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COPD(慢性閉塞性肺疾患) 肺の生活習慣病だが全身病としてのケアが大事

-患者数620万人以上喫煙者の5人に1人がかかる

「喫煙経験のある皆さん、COPDを知っていますか?」
2011年の8月から、歌手の和田アキ子さんが語りかけるテレビCMも放映されているが、読者はご存じだろうか。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主として喫煙習慣が原因で発症し、呼吸機能が低下していく肺の病気。患者の90%以上は男性で、喫煙者。喫煙者であれば2割程度は罹患するといわれていることから『タバコ病』の異名を持つ。ちなみに他の原因は 受動喫煙 、大気汚染 などだ。初期症状は咳や痰などで、風邪が長引いていると感じているうちに悪化し、強い息切れから日常生活は極度に不自由となり、最終的には死に至ることもある。全世界では死亡原因の4番目にランクインしている恐ろしい病気なのだ。

かつては「慢性気管支炎」と「肺気腫」という別々の病名で呼ばれていたが、近年、この2つを総称して「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」と呼ばれるようになった。
「日本の推定患者数は500万~620万人にのぼると考えられますが、そのうち正しく診断され、必要な治療やアドバイスを受けている患者さんは、わずか20数万人しかおらず、多くは見過ごされているのが現状です」
そう嘆くのは、『肺の生活習慣病COPD』(中公新書)とうい著書もあり、COPD治療に長年尽力してきた日本医科大学呼吸ケアクリニックの所長、木田厚瑞教授だ。かつて東京都健康長寿医療センター(旧東京都老人医療センター)の呼吸器科部長を務めていた木田医師は、「放置されて重症化し、手遅れになった悲惨なケースを数多く目の当たりにしてきた」という。

またCOPDは骨そしょう症や肺がんなど、多くの他の病気を呼び寄せることも問題になっている。手足の筋肉が細くなって力が弱くなり、心臓病や脳卒中の合併が多くなるほか、落ち込みが多くなりCOPDの患者の半数はうつ状態といわれている。肺の生活習慣病ではあるが、その症状は全身におよぶのである。

-重要なのは正しい診断と日常生活の自己管理

治療においてまず重要なのは正しい診断だ。「年のせい」と間違えられないよう、患者自身も注意が必要だ。以下の項目があてはまる場合は、COPDを疑い、気を付けてみてくれる医師を探そう。

  1. タバコを吸っている(吸っていた)
  2. 風邪もひかないのに咳やたんが出やすい
  3. 坂道をあがると息切れを感じる
  4. 40歳以上である

確定診断では、スパイロメトリーという肺機能検査をきちんと行うことが重要だ。これによって肺が空気を最大に吸いこみ吐き出せる量や吐き出す速さを測定し、病気の重症度を診断する。食事制限などの事前準備が必要なく、手軽に受けられる検査だ。検査は他に胸部レントゲンやCT、心電図、血液検査などが必要に応じて行われる。

治療は大きく分けて6種類。まず、COPDについてよく理解するため医師、看護師などから説明を受ける。そして完全禁煙をする。これは絶対に必要だ。なぜならCOPDの進行をくい止めることのできる治療は現時点では禁煙のみと言われているからだ。実際禁煙のみでも咳、たん、息切れといった症状は驚くほど改善するという。自分ではやめられない場合は、禁煙外来を受診してみるのもいいだろう。

以下、気管支を拡張させる吸入コリン薬、長時間作用型や短時間作業型のβ2刺激藥の吸入薬、吸入ステロイド薬などによる「薬物療法」、全身を動かす「運動療法」、「栄養療法」「増悪(病気の一時的な悪化)を防ぐための風邪の早期治療やワクチン接種」を行う。
「COPDの治療は、単に呼吸器の病気としてではなく、循環器や筋肉・骨格、心理面など、全身の病気としてとらえ、治療することが望ましいと思います。また、病気を重篤化させないためには、日常生活の自己管理をしっかりと行い、他の生活習慣病を合併させないことが大切なので、COPD以外の病気もきちんと診断・治療ができる病院や医師を選んでください」

COPDは予防ができ、治療もできる病気だという。怖がらす、積極的に病院を受診しよう。

(2013.8.8.)


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木田厚瑞先生(医師情報)

日本医科大学呼吸ケアクリニック 所長
1945年 石川県生まれ。1970年 金沢大学医学部卒業、1975年 同大学院修了、1976年 カナダ留学、1994年 東京都健康長寿医療センター(旧東京都老人医療センター)呼吸器科部長を経て、2003年より日本医科大学呼吸器内科教授(現、特任教授)、現在に至る。