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大腸がん 定期健診、早期発見、内視鏡で治療できる

近年、大腸がんが急増している。1年間に診断される患者は約11万人。がんの死因中で大腸がんは、女性ではトップとなっている。大腸がんの現状と治療について、大腸がんのスペシャリストである杉原健一医師に話をきいた。

-大腸がんに罹る患者さんは近年、急激に増えていると聞きましたが、その背景は何ですか。

大腸がんは、国内で年間約11万人が新しく診断されています。ここ最近30年間で5倍ぐらいと異常な勢いで増えています。その要因として一般的に言われているのは、食の欧米化。牛肉や豚肉などの赤身の肉もしくはそういう肉を加工したソーセージやハムなどの摂取量が増えたからと言われています。また、反対に食物繊維の摂取が減ったからとも言われていますが、はっきりしたことはよくわかっていません。確実に言えるのは、高齢化社会になったということです。大腸がんは年を経るとともに罹りやすくなります。高齢者が増えたことで大腸がんに罹る人も増えたということです。大腸がんに罹り始めるのは40歳からですが、特に増えるのは、60歳以降です。男性の場合、70歳以上は250人から300人に一人は大腸がんになります。これはかなり高い割合です。

がんの主な部位別死亡者数の年次推移

-亡くなる方も多いのですか。

大腸がんはがんの中では治りやすいがんです。ただ、手術をしてきれいにがんをとったとしてもある一定の割合で亡くなる方もいらっしゃいます。がんが治るか治らないかの指標の一つとして、5年生存率がありますが、それでみると、大体70%と言われています。つまり、100人のうち、30人の方が治らないで、5年以内に亡くなるということです。ただ、早期の段階で発見すれば、治りやすいのは事実です。ステージでいくと5段階あり、0はほとんど治ります。Ⅰであっても94~95%治ります。ステージⅡになると85%、ステージⅢで70%の後半ぐらいです。

がん部位別の患者総数

-早期発見するためにはどうしたらよいのでしょうか。

入口としては、最低1年に1回、便潜血検査(検便)を行い、陽性であれば内視鏡検査をして、がんがあるのかないのかを調べます。陽性でなければ、必要ありません。一度、陰性の診断を受けても毎年1回は必ず検査を受けるようにします。検査は極めて簡単で、便にスティックをさし、それを2日間続けるだけです。40歳からは大腸がん検診の対象になりますので、市区町村では無料で受けられます。人間ドックの中で行う場合は内視鏡検査の場合もあります。内視鏡検査は確実に大腸がんを見つけますが、下剤を飲まなくてはいけないなど、身体的につらいので、血縁の家族が大腸がんであるなど、気になる場合は2年に1回ぐらい、内視鏡検査を受けてもいいと思います。血便、便通の異常といった自覚症状が出た時にはすでに、進行している可能性があるというのも他のがんと同じです。

-大腸がんの治療法について教えてください。

大腸がんの治療は、基本的には手術です。大腸がん全体の治療の中で手術治療は85~86%、内視鏡治療は5~6%です。日本の大腸がんの治療は、OECD(経済協力開発機構)に加盟する24カ国の中では、5年生存率において、トップの成績です。日本でも欧米でも、基本的な手術の方法は同じですが、日本と欧米では、腸を切り取る範囲(長さ)やリンパ節を切り取る範囲(郭清範囲)が違います。日本の手術治療成績が、欧米の手術に比べて優れていることから、最近では欧米でも日本の手術法が行われるようになってきました。大腸の内視鏡検査も、内視鏡の器具は日本で開発・改良され、たいへん進んでいます。内視鏡検査で早い段階の大腸がんを見つけ、内視鏡で治療できるようになり、診断・治療技術も進んでいます。このように、日本のがん治療の成績は世界でトップを維持しています。

-病院や医師を選ぶポイントは何でしょうか。

医師や病院を選ぶにあたっての基準は、基本的には、例えば、大腸がん研究会に参加している施設。大腸がんは日本中、患者が多いので、地域医療の中核病院程度の規模の病院であれば、手術経験や実績がありますので、しっかりした治療が受けられると思います。各病院のホームページなどで公表されている大腸がんの手術数なども参考にできます。大腸がん研究会では「大腸癌治療ガイドライン」を出していますので、それに基づいて診療を行っているか、確認するとよいでしょう。

-大腸がんを予防する方法はありますか。

大腸がんを予防することはできません。とにかく定期的に検診を受けることです。早い段階で見つけて、内視鏡でとってしまえば、それで治るのですから。心がけておくこととしては、生活習慣の見直しです。一般的にいわれる、太りすぎないとか、バランスのよい食事をとるとか、適切な運動するというように、しっかりとした体調を管理しておくことが何よりも大切です。

(2013.10.16.)


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杉原健一医師(医師情報)

東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科教授 大腸癌研究会会長
日本の大腸がんの診断・治療の第一人者。会長を務める大腸癌研究会では、大腸がんの治療ガイドラインの作成を中心となって行い、国内の大腸がん治療のオピニオンリーダー的存在でもある。大学卒業後、消化器外科の一般的なトレーニングを積み、その後、国立がんセンターで8年間、本格的に大腸がん手術の経験を積む。特に直腸がんや大腸がんの肝転移についての治療法や手術法などを研究し、豊富な実績を持つ。25年以上にわたって、大腸がんの研究・治療に携わり、患者の症状に応じた最適な治療法を提供できる体制をとっている。