ドクターズガイド

明楽重夫 医師 (あきらしげお)

明楽重夫 (あきらしげお) 医師

日本医科大学付属病院(東京都)29病院のクチコミ
女性診療科・産科
教授

専門

生殖医学(子宮内膜症・不妊症を中心)、婦人科手術、骨盤底再建外科

医師の紹介

子宮内膜症、子宮筋腫、不妊症などの生殖医学、腹腔鏡手術を中心とした婦人科手術、メッシュ手術などの骨盤底再建外科が専門。子宮内膜症のホルモン治療、腹腔鏡手術のスペシャリストであり、日本子宮内膜症啓発会議実行委員としての活動も。子宮内膜症のオーダーメイド治療の確立に向けた基礎的・臨床的研究がライフワークであり、今後は通常の腹腔鏡手術を上回る“超低侵襲手術”や、患者の遺伝子情報を子宮内膜症治療や予防に役立てる研究を進める。2001年、日本産科婦人科内視鏡学会 学会賞受賞。

診療内容

日本医科大学附属病院女性診療科では、患者自身が病気のことを理解し、年齢や環境、どの症状が一番辛いのか、妊娠をいつ考えていくのかなどを十分に考えながら、ライフスタイルに合わせた治療法を選択していけるような方針を採っている。
まず、子宮内膜症については、細かな問診から診察がスタート。その後、内診で子宮、卵巣の可動性や痛みの有無をチェックし、超音波検査で子宮や卵巣の腫大の有無を調べる。腫大している場合には、MRIでさらに細かく診断。また、血液検査で血液中のCA125やCA19-9がどの程度増加しているかも調べる。
治療方法は大きく分けて「手術療法」と「薬物療法」の2つで、それぞれ一長一短がある。患者の年齢、重症度・進行度、さらに妊娠希望の有無に応じて、オーダーメイドで治療法を選んでいく。
卵巣にのう胞ができてしまった患者や、不妊が疑われる患者には、手術療法――特に腹腔鏡手術を薦めている。腹腔鏡とはお腹の中を見る内視鏡のことで、通常の開腹手術と比べて傷や痛みも少ないため術後が楽なうえ、美容上とても優れている。
「腹腔鏡手術は5ミリ程度の小さな孔から内視鏡を入れるので、手術時の視野が狭いと思われがちですが、そんなことはありません。鮮明な画像で患部を拡大することができますし、内視鏡でなければ入っていけない骨盤の奥深く、子宮の裏側なども見ることができるので、取り残すリスクが低くなります。もちろん、すべての症例で腹腔鏡手術が適用になるわけではありませんが、子宮内膜症ですぐに開腹手術をすすめる医師は、ちょっと疑問ですね」と、明楽医師は腹腔鏡手術のメリットを語る。
ただし、腹腔鏡手術は熟練を要するため、経験の豊富な医師による施行が不可欠。同科では明楽医師をはじめ、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定を受けた医師が6名おり、必ずいずれかが手術を担当することになっている。
手術方法は、妊娠の希望の有無で変わってくる。妊娠を希望する場合には、卵巣や卵管をできるだけ本来の形・位置関係に戻すことが必要(卵巣チョコレートのう胞を取り除き、癒着をはがし、子宮内膜症病巣を焼灼する)。これらの操作は、痛みの除去にはとても有効である。一方、妊娠を希望しないケースで頑固な痛みがある場合には、子宮を取る方法を選ぶこともある。
薬物療法には、主に痛みをおさえるための「対症療法」と、子宮内膜症の進行を止めて病巣を萎縮させる「ホルモン療法」に大別される。
対症療法にはいわゆる解熱鎮痛剤を主に用いており、生理痛などに有効。将来妊娠を考えている若い女性には良い方法ではあるが、子宮内膜症の進行を防ぐ作用はない。そのため、病状がある程度進行した場合には、ホルモン療法に切り換えることが望ましい。
ホルモン療法にはGnRHアゴニストまたはダナゾールという薬を用いて、卵巣ホルモンを閉経の状態にする薬と、低用量ピルやプロゲステロン製剤を用いて体を妊娠した状態にする方法がある。それぞれ一長一短があるので、目的や体質によって使い分けることが大切。
次に、子宮筋腫の治療について。
まず内診で子宮の大きさ・動き・痛みの有無を診た後、超音波検査で筋腫核の大きさや数を診断。必要に応じて、MRIでさらに細かく診断していく。貧血の有無や子宮肉腫、子宮がんとの鑑別のため、血液検査や子宮がん検診も行う。
子宮筋腫の治療方針を立てるにあたり、まず考えなくてはならないのは、症状の有無とその程度である。筋腫が存在しても、貧血や圧迫症状が出ない場合は経過観察で良い。
症状が軽度の場合、漢方薬で経過をみることも。
生活に支障をきたすほど症状が悪化した際は、妊娠の希望の有無や子宮温存の希望の有無を考えながら、ホルモン療法などの薬物療法、または手術、子宮動脈塞栓術などの治療法を選んでゆく。上記のような症状がなくても、筋腫が主な原因と思われる不妊症や流・早産の経験がある場合にも、積極的に手術が選ばれる。手術の場合は、条件が整えばなるべく腹腔鏡手術を薦めている。また、子宮の内腔に突出してくる子宮粘膜下筋腫の場合には、積極的に子宮鏡という子宮の中を観察できる内視鏡で筋腫を摘出している。また、子宮温存しながら手術を希望しない患者に対しては、子宮動脈塞栓術も行っている。
それぞれの治療法については以下のとおり。
薬物療法は大きく「対症療法」と「GnRH療法」の2種類に大別される。
まず、対症療法では貧血に対しては止血剤と鉄剤を内服。鉄剤はムカムカ感などの胃腸症状が出ることがあるため、そうした場合は胃腸薬を飲むか注射に切り替える。下腹部の痛みや生理痛に対しては、消炎鎮痛剤を使用。生理開始前から飲み始めると、より効果的である。漢方薬では、生理の量が多いときには桂枝茯苓丸が、生理痛には芍薬甘草湯が有効。
GnRH療法では、卵巣から分泌されるエストロゲンというホルモンを抑え、筋腫を縮小させる作用のあるGnRHアゴニストを使用。鼻に毎日スプレーする方法と、皮下に月1回注射する方法があり、患者の希望で使い分けている。使用している間には生理は来ないことが多い。使い続けるとエストロゲンの低下による更年期障害が起きたり骨がもろくなってくるため、最長で半年間しか使うことができない。また、使用終了後には生理が戻るだけでなく子宮筋腫もまた元の大きさに戻ってしまうため、GnRHアゴニストは手術を受ける前に筋腫サイズを小さくし、出血などの手術リスクを下げる場合と、閉経が近い患者さんに閉経に逃げ込んでもらう場合に限定して用いている。
薬で症状をコントロールできない場合、手術を行う。手術には筋腫だけを取り子宮を残す「子宮筋腫核出術」と、子宮をすべて摘出する「子宮全摘出術」とがある。同科ではともに子宮内膜症同様、腹腔鏡手術を積極的に行っている(ただし、筋腫の大きさや数によっては開腹手術を選択せざるを得ないこともある)。
前者は妊娠することもできるが、再発のリスクがある。一方、後者は再発や将来的な子宮がんのリスクもなくなるが、妊娠することはできなくなる。ただし卵巣は摘出しないので、ホルモンバランスが崩れることはない。
両手術は一長一短があるため、患者の妊娠希望の有無やライフスタイルに合わせて選択していく。
「他施設で開腹手術を薦められたので、セカンドオピニオンのために受診される患者さんが多いですね。当科ではそのような場合でも、GnRHアゴニストを用いて筋腫核を小さくした後、できるだけ腹腔鏡手術または子宮鏡手術を行っています。しかし、筋腫のサイズが大きいときや数が多いときに内視鏡手術にこだわると手術時間が長くかかり、かえって出血が増加するなど安全な手術ができないことがあります。そういう時には十分にリスクを説明し、納得して開腹手術をうけてもらえるようにしています」(明楽医師)
子宮動脈塞栓術とは、子宮動脈にゼラチン様の物質を詰めることにより、子宮筋腫の血行を妨げ縮小させる方法で、放射線科の医師の協力により行われる。施行直後には痛みがあるため、通常2泊3日程度入院が必要。手術ほどの効果はないが「手術を受ける体力がない」「手術を受けたくない」という患者には選択される。ただし、卵巣機能や子宮内膜も障害されることが多いため、これから妊娠を考えられている患者には行うことができない。また、子宮動脈塞栓術は現時点では保険適応されておらず、同科の場合は、自費で入院費込みで50万円の患者負担となっている。

