上村直実医師は、ピロリ菌感染者と非感染者を追跡調査し、ピロリ菌と胃がんの発症リスクとの関係を突き止めた研究で知られる。
広島大学病院第一内科では、内視鏡像、胃酸分泌、ガストリン、ソマトスタチン、血清ペプシノゲン値から上部消化器疾患(特に胃がんや十二指腸潰瘍)が形成される、背景胃粘膜を研究し、呉共済病院ではピロリ菌感染の有無と組織学的胃炎、内視鏡的な萎縮度も加えて研究を行う。
臨床医学雑誌「The New England Journal of Medicine」と「The Lancet」に、2000~2009年の10年間に日本人の研究者が原著論文を寄稿したのは、前者が13本と後者が37本。その両方に掲載されたのは上村医師のみである。
2009年2月 高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞。厚生労働省「H. pylori感染と胃がん」(藤岡班)、「EBMに基づく胃潰瘍治療ガイドライン作成」(菅野班)メンバーである。
日本人に多い胃がん。その発生要因はさまざまだが、近年、胃がんの罹患にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)が関与していることが明らかとなり、ピロリ菌の早期発見と除菌の必要性が指摘されている。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは、口から侵入し胃の中に住み着くことで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどさまざまな病気の原因になる細菌のこと。日本人のおよそ50%がピロリ菌に感染している。その大半は50歳以上の方で、まだ上下水道が十分に整っていない衛生状態が悪い時代に感染したものと考えられている。
「ピロリ菌のほとんどは5歳未満で感染し、何十年間も胃の中に棲みついています。個人差はあるものの、胃の粘膜が老化することで、消化性潰瘍や過形成ポリープなどが発症しやすくなります」(上村医師)
ピロリ菌が胃に長く住み着くと、ピロリ菌がつくり出すアンモニアや毒素によって胃の粘膜に炎症が起き「慢性胃炎」となる。この「慢性胃炎」の状態が何年も続くと、胃の粘膜の細胞が壊れ「萎縮性胃炎」となり、発がん物質の影響を受けやすい状態となる。
上村医師は、長年にわたり胃がん発症について追跡調査を行っている。その結果「ピロリ菌に感染している方は、年に0.5%、10年で5%の確率で胃がんを発症することが確認されました。また、感染していない方は、まったく胃がんは認められませんでした。すべての胃がんがピロリ菌によって発症するわけではないのですが、ピロリ菌による「萎縮性胃炎」が胃がんの原因になることは間違いありません」と上村医師は言う。
ピロリ菌による胃炎は特別な症状がないことが多いが、空腹時にみぞおちの痛みがある、めまい・ふらつきなどの貧血症状を伴う、吐血や黒い便が出る、などの症状がある方は、胃潰瘍や胃がんなどが疑われるので、胃カメラと同時にピロリ菌の検査を受けることを勧めている。
国府台病院消化器・肝臓内科では、拡大観察機能を有する新型の内視鏡を使用することで微細な早期がんの観察も可能である。また、内視鏡検査の患者に対し苦痛を軽減すべく適時、麻酔薬を使用し苦痛の少ない内視鏡を心がけている。カプセル内視鏡や小腸内視鏡といった最新の内視鏡設備を有しており、以前まで十分に観察ができなかった小腸の内視鏡観察も可能。胆管疾患や膵疾患に対する内視鏡検査・治療、早期胃がん、食道がん、大腸がんに対しての粘膜下層剥離術(ESD)といった最新の治療も積極的に行っている。
ピロリ菌について 詳しくは【⇒ドクターズインタビューを読む⇒】
かかりつけ医からの紹介状等が必要。 紹介状がない場合、会計時に保険外併用療養費が加算される。上村医師の外来は、月曜・水曜
日本消化器病学会(専門医・指導医)、日本消化器内視鏡学会(理事・指導医・専門医)、日本ヘリコバクター学会(理事・専門医)、日本内科学会認定内科医
高塩分の食事や喫煙、野菜・果物不足など、胃がんリスクを高くするような生活習慣を改善し、萎縮性胃炎と診断された人は、定期的な胃がん検診を受けること。