ドクターズガイド

再生医療

今後の課題


再生医療を普及・実用化させるにあたっての現状と課題について、日本再生医療学会理事長である、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長 岡野光夫教授にお話をうかがいました。


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■新しい医療とiPS細胞による原料確保の実現

これまでの医療では、薬、外科手術、移植、補助器具を使って正常な状態に戻すという対処療法的な手段がとられていましたが、その既存のやり方では治療できない病気も少なくありません。これに対して「再生医療」は、「細胞」で治療するという違う角度からのアプローチであり、今まで治すことができなかった病気を治すという、まったく新しい医療です。なかでも、ドナー不足の問題で行き詰っている移植医療にとっては、特に期待される重要な技術です。

iPS細胞の開発は、再生医療に不可欠な「細胞の原料供給問題」を解決する道を開きました。体の別の部位の細胞に手を加えて初期化・誘導し、必要な部位、必要な量の細胞に作り直し、移植を可能にするというこの技術には、どんな細胞でも必要なだけ入手できるという可能性が示されています。また、STAP細胞の作製に成功し、時間とコストを大幅に下げて細胞の初期化が実現され、ヒト細胞への応用が期待されています。このような新技術により、心臓や膵臓など、これまで増やすことができなかった細胞でさえ、移植治療が可能になると考えられます。

■「治療ができる」と「原料が確保できる」とのギャップ

しかしながら、その細胞原料確保の技術も、「治療方法の確立と普及」が無ければ、現実的に医療として十分に役立てることができません。現時点ではこれが明確な課題となってきました。たとえば、細胞の移植自体はすでに20年ほどの歴史があり、さまざまな工夫を考えながら、「注射」という手法がとられていました。しかし、95%の細胞が必要部位に留まらず流れ出し、ほとんど成功をみることがありませんでした。必要な細胞が必要量を得られても、酵素で処理して培養皿から剥離した細胞はそこに定着できないという問題もあったのです。

■「治療」への技術と「仕組み」作り

岡野教授による「細胞のシート化」という技術の開発で、移植の確実性を高めることに成功しました。移植する細胞をフィルムのようなつながった状態に保ち、これを必要部位に貼ることで、流れ出すことなく定着させるというものです。実際に、2、3ヶ月の入院が必要だった食道がんの治療も、内視鏡を使い2、3日の入院に短縮されるなどの実績があげられ、歯周病治療においても、同様な治療が実現されています。

岡野教授は、再生医療は実際の治療に使うまでを考えなければいけないと語ります。「どういうものでも、人で実現するまでには10年以上かかります。私たちはもう20年ぐらい前から準備をしてきて、やっとヒトで始められるようなところまできました。再生医療がにわかに騒がしくなったけれど、それはまだ原料ができているという段階です。人を治すところまで進むには、まだ時間がかかります。まずは、そのための「仕組み」を作らないと、なかなか普及させられないのです」

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