診療を受けるには

初診受付平日8:30~11:30、日祝・12/30~1/4・4/15休診(日祝はその翌日)。
明楽医師の担当は、水曜の午前(初診)、月曜・水曜の午後(不妊・腹腔鏡)、第4土曜の午後(子宮内膜症外来)。

累積症例数または患者数

子宮内膜症、子宮筋腫ともに2,000例以上

年間症例数

子宮内膜症の腹腔鏡手術:140例、子宮筋腫の腹腔鏡手術:160例

医師のプロフィール

経歴
1983年 日本医科大学医学部 卒業
1987年 日本医科大学大学院 修了
1988年 アメリカ、オハイオ州立大学産婦人科、生理・薬理学教室留学
1992年 東京都保険医療公社東部地域病院婦人科医長
1994年 日本医科大学産婦人科助手
1996年 同、講師
2003年 同、准教授
2011年 同、教授
所属学会・認定・資格

日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医など

予防に心がけたいこと

子宮内膜症は、初期には生理時以外には強い症状はないが、病勢が進むと腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛などが出現。従って早期発見のポイントは、次第に悪化する生理痛といえる。
「生理痛の強い方はそうでない方の2.6倍、子宮内膜症にかかりやすいといわれています。低用量ピルには生理痛を和らげ、子宮内膜症の予防や進行を抑える作用があるので、生理痛の強い方は産婦人科の受診を是非勧めます。また、なかなか子供に恵まれない方は、一度婦人科で子宮内膜症の有無をチェックするといいでしょう。また、遺伝性があると言われているため、お母さんや姉妹が子宮内膜症を患ったことがある場合にも、早めの受診をおすすめします」(明楽医師)
子宮筋腫の予防法は現在のところ確立されていない。早期発見のためには、日頃から月経量の変化に注意し、増加してくれば一度婦人科にかかるとよい。

費用のめやす

入院と手術はすべて健康保険が適応される(個室使用料は除く)。手術の方法により費用は異なるが、おおよそ75~85万円。保険適用により通常はその3割の負担であるため、22~25 万円ほど。なお、子宮動脈塞栓術は現時点で保険適応でないため、費用は50万円となる。