ドクターズガイド

山口耕平 医師 (やまぐちこうへい)

山口耕平 (やまぐちこうへい) 医師

医療法人仁寿会 石川病院(兵庫県)2病院のクチコミ
泌尿器科
医長

専門

生殖内分泌学、男性不妊、性機能障害、メンズヘルス

医師の紹介

日本生殖医学会が認定した男性不妊症専門医は全国に45名と少なく、山口耕平医師はこの資格を持つドクターの1人。医学部卒業後、神戸大学医学部腎泌尿器科に入局、その後神戸大大学院医学研究科に入学し、石川智基医師に師事しながら男性不妊診療と研究に従事する。2009年からは神戸大学男性不妊グループリーダーとなり、多数の国内外の関連学会で座長、シンポジスト等を務め、男性不妊診療の最新事情について広く発信してきた。2014年4月から石川病院泌尿器科に移り、より積極的に男性不妊診療に携わっている。

診療内容

夫婦間で通常の性交渉があり12ヶ月間妊娠に至らない場合を不妊症と診断する。現在、全カップルの約15%程度は、何らかの不妊治療を要するとされており、その内約半数が、男性側の因子が関与していると考えられている。
男性不妊症の多くは、男子性腺(精巣)で正常成熟精子を充分量つくることが出来ない、あるいは全くつくることが出来ないこと(これを造精機能障害と言う)が原因である。この造精機能障害には、精巣自体の問題である原発性と、視床下部、あるいは下垂体疾患などによって生じる続発性がある。その他にも、精巣で充分な精子をつくっていても、それが体外に出てくることができない精路通過障害や、勃起障害や射精障害といった性機能障害も男性不妊症の原因になるが、実際の臨床においては、原因が不明瞭な症例も数多く見受けられる。
山口医師の診察は、まず問診で、生殖器の外傷や下垂体疾患等の、男性不妊症の原因となり得る既往歴の有無や、性生活の詳細を聴取する。続いて、身体所見から二次性徴の程度や、精索静脈瘤の有無、精路狭窄ないし閉塞の有無を把握し、精巣容量を測定。さらに、男性不妊症の診断のために最も重要な検査である、精液検査と下垂体‐性腺系ホルモン(FSH、LH、テストステロン、プロラクチン)検査を行う。「精液検査所見は、WHOが定めた基準値に沿って判断し、異常がある場合にはさらに精査を進めていきます。下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンであるFSH、LHは、原発性造精機能障害の場合は、高値を示す場合が多いですが、続発性の場合には低値を示します。続発性が疑われる場合、更にホルモン負荷検査や頭部MRI検査を行い、障害部位を同定します。一方、精路通過障害の場合にはFSH、LHは正常です。無精子症や高度乏精子症の場合、染色体検査も行い、さらに最近は、Y染色体上にあって、精子形成に重要な役割を果たしていると考えられているAZF(azoospermia factor)遺伝子検査も行います」(山口医師)

治療は、精液検査で造精機能障害を認めた場合、障害の程度や原因別に治療法を選択する。
1.無精子症
・非閉塞性無精子症…男性不妊症患者の約20%が無精子症であり、その多くの方は非閉塞性無精子である。従来は治療の対象とならなかったが、1998年に顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)が行われるようになり、現在のところ、非閉塞性無精子症患者が挙児を得るための唯一の治療法として確立し、普及している。同院においても、染色体異常がなく、AZF遺伝子欠失を認めない方の場合micro-TESEによる精子回収率は約30%と他の施設とほぼ同様だ。しかしクラインフェルター症候群のような一部の染色体異常疾患の方の場合、染色体正常の無精子症患者に比べむしろ高率(50%程度)に精子が回収できる。またAZF遺伝子欠失の方でもAZFc欠失のみの方の場合は、これも精子回収率が上がることが報告されており、これらの方には特に積極的に手術を勧めている。さらに最近、完全な無精子症ではないが、頻回の精液検査の中で、時々極わずかに精子を認める(virtual azoospermia)方においては、射出精子を用いるよりも、精巣内精子を用いてICSIを行った方が、着床・妊娠・出産率はいずれも良好であることが報告されている。これは射出に至るまでの精路において、精子が種々のストレスを受けて損傷され、その質が低下していることが原因と考えられる。同様のことは、精子濃度が数万/ml程度で、運動精子も極わずかにしか認めない超高度乏精子症ないしcryptozoospermiaと呼ばれる方においてもあてはまる可能性があり、これらの方で数回射出精子を用いたICSIを行っても妊娠に至らない症例においては、射出精子を用いたICSIにこだわるのではなく、侵襲性や費用を考慮してもなおsimple-(あるいはmicro-)TESEを施行して、回収した精巣内精子を用いたICSIを施行することを勧めている。
・閉塞性無精子症…まずは精路再建術の可能性を考慮する。特に、精管切断術後の閉塞性無精子症は良い適応になる。しかし、閉塞部位が不明瞭であったり、あるいは複数個所存在するような方や、精管欠損の様な先天性疾患の場合には、simple-TESEによって精巣から採取した精子を用いて、顕微授精を行うことを勧めいる。精子回収率は約95%と高く、多くの患者から精子が採取できている。
・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症…視床下部、あるいは下垂体の異常によって、FSH、あるいはLHの分泌不全を来し、それによって生じる続発性造精機能障害である。ホルモン補充療法(ゴナドトロピン製剤の自己注射)を行い、多くの症例で造精機能の回復と挙児が期待できる。

