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脳梗塞 早期発見・早期治療で、最悪の事態を回避する

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2013年厚生労働省「人口動態統計の概況」によると、脳梗塞で亡くなった人は6万9,967人にものぼる。寝たきりになる原因の約4割を占めるのも脳梗塞であり、生活の質(QOL)の観点からも早期発見と予防が必要な病気だ。今回は、順天堂大学医学部附属浦安病院 脳神経・脳卒中センター長 卜部貴夫医師に、脳梗塞の早期発見のポイントと、治療法について話を聞いた。

― 脳梗塞は寝たきりになる原因の約4割を占める病気です。どのような症状が出るのでしょうか。

脳梗塞は、以下のように2つに大別され3つの臨床病型があります。タイプによって症状が異なるわけではありませんが、重症度は違います。ラクナ梗塞は血栓のサイズが小さい分、症状も非常に単純です。運動が半分できなくなる、あるいは言葉がしゃべれなくなるなど、限られた症状が出ます。

それに対して、アテローム性血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症は、比較的太い血管が詰まるため、複雑な症状が混ざります。半身が動かないことに加えて言語障害もあるなど、重症になり、麻痺、言語障害などの後遺症が残ることもあります。リハビリテーションで多少は改善しますが、治るとは言い切れません。

脳の血栓症 …血管の壁が厚く硬くなり、狭くなって詰まる

  • 「ラクナ梗塞」…細い血管が詰まる
  • 「アテローム血栓性脳梗塞」…コレステロールが血管内で固まる

脳の塞栓症 …脳以外にできた血の塊が脳血管に飛んできて詰まる

  • 「心原性脳梗塞」…心房細動のために心臓にできた血の塊が脳で詰まる

― テレビの健康番組などで「隠れ脳梗塞」という言葉を耳にすることがあります。これはどのようなものでしょうか。

高血圧や糖尿病がある人、コレステロールが高い人、肥満の人、メタボリック症候群の人などは、脳卒中の恐れがあるので脳ドックを受けるよう勧められることがあります。自覚症状がない状態で脳ドックに行ってMRIを撮ってみると小さい脳梗塞が見つかる、これが隠れ脳梗塞、無症候性脳梗塞です。

無症候性脳梗塞の因子の1つは加齢で、年を重ねるほど増えます。そして、もう1つの因子は高血圧です。高血圧をもつ人は、知らない間に無症候性脳梗塞になっています。高血圧があると、脳の細い血管に動脈硬化を起こしやすくなりますが、細い血管に詰まる血栓は小さいので、症状が出にくいのです。治療しなくても寿命を全うすることもありますが、起こる場所によっては発症する可能性もあります。

無症候性脳梗塞が判明したからといって、すぐに、血液をサラサラにする抗血小板療法、抗凝固療法を行うのは本当は良くないのですが、実際は行っている方も少なくないようです。血栓をできにくくするということは、出血しやすい・出血したら止まりにくい、というリスクがあります。そのため、これらの治療は、一度脳梗塞を起こした人が血栓予防のために行うならメリットがありますが、未発症の無症候性脳梗塞の人に積極的に行うべきというエビデンスはありません。

― 治療について教えてください。

卜部貴夫医師

脳梗塞は早く発見し、早く治療を始めることが何より大切です。4.5時間が1つの境目で、発症から4.5時間以内であれば、t-PAという薬を使う「血栓溶解療法」を行うことができます。t-PAは、施設基準を満たした病院で、日本脳卒中学会が開催する適正使用講習会を受講した医師が行うのが基本です。

ただし、この治療は、脳梗塞を起こしたすべての人が受けられる治療ではありません。4.5時間を過ぎた人の他に、極端に血糖値が高い人・低い人、血圧が一定の基準値より高い人(降圧治療をしても185/110以上の人)はできません。

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