ドクターズガイド

井上晴洋 医師 (いのうえはるひろ)

井上晴洋 (いのうえはるひろ) 医師

昭和大学江東豊洲病院(東京都)
消化器センター長
教授

専門

消化器内視鏡診断学・治療、食道・胃外科学

医師の紹介

井上晴洋医師は、消化器外科を専門としながら内科にも精通し、内視鏡治療の実績を豊富に持つジェネラリスト。早期胃がんへのEMR-C法、食道アカラシアへのPOEM、逆流性食道炎へのARMSなど、内視鏡治療の新しい術式を積極的に開発してきた。国内はもとより、欧州や米国に出かけて手術を行う機会も多い。世界的な内視鏡治療の名医が一堂に会して手術を中継する「東京内視鏡ライブ」のダイレクターを毎年務め、若手医師の育成にも熱意を傾けている。

診療内容

一般的に内視鏡は内科医の管轄とされることが多いが、井上医師は外科医でありながら内視鏡治療にも精通する医師。同院の消化器センター長として、食道がん、胃がんなどのあらゆる消化器疾患に対し、最高の医療を提供するべく取り組んできた。

同センターが得意とするのは、内視鏡による消化器がんの早期発見、および内視鏡的低侵襲治療。井上医師は食道がんへの内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)や外科的手術において豊富な実績を持ち、数々の新しい内視鏡治療の術式を開発してきたことでも知られる。1992年に早期胃がんに対する「透明キャップによる内視鏡的粘膜切除術(EMR-C法:endoscopic mucosal resection usinga cap-fitted panendascope)」、2008年に食道アカラシアに対する世界初の術式「経口内視鏡的筋層切開術(POEM::per‐oral endoscopic myotomy)」を開発。POEMに関しては、高齢者や子どものようなリスクが高い症例を中心に、同センターでこれまで1500例をこえるアカラシアの手術のほとんどに関わっている。

「食道アカラシアは食道の出口が開かなくなる病気で、POEMはその筋肉を切除する手術です。今から100年前、ヘラーというドイツ人医師が考案した筋肉を切る開腹手術がありますが、内視鏡で外科手術と同様の効果をあげれるPOEMは、私が最初に行いました。逆流性食道炎に対する逆流防止のための粘膜切除術(ARMS:anti-reflux mucosectomy)の他に、自分が開発した術式の1つ胃食道逆流症では噴門が緩んでいることが多いため、緩んだ噴門部の粘膜を切除して、内視鏡的に噴門形成術を行います。ARMSは治療から10年を経過した症例もあり、成績は良好です」(井上医師)。

POEMは日本では健康保険が適用され、今では世界中に広まった手術だ。井上医師は年間20回以上もの海外ライブのPOEMを、アメリカやヨーロッパなどで実施している。「私がPOEMに到達できたのは、内科と外科の両方の経験があったからです。新しいことに取り組む時に、道具を限ってしまうと最適な治療が出てきません。内科・外科の垣根を取り払わないと新しい発想が出てこないのです。このことは、両方の学会に参加してみて、しみじみ実感します」。

同センターでは、内科・外科に分かれていた受け持ちチームを一体化し、内科医・外科医の合同受け持ちチームを実現。すべての入院患者の受け持ちに内科医・外科医がいて、ラウンドする際も一緒である。このチーム制は内科・外科の垣根を取り払いたいという井上医師の信念が反映されたもので、この体制により内科・外科双方の相乗効果を発揮し、より良い治療が提供できると自負する。

井上医師は、内視鏡治療を担う後進の育成にも積極的だ。内視鏡治療の向上を図る「内視鏡の東京ライブ」は、同院を会場として毎年開催され、井上医師は自らダイレクターを務めてきた。内視鏡ライブとは、実際に手術をしている映像をダイレクトに中継して、講堂で参加者が見るという勉強の場。ライブのポイントは、行っている医師の腕をごまかせないことだという。内視鏡の専門医がリアルタイムで見ていて、手術の上手▪下手がすぐわかってしまうからだ。「でも、日本の学会では公用語が日本語であるため、他国に比べると出遅れています。日本の医師も欧米人と対等に、グローバルスタンダードとして英語で議論できるようになるのが理想ですね」(井上医師)。

診療を受けるには

初診時は他の医療機関からの紹介状が必要。紹介状がある場合は事前予約をする。
予約センター(TEL:03-6204-6489)で紹介医療機関と宛先診療科を伝えること。

年間症例数

食道アカラシアに対するPOEM手術は、同センターで年間約250例行われ、これまでに1500例行っており、井上医師はそのほとんどに関わっている。それに加えて、年間20回以上を海外でのライブデモで実施する(2016年実績)。

医師のプロフィール

経歴
1983年3月 山口大学医学部卒業
1983年 同年東京医科歯科大学第一外科
1984年 都立広尾病院心臓血管外科
1985年 九段坂病院外科
1986年 日産厚生会玉川病院
1991年 春日部秀和病院外科
1995年 米国南カリフォルニア大学(USC)外科、東京医科歯科大学第一外科助手
2001年 東京医科歯科大学第一外科講師、昭和大学横浜市北部病院消化器センター講師
2002年 昭和大学横浜市北部病院消化器センター准教授
2009年 昭和大学医学部教授、国際消化器内視鏡研修センター(SUITE)、昭和大学横浜市北部病院消化器センター兼任
2014年 昭和大学江東豊洲病院消化器センター長・教授
所属学会・認定・資格

日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会 専門医・指導医、日本外科学会 認定医・外科専門医・指導医、日本消化器外科学会 認定医・専門医・指導医・ 消化器がん外科治療認定医、日本内視鏡外科学会 技術認定医、日本食道学会 食道科認定医・食道外科専門医、日本消化管学会 胃腸科指導医、米国内視鏡学会(ASGE) 名誉会員、ドイツ内視鏡学会(DGVGE) 名誉会員、ロシア内視鏡学会 名誉会員 など

予防に心がけたいこと

食道がんを予防するには、原因となる飲酒に注意する。お酒を飲む人には喫煙者も多く、タバコも影響するため禁煙も必要。また、熱い料理も慢性的な食道の熱傷につながり食道がんの原因となるので、食べ物は少し冷ました状態で口に入れるとよい。
食道がんの再発予防策は早期がんと進行がんとで異なるが、基本は定期検査である。早期がんは一度切除すれば再発することはないが、食道自体は残っているので、2つ目のがんが食道の他の場所から発生しないか、年1回はチェックが必要。進行がんの場合は3か月に1回の検査とし、リンパ節での再発がないかを調べる。

費用のめやす

食道アカラシアに対するPOEM手術は健康保険が適用されるが、逆流性食道炎へのARMSは自費診療である。