2.乏精子症、精子無力症
・精索静脈瘤…造精機能障害患者の21~39%に精索静脈瘤を認める。精索静脈瘤があると陰嚢の温度上昇を来して造精機能障害が起こるものと考えられている。山口医師は触知可能な精索静脈瘤に対しては、妻の年齢如何によらず精索静脈瘤根治術を強く勧めている。手術後に50~60%の症例で造精機能の改善を認めるし、改善する場合は3~6ヶ月程度で効果を認めるからである。術後自然妊娠率の向上も報告されている。
・特発性(原因不明)…最も頻度が高く、通常、薬物療法を行う。しかし、先述の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症患者に対するホルモン補充療法とは異なり、これら原因が特定されない多くの方に対しては、非特異的な薬物療法が治療の主体となっている。一般的に使用される薬剤は、ビタミン剤やカリクレイン製剤、各種酵素剤や微量元素製剤、漢方製剤などだが、あまり効果は期待できない。山口医師は、ある程度時期を決めて行い(妻の年齢やAMH値等にもよるが、およそ半年程度)、時期を逸せず生殖補助医療を併用して行うことが肝要と考えている。

診療を受けるには

○同院:泌尿器科外来 男性不妊外来 毎週火曜の午前(9:30~12:30)、水曜・木曜の午後(15:00~18:00)予約不要。紹介状不要。待ち時間はなし~30分程度。詳細はHP参照(http://www.ishikawa-hp.or.jp/)
○英ウィメンズクリニック(三宮):男性不妊外来 毎週土曜・第2, 4日曜9:30~13:30 要予約。紹介状不要。待ち時間はなし~1時間程度。詳細はHP参照(http://www.hanabusaclinic.com/)

累積症例数または患者数

精巣内精子採取術:210例 精索静脈瘤手術:220例

医師のプロフィール

経歴
1977年生まれ
2003年3月 神戸大学医学部医学科 卒業
2003年6月 神戸大学医学部附属病院泌尿器科 研修医
2007年10月 神戸大学医学部附属病院泌尿器科 医員
2009年9月 神戸大学医学部附属病院泌尿器科 特定助教
2010年8月 神戸大学医学部附属病院泌尿器科 助教
2014年1月 神戸赤十字病院泌尿器科 副部長
2014年4月 医療法人仁寿会 石川病院 泌尿器科医長
所属学会・認定・資格

医学博士、日本泌尿器科学会(認定専門医)、日本生殖医学会(生殖医療専門医・幹事)、日本泌尿器内視鏡学会(腹腔鏡技術認定医)日本アンドロロジー学会(評議員)、日本生殖内分泌学会、日本Men’s health学会、日本性機能学会、日本受精着床学会、日本抗加齢医学会、泌尿器科分子・細胞研究会

予防に心がけたいこと

禁煙、2~3日毎の射精(性交渉でもマスターベーションでも良い)

費用のめやす

顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)および精巣内精子採取術(simple-TESE)は保険外診療、micro-TESEは自己負担で30~50万円程度、simple-TESEは15~20万程度、精索静脈瘤手術は保険診療、自己負担は4~5万円程度。