを裏付ける調査結果となった。朝田医師は医療はもとより、支援対策等の早急の取り組みが求められると警鐘をならしている。
朝田医師は「認知症は脳神経の疾患ではあるが、それ以上に家族や社会経済への影響が大きい」として、社会問題としての側面にも早くから着目し、精神科医としての視点からアプローチしている。つくば市内の認知症に関心のある内科医やケアマネージャー、保健師、地域包括支援センターの職員らと定期的にミーティングを行い、精神科医の果たすべき役割についても検討を重ねている。そこからわかってきたことは精神科に要望されていることは早期の正確な診断と、精神症状や暴言・暴力などに対する対応策等であるとしている。
精神科病床約35万床のうち、認知症の入院患者がその約15%を占め、統合失調症に次いで第2位となった今、精神科医も認知症に正面から向き合わなければならない時期にきていると朝田医師は言う。「認知症に本格的に取り組んでいる精神科医はほとんどいないのが現状で、むしろ脳神経外科医、老年内科医といった方々が認知症治療に熱心に取り組まれている印象があります」とし、精神科医師が最後の砦となって支えられるよう駆け込み寺的な存在となれるよう努めていきたいと語っている。

診療を受けるには

予約電話の受付時間:月曜~土曜の9:00~15:00(TEL:03-6801-8718)。朝田医師は、木曜・日曜が休診。

累積症例数または患者数

3,000人

年間症例数

600人

医師のプロフィール

経歴
1982年 東京医科歯科大学医学部卒業、石川芦城病院、東京医科歯科大学神経科、甲府市立病院神経内科勤務
1984年 山梨医科大学精神神経科助手
1988年 英国オックスフォード大学老年科留学
1989年 山梨医大講師
1995年 国立精神・神経センター武蔵病院医長、老年精神科医長
2000年 同院リハビリテーション部長
2001年 筑波大学臨床医学系精神医学教授、筑波大学附属病院精神神経科グループ長、筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻精神病態医学分野教授
2014年 東京医科歯科大学医学部附属病院 特任教授 (現任)
2015年4月 筑波大学 名誉教授 、 医療法人社団創知会 理事長 、 メモリークリニックお茶の水 院長
所属学会・認定・資格

日本精神神経学会専門医、精神保健指定医、日本老年精神医学会専門医、日本老年医学会指導医

精神医学講座担当者会議会長、日本老年精神医学会副理事長、東京精神医学会理事、日本認知症学会理事、日本神経精神医学会監事、日本老年医学会、日本老年社会学会、日本うつ病学会、日本精神科診断学会、日本統合失調症学会、日本生物学的精神医学会、日本老年医学会、日本老年社会学会、日本うつ病学会、日本神経精神医学会、日本精神科診断学会

予防に心がけたいこと

認知症の根治薬の研究は盛んに行われているが、いまだ実現していないのが現状である。そのため、認知症を発症する前のMCI(軽度認知障害)のうちに治療・予防を始めることが肝心である。認知症に気づくきっかけとしては意欲低下が見られる場合などで、たとえば、長年やってきたことをやめるなどがそれに当たる。お茶の先生やお花の先生が指導をやめたり、長年やってきたゲートボールをやめたという時などは要注意である。MCL(軽度認知障害)であるかもしれず、アルツハイマー病のプレクリニカル(前臨床)期のうちに専門医を受診し、検査を受けることが推奨されている。
アルツハイマー病の危険因子としては高血圧、糖尿病、喫煙、心臓病などがあげられている。
高血圧は粥状動脈硬化症の危険性を高めるとされている血漿ホモシルテインが高値だとアルツハイマー病も発症しやすいことが示唆されている。
糖尿病患者ではアルツハイマー病発症の危険性が、糖尿病ではない人の1.9倍高いという報告もある。インスリン療法を受けている患者では、その危険度は4.3にはねあがる。糖尿病による血管障害のみならず、脳内インスリン抵抗性(正常な血糖値を保つのに必要なインスリン量が増加した状態)によってアミロイドβの脳内沈着が促進されるためといわれている。
こうしたことから、アルツハイマー病を生活習慣病あるいはメタボリックシンドロームと捉え、生活習慣病予防のライフスタイルが、アルツハイマー病予防にも効果があるとされている。
朝田医師は生活習慣においてはよく運動し、バランスのよい食事をとり、とくに魚をよく食べて、30分以内の昼寝をすることが認知症の発症率を下げる効果があると発表している。厚生労働省の委託研究「利根プロジェクト」に主任研究者として携わり、栄養、運動、睡眠によって記憶機能の改善、予防効果を明らかにしている。調査研究は茨城県利根町の65歳以上の町民を対象に2001年から2005年にかけて行われた。希望者約400人に運動や栄養、睡眠の改善を指導し、しなかった1500人との比較を行った。運動は週3~5回、1回20~60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動を行った。魚油に含まれるDHAとEPAなどを含む栄養補助剤を毎日摂り、30分以内の昼寝を行っている。結果は、生活指導をしたグループは認知症の発症率が3.1%だったのに対し、しなかったグループは4.3%だった。記憶能力テストでは指導したグループの成績が約16%向上している。
とくに昼寝に関しては30分以内の短い昼寝であれば、認知症予防の効果があるが、それ以上長いと逆効果であるとしている。また、睡眠不足はアルツハイマー病になりやすい。
運動に関しては、有酸素運動は週3回~5回で1回20分~60分のウォーキングなどが推奨される。
食事についてはDHAとEPAのほか、抗酸化物質であるビタミンC、βカロチン等の積極的な摂取がよいとされる。アルツハイマー病の脳内では酸化によって傷害されている部分が見られるが、抗酸化物質の摂取によりこうした酸化が抑制され、アルツハイマー病予防につながると考えられている。
アルツハイマー病を発症しやすいリスク遺伝子を持たない人の場合、食物からのビタミンE摂取量が多いほどアルツハイマー病発症率の低いという報告もある。ただ、サプリメントから摂取するビタミンEではその防御効果は得られなかったという報告もあり、食物からの摂取が勧められる。
アルコールについては1日あたり、日本酒換算で1合以下のアルコールの飲用で認知症のリスクが低減するとする研究が多く、アルコールのHDL増加作用、血中フィブリノーゲンの減少作用などが注目されている。
朝田氏は「アルツハイマー病になりやすいとされるapoE-4遺伝子(この遺伝子を持つ人は持たない人の3倍以上の認知症発症のリスクがあるとされる)を持つ人でも、発症時期が異なるなど個人差があるのは生活習慣が影響していると考えられ、リスクとなる遺伝子を持っている人でもライフスタイルの改善により、発症を遅らせることができる可能性がある」と示唆している。
日常生活の過ごし方としては物事に対して意欲を持って取り組み、集中して行うことが認知症予防につながるとしている。

費用のめやす

初診時2万円、再診時1,000円